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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1808話:脅しておきながら敵じゃない謎理論

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「煮た野菜をすり鉢で潰すじゃん?」

『ん? ああ、昨日買ったすり鉢か』

「そうそう。それを骨スープと牛乳で割ったスープが、非常においしいことが判明しました。発明者のクララ偉い」

『この前のクリームシチューに似てるな』

「うん。小麦粉が入ってない分、もたっとした感じがなくてダイレクトにいただけるね」

『これからの季節向きかもな。冬には小麦粉の入ってるシチューの方が体が温まる気がする』


 サイナスさんの言う通りだ。

 JYパークで販売するなら、寒くなってきた頃に『クリームシチュー始めました』って看板出すと売れそう。


「今日はクレソンとタマネギだったけど、タマネギみたいな甘味の出る野菜が入ってりゃ何でも美味くなる気がするな」


 すり潰す作業が面倒だから、そこんとこ簡単にする魔道具を誰かが作ってくれんものか。

 硬い入れ物と風魔法かなんかでブーンと。


「午前中はサラセニアへ行ってきたんだ」

『うん、聞こう。話題が飛ぶのは想定内だ』

「想定内だったかー。やっぱ天使国アンヘルモーセン派のクーデターで決定。天使に初めて会いました」

『ほう。サラセニアの街でか?』

「首都のウトゥリクってとこでね。街歩きながら聞き込みしてたら絡んできたんだよ。いつも街歩きの時は、ヴィルを肩車してるじゃん? その悪魔と戦わせろって」

『好戦的だな』

「悪魔の言い分を聞いてると、アンヘルモーセン国内ではそういうことあるんだって。集団で寄ってたかって攻撃してくるから、基本ソロ活動の悪魔は天使を毛嫌いしてる」


 おそらく天崇教があるから、天使は人間から崇拝の感情を得るシステムがしっかりしている。

 悪感情を得たいわけでもないんで、天使同士の仲は悪くないのだろう。


『天使ってどんなんだ? 白くて奇麗ってイメージだけど』

「美形だね。見た目一〇歳児くらいで悪魔より大きい。中性的で白か銀色が基調って感じ」

『やはり今日も複数の天使だったのかい?』

「三人だな。どーんと体当たりしてヴィルの勝利」

『天使と悪魔の戦いのイメージと違う』


 イメージ通りの大戦になったらえらいことだわ。


「で、天使をとっ捕まえて話を聞くじゃん?」

『捕まえて尋問はユーラシアのイメージだな』

「聖女のイメージだったか。面白いことがわかったんだ。アンヘルモーセンは大公が亡くなるってことを予知してて、サラセニアにちょっかいかけてた」

『予知? トップシークレットなんじゃないのかい? どうやって聞き出した?』

「鎌かけたんだよ。どうもサラセニアへの拘りようがおかしいからさ。大公死ぬこと知ってたら説明できるなーと思ってたんだ」

『とにかくとにかくとにかくえぐい』


 随分重ねたね。

 ボキャブラリーの限界?


「サラセニアからは友好的に手を引いてもらうよう交渉したんだ」

『ウソだ。えぐいことして諦めさせたに違いない。何をした?』

「……ちょっとえぐかったかもしれないな。意訳すると、あたしの言うこと聞かなければ天使の得られる信仰心は激減するぞって」

『脅しじゃないか』

「天使とアンヘルモーセンを引かせたって、クーデターが終わるわけじゃないじゃん? あんまりじっくり楽しむわけにはいかなかったから、手早く片付けたかったとゆーか」

『どこまでもユーラシアの都合なのがえぐい』


 あたしの都合が優先なのは当然だわ。

 世界の常識だわ。


「ヴィルやバアルにとって天使は敵かもしれんけど、あたしの敵ってわけじゃないじゃん?」

『脅しておきながら敵じゃない謎理論』

「サラセニアに進出しようとするのは、各方面に負の影響が出るからやめろってことだよ。アンヘルモーセンは天使ありきの国だから、自分のナワバリでよろしくやってなさいとゆーことが言いたいんだよね」

『安定のバランスということかい?』

「そうそう、落としどころ。天使も行くとこなくなると困るだろうから」


 アンヘルモーセンが商業で重要な国であることは事実なのだ。


「天使はかなり危険な聖魔法を撃ってくることがわかった。これは今日の大きな収穫だな。ヴィルはレベルが高いから一発でやられるようなことはないけど、今後対策しないと」


 『ホロレクイエム』を撃てる銀髪の天使が何人もいる状況を考えると、かなり危険だ。


『天使になんか関わらなきゃいいじゃないか』

「あたしの都合で天使と連絡取りたかったり、あるいはアンヘルモーセンへ行きたかったりすることがこの先あると思うからね。ヴィルの安全を確保しないといけない」

『また君の都合か』

「だからそうだとゆーのに。あたしに都合のいい世の中にするんだとゆーのに」


 自由に商売できるようにしたい。

 でも世界は広いからなあ。

 できるところから手をつけるのだ。


「午後は帝都行ってきたんだ。フィフィの爺ちゃんランプレヒトさんに会いに」

『ん? しょっちゅう会いに行くほど重要な人なのかい?』

「よく考えりゃ、重要ではないな。ただ圧が強いというか押しが強いというか、印象に残る人なんだよね」

『君みたいな人だな?』

「あたしは人当たりがいいじゃん。プリンスの義父のフリードリヒ公爵も元騎士でさ。ランプレヒトさんに呼び出し食らって、断れなくて困ってるのがおかしくて。あんなにやり手の人なのに」

『どこからでも楽しみを見つけてくるなあ』

「フィフィの本も読んでくれたみたいなんだ。もうちょっとあの本が話題になったら、フィフィと爺ちゃんのごたいめーんイベントだな」

『円満解決になりそうなんだな?』

「うん。物事は円満に収まるのがいいよ」

『トラブルメーカーが何か言ってる』


 トラブルメーカーではないってば。


「固有能力を知りたいっていう件があってさ。明後日マルーのばっちゃん連れてもう一度行ってくる予定なんだ」

『ブタのイベントが進むのはいつだっけ?』

「明日だよ。エメリッヒさんと、帝国から三人連れてきてエルフの里行く。その時にブタ飼育の資料貸してもらう」


 先帝陛下の死からこっち、急に予定が立て込んできたな。

 ゆっくり休んでパワー回復だ。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はブタ。

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