第307話:シスター・テレサが仲間になりたそうにこっちを見ている
魔境で新鮮な凄草をゲットしたので、ヘタらない内に家に戻ってきた。
畑番の精霊カカシが御満悦だ。
「なかなかいい株だな。二株に分けて植えていいぜ。魔力もたっぷりだから、次回の株分け時に十分間に合う」
「おお、やったあ! やっぱりゲットしたらすぐ持ってきた方がいいんだね」
「当たり前じゃねえか、ユーちゃん。株の体力の回復に魔力使っちまったら、株分けなんてお呼びでねえよ」
「うんうん、これからも凄草手に入れたらすぐ持ってくるよ」
クララに御飯の用意を任せ、あたしはカカシと凄草談義だ。
「凄草ってスーパーレアなんだろ? ユーちゃんはホイホイ手に入れてくるけど」
「いや、あたしも野生で生えてるとこは見たことないんだ」
「そうなのかよ?」
最初は掘り出し物屋さんから買ったやつだし、その後はマンティコアのドロップだしな?
スーパーレアなのは間違いないと思う。
多分マンティコアがすごい凄草レーダーを持ってるんじゃないかな。
「やっぱ魔力が肝だなー。自動で魔力を集めて凄草育てられるようにしたいんだよね。今後何日か戻ってこられないクエストがないとも限らないから。方法も思いついてるんだけど、あたしじゃわかんない技術なんだよ」
「ほう、大したもんだが、当てはあるのかい?」
「うーん、当てはあるんだけど、伝手が弱いんだなー」
地中の魔力を集めるのは、『強欲魔女』と呼ばれるカトマスの人マルーさんの技術だというが?
カトマスへ行ったことないし、繋がりのあるアンセリもデス爺もマルーさんを嫌ってるしな。
相当面倒な人っぽい。
会えたとしても、言うことを聞いてもらえる気がしない。
でもいわゆるパワーナインの一角に数えられるほどの実力者だ。
いずれ絡みがあると思いたい。
「何とか頑張ってみるからね」
「おう、でもムリすんなよ」
ムリしてでも何とかしたい案件なんだが。
何故なら帝国との戦争が近いから。
……あたしが帝国との戦いで生き残ることができるなら、その後凄草でのパワーアップは絶対に力になってくれるはずだ。
家の中のクララに声をかける。
「明日バエちゃんとこ行って御飯食べよう。伝えてくるね」
「はい、行ってらっしゃい」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
チュートリアルルームにやって来たが?
「ユーちゃん、いらっしゃい」
「あっ、取り込み中だった?」
冒険者ではない。
異世界人だろう、バエちゃんと同じ赤い瞳を持つ三〇絡みの女性だ。
スーツ姿で、ブルネットの髪を短めにまとめているところを見ると、やはり聖職者だろうか?
気の強そうな雰囲気を漂わせている美人だが。
「シスター・テレサかな? お噂はかねがね」
ビンゴらしい。
名前をいきなり呼ばれたその女性が、不審げに問いかけてくる。
「そうですが……あなたは?」
「精霊使いの『アトラスの冒険者』、ユーラシア・ライムさんですよ」
バエちゃんが紹介してくれる。
「えっ、あなたがあの?」
「あたしがかの有名な美少女精霊使いユーラシアだよ。刮目して見よ!」
「あはは、ユーちゃんったら」
深々と頭を下げるシスター・テレサ。
「御提案いただいた改良テストモンスターですけど、生産が追いつかないほどの大ヒット商品となっているんです! またユーラシアさん自身の目覚しい活躍もあり、私もイシンバエワも多額のボーナスを支給されました。あなたに足を向けて寝られないです」
やっぱりお金が絡むのな。
「よかったねえ。あたしもこの前もらったパワーカード『刷り込みの白』はありがたいの。あれがないと倒せない魔物がいるから」
「そうでしたか! 私も嬉しいです!」
「ユーちゃん、『刷り込みの白』使ってるの?」
「使ってる使ってる。大活躍だよ。あれのおかげでメッチャ大金持ちになれるかもしれないんだ」
「じゃあまたお肉お土産によろしくね」
アハハと笑い合う。
お肉はいつも持ってくるってばよ。
ウィンウィン雑談もこの辺で、って感じでバエちゃんが聞いてくる。
「で、ユーちゃんどうしたの?」
「明日の夜、一緒に御飯食べよ。お肉持ってくるよ」
「あっ、じゃあ明日カレーにする!」
シスター・テレサが仲間になりたそうにこっちを見ている。
「あの、私も御一緒してよろしいでしょうか?」
「もちろん構わないよ。シスターの話も聞きたいしね」
「ありがとうございます」
「うちの精霊と悪魔が一緒に来るけどいいかな?」
「あ、悪魔?」
驚くシスターにバエちゃんと代わる代わる説明する。
「悪魔と言っても好感情好きの子なんだ。普通の悪魔みたいにこっちの嫌がることはしてこないから、心配する必要はないよ」
「くるっとした白髪と犬耳のちっちゃい子で、とっても可愛いんですよ。しかも『いい子』の固有能力持ちで、思わずぎゅっとしたくなります」
「可愛いの? 楽しみねえ」
思わぬ情報源と話せることになった。
明日楽しみだな。
シスター・テレサを玩具にできるぞー。
◇
寝る前にサイナスさんとヴィル通信だ。
「サイナスさん、聞こえる?」
『ああ、聞こえるよ』
「今日、イシュトバーンさんとの会見は無事終わったよ」
『どうだった?』
「おもろい爺ちゃんだった。でもちょっとえっちだな」
『ハハハ、楽しそうで何より』
ちょっとじゃなかった、かなりだな。
今度やらかしやがったら、絶対魔境に捨ててくる。
「レイノスの空き店は貸してもらえることになったから」
『やったじゃないか』
「うん、青の民セレシアさんには連絡しといてよ」
『わかった。しかし今後、セレシア族長と商人の連絡が難しいんじゃないか?』
「そうだねえ。ちょっと考えとくよ」
店がオープンしちゃえば店で打ち合わせすればいいけど、開店までが問題かな。
何だかんだでカラーズは遠いから。
セレシアさんとラルフ君パパに、連絡係ヴィルを紹介しておくべきか?
『黄の民フェイ族長代理から、輸送隊の人選が終わったから見て欲しいと連絡あったぞ』
「じゃあ明後日行くって伝えといて」
『明日コップの試作品を取りに、カラーズへ来るんだろう?』
「行くけどあたしも用があるんだ」
とゆーか輸送隊員の人選だけなら時間かからんけど、それだけじゃ終わんない気がするから。
『忙しいんだな。じゃあおやすみ』
「サイナスさん、おやすみなさい。ヴィル、ありがとうね。通常任務に戻ってね」
『了解だぬ!』
よしよし、寝るか。




