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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第301話:キングオブクソジジイ

「ほう、あのイシュトバーン殿と会う?」

「どういう人か教えてもらえると、メッチャありがたいんだけど」


 夜の食事時、ダンパパがぜひ礼をさせていただきたいと言うのだ。

 美味い鍋を御馳走になってるからいらないのにな。

 ダンとは最初から腹一杯食べさせろの約束だったし。


 ちょうどいいから、明日会う予定であるイシュトバーンさんの情報を仕入れることにした。

 ダンパパもまたイシュトバーンさんに対する尊敬の念が見える。

 少なくとも現役時代はすんごい商人だったってのはよくわかるな。

 もっともダンは殺しても死なねえジジイだって言ってたけど。


「見ただけでどんなアイテムかをたちまち当ててしまう眼力の持ち主でしてな。それを利用して西域とレイノスを交易で結んで発展させ、同時に莫大な財を築いた人です。当代の傑物と言えましょう」

「『道具屋の目』の固有能力だ」

「ふんふん、商人さんが持ってると目利きがバッチリだもんねえ」


 ダンが補足してくれる。

 『道具屋の目』の固有能力は、バエちゃんや武器・防具屋ベルさんの持ってるやつだな。

 『鑑定』も同様だが、見抜くタイプの固有能力は使いでがあっていいと思う。

 ちょっとタイプは違うけど、あたしのメッチャカンがいいという『閃き』もその類なんじゃないかな。

 ある程度他人の魂胆が見抜ける気がする。

 最近ラブセンサーの感度がすげえいい感じだし。


「若い頃は行動力を最大限に利用した、いわゆる足で稼ぐタイプの商人だったと言われています。しかし私どもが知るイシュトバーン殿の本領は、豊富な資金にものを言わせた大胆な買いつけですな。救われた自由開拓民集落も多いと聞きます。ただし一度でも不興を買うと二度と商売相手となることは許されず、例外なく報復されました。虎の尾は決して踏んではならぬと恐れられたのです」

「『タイガーバイヤー』の異名の由来だ」

「『タイガーバイヤー』か。かっちょいい異名だね。不興を買ったのはどういったケースだかわかんないかな?」

「信義に悖る商行為ですな。数や品質の誤魔化し、乱暴狼藉、横入りなどです」


 ふーん?

 フェアな取り引きを重要視する人なんじゃないの?

 信用できる人だと思うけど。


「パパさんの話聞いてるとすごくまともな商人に思えるのに、ダンが嫌ってるのは何でなん?」

「少しは聞くの遠慮しろよ」


 するわけないだろ。

 ダンが苦々しい顔になり、ダンパパが笑って言葉を継ぐ。


「お茶目が過ぎるのですな。冗談がキツいというか。息子も小さい頃、随分と遊んでもらったものです」

「からかわれてただけだ」


 ははあ。

 でもダンはかなり冗談耐性あるのにな?

 いや、美少女にからかわれるのは好きでも、ジジイにからかわれるのが好きなわけではないのかも。


「足を悪くされまして、一〇年ほど前に引退されました。以降はたまに挨拶に伺うくらいの関係になってしまいましたな。今でもレイノスの商業関係界隈では、かなりの影響力をお持ちでいらっしゃいますよ。ただ随分と暇を持て余しているらしい、とはあちこちから聞き及びます」

「あんたのことを聞きつけて、新しい玩具を見つけた気分でいるのに違いないぜ」

「いや、精霊様に会わせろって話だったんだけど?」


 ダンパパが驚く。


「精霊様というと、一時期レイノスでかなり話題になっていた騒動ですか? あれもユーラシアさんが関わっておられたので?」

「えーと、まあそーなの」

「ギルドじゃ面白騒動の中心には必ずユーラシアがいるんだぜ」

「おいこら、訂正を要求するぞ」

「ギルドじゃ面白騒動の中心には必ずユーラシアがいるんだぜ。世界樹折っちゃった事件以外は」

「……」


 こら、何も言えないじゃないか。

 本当のことをゆーな!


「情報収集は怠りない方です。イシュトバーン殿が精霊様騒動とユーラシアさんを結びつけて考えているのは間違いないでしょう」

「むーん?」


 つまりやっぱりあたしに会わせろってことだ。

 調べられたらわかっちゃうわな。

 精霊様騒動はあたしが原因って気付いてる人、結構いるっぽいし。

 あっ、レイノス西門の警備兵に聞かれたら一発だわ。

 調査怠りない人が知らないわけないわ。


「無類の女好きだ。気をつけろよ」

「え? クララに色目使われたら困るな」

「あんただよ、あんた!」

「あたしに不埒なマネしたら魔境に捨ててくるからいい」


 お、イシュトバーンさんの話題になってから、初めてダンが楽しそうな顔になったな?

 そんなにダンとウマが合わない人なのかしらん?


「いずれにしても悪い人じゃありませんよ」

「キングオブクソジジイだ」

「善人と聖人の評価がここまで分かれるとは」

「聖人とは照れるぜ」

「あんたの定義の聖人だぞ?」


 でもどんな人か輪郭は掴めた気がする。


「パパさん、ありがとう。すごく参考になったよ」

「極めて気さくな、ざっくばらんな方ですよ」

「ドーラで最も失礼なやつだ」

「評価が違い過ぎて笑えてくるなあ」


 明日イシュトバーンさんに会うのすげー楽しみになってきたぞ?


「今日はごちそーさまでした。すごく美味しかったでーす」

「いえいえ、こちらこそ大変お世話になりまして」

「助かったぜ。また何かあったら手伝ってくれ。たっぷり奢るから」

「うん、さようなら」


 ウシのお肉って、ひょっとして食べたの初めてだったかしらん?

 上品でおいしかったなあ。

 転移の玉を起動し帰宅する。


『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』


 おっと、これもクエストだったのか。

 もうレベルカンストしてるんだけど。


          ◇


 寝る前にヴィルをサイナスさんの元へ飛ばす。


「サイナスさん、聞こえる?」

『ああ、何か用かい?』

「取り立てて用ってことじゃないけど、これから毎晩ヴィルをサイナスさんとこに飛ばすから、連絡はその時によろしくってこと伝えたくて」

『ありがたいな』


 ヴィルもお仕事があると嬉しそうにしているしな。

 性格にイヌっぽいところがある気がする。


「今日は何もない感じ?」

『ああ。明日コップの試作品が上がってくるくらいか』

「うん、覚えてる。明後日の朝、取りに行くよ」

『わかった。肉を持ってきてくれると助かる』

「おおう」


 まあお土産で持っていくつもりではあった。


「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 これでよし、さて寝るか。

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