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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第303話:引退商人イシュトバーン

 フレンドで転移の玉を起動し、ラルフ君の家にやって来た。

 大きな屋敷だなー。


 漠然と思ったけど、将来ドーラの人口が多くなったらレイノスの市域も拡張することになるんじゃない?

 だって今のレイノスって人口に比して狭いもん。

 ここラルフ君家も今はレイノス郊外だけど、いずれ市内になりそう。

 市域を広げるとすれば東西なんだろうけど、どこにどういう機関を置く、商業地にする住宅地にするって計画を持って欲しいもんだ。

 ドーラの発展のためにはね。


 この前と同じ、一番奥の突き当たりの部屋へ案内される。

 ここが一番いい部屋なんだろうな。


「父様、母様、ラルフただいま帰りました。精霊様、並びにその巫女様をお連れしています」

「入りなさい」


 両開きの大きなドアが開けられ、クララのあとにあたしが入る。

 アトムとダンテは別室に控えさせている。

 ラルフ君両親と向かいの席に座っている、愛嬌のある丸い目をした老人、あれがイシュトバーンさんか。

 なるほど、中級冒険者くらいのレベルはあるっぽいな。

 若い頃旅商人としてドーラ各地を回り、魔物と戦った経験も少なくないんだろう。


 そしてあたしの中のお笑い感知器が敏感に作用し、語りかけてくる。

 間違いない、お笑いボーダーラインのこちら側の住人(笑)だ。


 あたしは胸をそらし、声を張り上げる。


「そこな老人、精霊様を呼びつけるとは何用ぞ!」


 ラルフ君両親と警備員、イシュトバーンさんのお付きの二人の女性がぎょっとする。

 事前に打ち合わせしておいたラルフ君パーティーは始まったぞって顔してるけど。

 イシュトバーンさん自身は面白そうな目をこちらに向けるだけだ。

 うむ、それでこそ。


「これはこれは精霊様と精霊の巫女様、初めてお目にかかります。手前、引退商人のイシュトバーンと申す者でございます。して、一ヶ月半ほど前にレイノスに顕現されたという精霊様に間違いございませぬな?」

「いかにも」

「商人とは疑い深きもの、失礼ながら身の証を立てるものをお持ちでしょうかな?」


 ははあ、この爺さん、せっかくだから面白いものでも見せてみろってことだな?

 がっつき過ぎだぞ。

 相当エンターテインメントに飢えていると見える。

 最初から面白いものは贅沢だろ。


「レイノス副市長オルムス・ヤンの御墨付きである。しかと見るがよい」


 書状を覗き込むイシュトバーンさん。


「……直筆、確かに副市長の筆跡だ。精霊様とその従者殿に間違いありませぬな」

「うむ」


 イシュトバーンさんと目が合う。

 時間としてはほんの一瞬であったが、やけに長く感じた。

 ぷっ。


「「あはははははっ!」」


 同時に笑い出したあたしとイシュトバーンさんに、周囲の者達が当惑する。


「おう、なかなかだ。実は精霊様の巫女が『アトラスの冒険者』、精霊使いユーラシアだという調べはついてる」

「うん、まあそーだろーなーとは思った。わざわざ精霊様を指定してくるくらいだから、こういう小芝居が好きなのかなと思ったの。タメ口でいいかな? 敬語は口が曲がりそうで苦手なんだ」

「おう構わないぜ。こっちも精霊様に敬語使うのは疲れるからな」


 再びアハハと笑い合う。

 ダンはクソジジイって言ってたけど、気持ちのいいじっちゃんじゃないか。

 ここで控え室からアトムとダンテを連れてきてもらう。


「紹介するね。あたしこと精霊使いユーラシアに近い側から、眩草の精霊クララ、剛石の精霊アトム、散光の精霊ダンテだよ」

「当代に精霊使いが一人とは限らねえだろう? あんたは自分をどう証明するんだ?」

「えっ、そこ疑う?」


 イシュトバーンさんがニヤニヤしている。

 ひょっとして塔の村の精霊使いエルのことも知ってるのかな?

 ダンがクソジジイって言ったわけがわかった。

 今度こそ面白いもの出してみろって顔だ。

 断ると空き店の話がパーになりそうだし、ギルドカードなんか出したら場がしらけそう。

 となれば……。


「こういうものはどうだろ?」


 テーブルの上に魔宝玉を一つ置く。

 話のタネになるかと思って持ってきたものだ。

 こーゆー使い方になるとは思わんかったけど。

 イシュトバーンさんの目が驚愕に見開かれる。


「……鳳凰双眸珠。本物だな」

「えっ! あの帝国の宝物庫に一つだけ保管されているという?」


 ラルフ君パパも驚く。


「今んとここれ取ってこられるのうちのパーティーしかいないから、証明にならない?」


 それには答えず、イシュトバーンさんが質問する。


「これは帝室の国宝とは別物なんだな?」

「別物だよ。あげるよ、これ」

「えっ?」


 全員が静まり返る。


「……これが精霊使いユーラシアか。なるほど、規格外だぜ」


 褒められてるんだよな?

 もうちょっとわかりやすく褒めてほしい。


「老い先短い人生に分不相応なものもらっても役に立たねえ。これは返すぜ。しかしどうしてこんなものを持ってる?」

「ウィッカーマンっていう魔物のレアドロップなの」

「なるほど、ウィッカーマンの……」


 ふーん。

 専業冒険者でもないのに、あまり有名じゃないはずのウィッカーマンを知ってるんだな。


「ウィッカーマンは理論上倒せないと聞いたが?」

「普通じゃ倒せないよ。でもあたし達にはこれがあるから」

「パワーカードか。見せてみろ」


 イシュトバーンさんも現役時代はパワーカードを使ってたそうだ。

 今売り出し中のあたしがどんなカード使ってるかは興味あるだろ。

 行動回数一回追加の『あやかし鏡』、会心率+八五%の『前向きギャンブラー』、衝波属性の『アンリミテッド』、コピー攻撃を可能にする『刷り込みの白』の四枚のパワーカードを見せる。


「初めてウィッカーマン倒したのは、レベル七〇弱くらいの時だったかな。これで『勇者の旋律』っていうダメージ増加のスキルかけて、二回攻撃スキルの『ハヤブサ斬り・零式』で攻撃してギリギリ勝てる感じだった」

「なるほど、衝波属性の強攻撃を八連続で叩きつけてクリティカルに期待してやっとということか。確かに普通じゃ到底倒せねえ……」

「今はレベルがカンストしたから大分楽になったけど、レベル七〇以下の時はクリティカルヒット七回以上出ないと勝てない計算だったよ」

「ハハッ、八回ヒットの内、クリティカル七回か。バカげてる」


 呆れて変な笑い方してる。

 屈託のないいい顔だな。

 どうやら喜んでもらえたようだ。

 おもろいじっちゃんじゃないか。

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