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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1805/2453

第1805話:素質のあるなし

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ドーラの美少女精霊使いユーラシアが、フリードリヒ公爵を連れてやって来ましたよ」

「おお、これはこれは。どうぞ、裏庭の方へお通りください」


 エーレンベルク伯爵家邸に着いたらすぐ通された。

 フリードリヒさんが来ること門番は知ってたみたいだな。

 威勢のいい声が聞こえる。

 早速剣術の稽古やってるみたい。


「あっ、ニライちゃん」

「ユーラシア!」


 ニライちゃんとヴィルが飛びついてきた。

 木剣を持ったままだと危ないだろうが。

 でもぎゅっとしてやる。

 ランプレヒトさんとノルトマンさんともう一人、ニライちゃんよりはちょっと年上の知らん男の子がいるな。

 ランプレヒトさんのデカい声が響く。


「おお、フリードリヒ! よく来たな!」

「団長、お久しぶりです」

「フィフィの本どうだった? 感想を聞かせてよ」

「おもしろいのだ! ととさまによんでもらったのだ!」

「まことに面白いぞ! あのフィフィリアがなあ。苦労を感じさせないコミカルな文体がよい」


 よしよしバッチリだ。

 いつフィフィとランプレヒトさんを会わせてもいいくらいだな。


「早速ちっちゃい子に指導してるのかな?」

「うむ、そうだ!」

「ランプレヒトさん。ニライちゃんはどお?」

「いい。実にいいな! ノルトマンの娘だけのことはある!」


 ノルトマンさんとニライちゃん喜んでるがな。

 ニライちゃんは頭脳の方も鍛えて欲しいのだが。


「ところでそっちの男の子はどちら様? ニライちゃんよりは少し年上みたいだけど」

「当家の使用人の子だ。こういうのは一人よりも複数の方が上達するからな」

「うんうん、わかるわかる」


 さすがに元騎士団長の見立てだな。

 鍛えりゃかなり伸びる子っぽい。

 しかし残念ながら、やる気はあまりなさそうな?

 ランプレヒトさんが言う。


「ユーラシア君、冒険者の武勇伝を聞かせてやってくれんか。ヤマタノオロチの話がいい。ワシも聞きたいのだ!」

「え? まあいいけど」


 フリードリヒさんがステルスモードに入ってるんだが。

 よっぽどランプレヒトさんのこと苦手なんだなあ。

 そのデカい身体は存在感消そうとしたってムダだわ。


          ◇


「……何の修行だよ! 危険過ぎるだろ! 神話級の魔物と戦う機会なんかそうそうないから! って。ライナー君は天然ボケの人かと思ってたらツッコミ属性だった」

「すごいのだ!」

「素晴らしい!」

「実にいい!」


 一通りヤマタノオロチ退治の話を語ったらウケるウケる。

 ライナー君がバイプレイヤーとしていい働きしてくれたから、妹のニライちゃんも父のノルトマンさんも大喜びだし。

 ノルトマンさんが言う。


「ユーラシア君は冒険者一筋で強くなったわけではない、と聞きましたが」

「何?」


 あれ、ランプレヒトさんも意外そうだな?

 いや、冒険者活動でレベルが上がったのは間違いないんだが、レベルがカンストしちゃったのはついでとゆーか弾みとゆーか。


「ドーラは魔物が多いの」

「聞いたことはあるな」

「人の住んでるところでも村の外は危ない、みたいな地区もあるんだ。安全な自分の村だけで過ごす人ももちろん多いんだけど、あたしは閉じこもってるのが嫌でさ。外に出るためにどうしてもレベルが必要だったんだよ。『アトラスの冒険者』の誘いに乗った理由でもあるな」

「む? それは強さを求めたこととは違うのか?」


 強さは手段として欲しかったのであって、目的ではなかった。


「最初はレベル二桁を目標にしてたな。あたしん家の近場で出る魔物を考えると、レベル一〇あれば行動範囲が格段に広がるから。ところが行動範囲が広がるとおゼゼが出て行くようになるんだよね。そーすると追い立てられるように冒険者活動に精出さなきゃいけなくなるじゃん? 魔宝玉ドロップするんで効率的に稼げる人形系レア魔物をメインターゲットにして。倒せないって言われてたウィッカーマンっていう魔物を倒せるようになったら、あっという間にレベルカンストしちゃった」

「ドラマだな! 実にいい!」

「ドラマかなあ? ところでそっちの子。どうしてじっちゃんは鍛えようと思ったの?」

「素質があるからだ! ユーラシア君もわかるだろう?」

「ステータス高めなのも覚えが良さそうだってのもわかるけど、素質のあるなしなんて、本人はわからんものだぞ? ちゃんと見込みがあるから鍛えるのだって教えてあげた? モチベーションなさそーだよ?」

「えっ?」


 当惑するランプレヒトさん。

 やっぱ言ってないのか。

 いきなり訓練に参加しろとだけ言われて、テンション上がるわけないじゃん。

 しょうがないなー。

 使用人の子に言う。


「じっちゃんの言葉が足りなかったかもしれないね。ごめんよ」

「い、いえいえ」

「使用人の子が何人いるか知らんけど、じっちゃんがあんたを選んだのは偶然じゃないんだ。あんたはできる子だから」

「ぼくができる子?」

「ベン、すまなかった! 何の説明もしなかったワシが悪かった!」

「だ、旦那様。もったいないことです!」


 もうちょっとやる気出させてやるか。


「武芸の筋がいいから、今から真面目に訓練しておけば間違いなくかなりの使い手になれるよ。騎士でも軍でもボディーガードでも引っ張りだこ」

「むう、ベンは残念ながら騎士になれるほどの家ではないのだ」

「どうにでもやりようはあるでしょ。まあでもゴリ押すとよろしくないか」


 冒険者としても有望ですぞ。


「で、これはじっちゃんも知らんと思うけど、ベン君は何かの固有能力持ちだよ。おそらく戦闘に役立つやつ」

「ユーラシア君、固有能力の有無までまでわかるのか?」

「高レベルの『閃き』持ちだからかと思うけど、固有能力を持ってるか持ってないかまではわかるんだ。でも鑑定士じゃないんで、何の固有能力持ちかまではわかんない」

「こゆうのうりょくとはなんぞなもし?」

「その人が持ってる特別な力のことだよ。例えばどんなアイテムかわかるとか生まれつき魔法が使えるとか、いろんなのがある」

「ベンはまほうがつかえるようになるのか?」

「どうだろうな? 属性魔法系の固有能力ではないけど」

「あちしにはこゆうのうりょくがないのか?」

「ニライちゃんも固有能力持ちだぞ」

「「「えっ?」」」


 大人三人が驚いてるけど、固有能力持ちって四、五人に一人はいるからね?

 珍しいもんじゃない。

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