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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1801話:話しかけてきた男

 ダンは引き続きニヤニヤしてるが、王様は不満そう。


「天使達を解き放ってしまうのか? 要求が通るまで捕らえたままの方がいいのではないか?」

「いや、いいんだ。ウソ吐きやがったらあたしらの敵決定じゃん? アンヘルモーセンに乗り込んで、堂々と天使狩りできるからね。楽しそうでしょ?」

「ハハッ、それもそうだな」

「あんたはフラグ立てる天才だな」


 フラグを立てたつもりはなかった。

 こんだけ脅しときゃ言うこと聞くだろ。

 震えあがる天使達。


 銀髪ロングの天使に聞く。


「あ、そーだ。ねえ、ハリエル。さっきの『ホロレクイエム』って魔法を、王様に習得させることはできる?」

「で、できますけど、信徒でもない者にスキルを授けるのは……。おまけに聖魔法を授けるのは例がないです」

「現在信者か信者でないかという括りはとりあえず置いとこうか。アンヘルモーセンを敵視する王様の機嫌を取っとくんだよ。天崇教の方でも、ガリアの王様にスキルを授けたって感じに宣伝できるじゃん?」

「……なるほど?」


 政治的効果について考えてください。

 王様が天崇教徒じゃないにしても、天使に対して友好的だと思わせる材料に使えるってことだよ。

 よし、銀髪天使ハリエルも納得したみたいだな。

 もっともあたし達の実力をわからせたから、理不尽な要求以外は通るだろうけど。


「わかりました。ではピエルマルコ王、手を出してくださいな」

「こうか?」


 王様の両の手を取る銀髪ロングの天使ハリエル。

 あ、魔力が高まる。


「……はい、結構です」

「うむ、これがスキル習得の感覚か。感謝するぞ、天使ハリエル」

「よろしいのですわ」


 ハハッ、王様喜んでる。

 やはり天使そのものに対する嫌悪感はないらしい。

 今日のところはこれで手打ちだ。

 まあまあのイベントでした。


「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 三人の天使と別れた。


「ごめんよ。天使を許すのは、ヴィルには受け入れがたい解決だったかもしれないけど」

「いいんだぬよ? 優しい御主人も好きだぬ」

「そうだったかー」


 あんたはいい子だね。

 ぎゅっとしてやろう。

 ダンが話しかけてくる。


「おい、いいのかよ?」

「何が?」

「今のスキル授受だよ。ガリア王を篭絡したとかって、いいように使われちまうかもしれねえだろうが」

「まあね。でも逆にこっちから仕掛けることもできるじゃん?」

「こっちから? どういうことだ?」

「天使はガリアの王様に味方した。その証拠に天崇教徒には授けない聖魔法『ホロレクイエム』を授かったって具合に吹聴すれば、アンヘルモーセンと天使を切り離すことができるかもしれないってことだよ」

「「!」」


 驚く王様とダン。

 アンヘルモーセンと天使が一体じゃないというのは、これまでにない新しい考え方かもしれない。

 実際にアンヘルモーセンと天使を分かつことはできないにしても、人々に疑惑を生じさせるには十分だろ。

 だってマジに王様は『ホロレクイエム』をもらってるんだから。


「ふうむ、ユーラシアはアンヘルモーセンと天使の間に亀裂を入れることを考えていたのか」

「うまくいくかはわかんないよ? 情報戦でイーブンだとしたって、もらったスキルの分だけ得でしょ。王様アンヘルモーセンのことは気に入らないみたいだけど、天使に対しては反感持ってないみたいだし」

「考え方が悪魔的だぜ」

「まー悪魔は天使を嫌ってるんだろうけどさ。あたしにとっては敵じゃないんだよね」


 でもうちの子達を虐めるようなら容赦しないけどな。

 天使が大人しく引くなら、王様にスキルを授けて友好的に和解したという事実は、アンヘルモーセンにとっても損にならない。


 王様が言う。


「これでアンヘルモーセンの干渉は排除できるのか?」

「サラセニアに関しては。向こうも戦争して勝てると考えるほどおめでたくはないだろうから」


 要するにサラセニア大公の死を予知して、より信仰心を集めたい天使と教義を広めたい天崇教、テテュス内海での影響力を強めたいアンヘルモーセン政府の目的が一致したからのアクションなのだろう。

 天使と天崇教に一定の権益を認めてリスクで脅せば、アンヘルモーセン政府だけで動くことは考えにくい。


「天使の一味に未来を予知できる固有能力持ちがいること、大公ボニファツィオ殿の逝去を前もって予知したということを、どうやってユーラシアは知ったのだ?」

「いや、鎌かけただけだよ。向こうさんが妙にサラセニアに拘るのはおかしいなと、元々思ってたの。大公殿下が亡くなる前からあたし達の知らない何かを掴んでる。そういう手段があるんだろうなとは考えてたんだ」

「ほお?」

「もっとあたしを崇め奉ってもいいんだよ」

「崇め奉るぬ!」


 アハハと笑い合い、王様が言う。


「状況は単純になった」

「うん。あとはサラセニアを正統な大公の下に団結させるだけ」


 でもまともにやると、故大公の遺児を奉じたガリア軍のサラセニア侵攻なんだよな。

 どーしても犠牲者が出ちゃう。


「犠牲者は最小限に抑えたいものだが」

「最小限ってことになると、クーデターの首魁クラス大公弟殿下と騎士団長、ジョコンド商業ギルド長の処罰ですますってことだねえ」

「アンヘルモーセンと天使が関わらなきゃ、行き着くとこ決まってんじゃねえか。クーデター派に味方するだけ損なんだろ?」

「ダンの言う通りだねえ。事実をサラセニア市民に周知させることができれば、クーデター派を孤立させることができそうだけど……」


 クーデター派が不利を自覚して自棄っぱちになると、却って被害が大きくなっちゃうかな?

 市民に武器突きつけてムリヤリ言うこと聞かせるとか、敵味方もろとも無差別破壊工作とかに走りそう。

 じゃあ有利だと思わせといて一気に制圧するのがベストか。

 可能かな? そんなこと。


「ちょっといいか、君達」

「んー?」


 話しかけてきたのはやや長身の隙の少ない男だ。

 軍人っぽい。

 サボタージュしている騎士団員か?

 あるいはクーデター派の協力者か?


「今の天使達を捕らえたやり取りを、離れたところから見ていたんだ。君達は外国人なのだろう? かなりの実力者だとお見受けするが、どういうことなんだ? 何故天使と揉めていた?」


 目の前の男以外にも数人の気配がある。

 こいつがもしクーデター派だったりすると面倒だが、どう答えよう?

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