第311話:背中が光ってる
フイィィーンシュパパパッ。
ギルドから一旦帰宅したあと、魔境へやって来た。
まー掘り出し物屋さんとは和解できたと思いたい。
今後いい出物があったら、気持ちよく売ってちょうだい。
「オニオンさん、こんにちはー」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
機嫌の良さそうな笑顔を見せてくれるオニオンさん。
「すっかり常連ですねえ。今一番魔境に来て下さるのが、ユーラシアさんとソールさんですよ」
「あたし魔境大好きだよ。ただ初夏頃に来てたら、もっといろんな植物を見つけられたはずなんだよね。ちょっと惜しいなあ。あたし『アトラスの冒険者』になってまだ七〇日くらいだからさ」
「ハハハ。既にマスタークラスですからねえ。来年も来てくださいよ」
「うん、そーする。来るなって言われても来る」
ソル君も頑張ってるんだな。
「あたしソル君と、魔境で会ったことないな?」
「時間帯ですかね。ソールさんのパーティーは午前中においでになることが多いですよ。今日はまだですけど」
「さっきギルドで会ったんだよ。掘り出し物屋さんが来ててさ。とすると今日は魔境に来ないっぽいな?」
アンセリは料理の日みたいだし。
「そろそろソールさんもドラゴンにチャレンジすると思いますよ。獣人の冒険者ゲレゲレさんから強力な単体攻撃スキル教わってましたし」
「ひょっとしてオニオンさんが仲介してくれた?」
「ええ、まあ」
「ありがとう。お祝いには参加しないとな」
獣人の冒険者ゲレゲレさんか。
ユニコーンクエスト懐かしいなあ。
掃討戦後の励ます会でちょっと喋ったけど、その後会ってない。
「ゲレゲレさん、ほとんど会えないんだよね。あんまりギルド来ないのかなあ?」
「おそらくクエストも、ノーマル人にあまり関わらないものが振られていると思います。亜人はやはり色眼鏡で見られがちですから。ギルドにも換金くらいにしか寄らないかも知れません。冒険者達は変な目で見ることないんですけどねえ」
「むしろあたしが変な目で見られてる気がするよ」
「アハハ、ユーラシアさんは有名人ですから」
変な意味で有名人だったら嫌だなあ。
「今ユーラシアさんに振られている正規の石板クエストが、高級魔宝玉を集めて納品するものなんですか?」
イシュトバーンさんに『地図の石板』もらったけど、あれはまさか正規の石板クエストじゃないよな?
「ドリフターズギルド・セットってやつなんだ。ギルド周りの細かいクエストをまとめて回されてる感じ」
「ほう、魔宝玉クエストもその一つということですか?」
「よくわかんないけど多分」
魔宝玉クエストはおっぱいさんから依頼されたので、依頼所クエストなのかもしれない。
でも単純に納品して終わりみたいなクエストではない予感はしている。
セットの内の一つなんじゃないかなあ?
「セットのクエストはおかしなやつが多いねえ」
「難易度的には低いものが多いですけれどもね。おそらくユーラシアさんの行動力に期待して、早く片付けられるだろうということで分配されているんだと思いますよ」
「なるへそ」
ダンとこの従業員のパワーレベリングはあたしの得意技だ。
イシュトバーンさんの説得の条件は精霊様に会わせることだったから、あたし以外じゃムリだったろうし。
あたしんとこへ来て当然のセットだったのか。
「北辺まで行ってそのまま転移の玉で帰るから、今日はベースキャンプへ戻ってこないと思う」
「了解です。行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊出撃。
「今日も魔宝玉目当てですかい?」
「うん。クエストはしっかりこなさないと」
「バット、もうメニーメニーね」
「クエストに遠慮は必要ない。依頼者に失礼だから、しっかりがっつりこなさないと」
「姐御はケツの毛の代わりに何を要求するつもりなんでやすかねえ?」
クララがクスクス笑ってる。
「いや、もし依頼主が帝国の偉い人だったりしたら、戦争について妥協を引き出せるかもしれないでしょ?」
うちの子達が驚く。
「ユー様、そんなことを考えていらしたんですか?」
「考えるだけは考えるよ。タダだし」
戦争の近いこのタイミングで、帝国がドーラにおゼゼ落とそうとするなんて、まああり得ないとは思う。
でもこんな依頼出せるほどのお金持ちって限られるよな?
ドーラ総督はお気楽な貴族だって話だし、戦争を重視してなくてのんびりした依頼を出したってことは考えられるんじゃないか?
「ケルベロスね」
「……背中光ってるように見えやすぜ」
「あっ、本当だ! 逃がすな!」
レッツファイッ!
からの豊穣祈念、ハヤブサ斬り×二で仕留める。
「やった! 『エナメル皮』だ!」
「レア素材でないのに苦労しましたねえ」
「一つは手に入れとかないとね。パワーカード交換の関係があるから」
これでまた新しいパワーカードと交換できるようになる可能性大。
よしよし、今日も前進したな。
出遭った魔物をちぎっては投げちぎっては投げ(投げてないけど)、手当たり次第に倒しながら中央部へ。
「……リッチーです」
「リッチーかー」
アンデッド系最強とされる魔物だ。
パッと見倒せないとは思わないけど、旨みがないので食指が動かない。
マジックポイントを消耗すると今日の魔宝玉狩りに影響するしな?
「やめとこう。ウィッカーマン以外の中央部の最強魔物群は、魔宝玉クエストが終わってからの楽しみに残しとく」
「楽しみでやすか?」
「楽しくない?」
アトムが不敵な笑顔を見せる。
あたし達はバトルマニアではないけど、ドロップが何かくらいは気になるのだ。
さらに北へ。
ウィッカーマンやデカダンスを倒しながら魔境北辺を目指す。
「北辺はまだわかんないこと多いから、今日は西寄りのところから見ていくよ」
「「「了解!」」」
クララによると、北辺西部は比較的寒いところの植物が多いとのこと。
「ニンニクがあります。取っていきましょう」
「これ栽培は難しいんだ?」
「比較的冷涼な気候向きですね。暖地でもよく育つ種はあるんですけど、これはうちでは難しいと思います」
育てにくいやつは素直に諦めよう。
ニンニクはどうしてもうちで育てなきゃいけないってわけでもないし。
「この辺りは人形系レアが多いねえ」
「あそこの奥まったところ、デカダンスばかりいるように思えますが」
……本当だ。
行くべし。




