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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1744/2453

第1744話:期待されてること

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「やあ、精霊使い君いらっしゃい」


 皇宮にやって来た。

 ニコニコしてるサボリ土魔法使い近衛兵。


「マルクス様ガイウス様が詰め所にいらしているぞ」

「あれ、ひょっとして昨日も来てた?」

「午前中はいたな」

「悪いことしちゃったなー、とは思ってないけど」

「どっちなんだ」


 アハハと笑い合う。


「精霊使い君は普段どんな活動をしているんだい?」

「女の子が何してるか知りたいってのは反則だぞ?」

「えっ? いや、深い意味はなかったんだが」


 冗談だとゆーのに。


「何してるって言われても色々だな。例えばブタを復活させたくてさ」

「ブタ? というと大内乱前に高級肉としてもてはやされていたという?」

「美味いお肉と言われると無視できないじゃん? ドーラで復活プロジェクトを進めてるの」

「へえ、かなり意外なことをしているんだな」


 一般的に冒険者って言われて、思い浮かべる活動ではないかもな。


「だけどノウハウがなー。かつてブタが飼育されていた現在のギレスベルガー家領には、ブタ飼育に関する資料が残されているらしいんだ」

「ほう」

「で、この前ヴィクトリアさんの茶会で、ギレスベルガー子爵家当主フェーベさんに会ってさ。協力を取りつけた」

「どこにでも食い込んでいくなあ」

「で、サボリ君に聞きたいのはここんとこなんだ。フェーべさんって、どういう経緯で子爵になったの? 立場が弱いんじゃないかって聞いたんだ」


 眉を顰めるサボリ君。


「詳しいことは知らない。つい一ヶ月程前だ。前子爵カスパー様がフェーべ様に子爵位を譲られて。公になっているのはそれだけだ」

「カスパーさんってのがフェーべさんの兄だよね?」

「ああ」

「本来跡を継ぐべきだった人が兄の血を継いでいない疑いがあることが判明したって、フェーべさんが言ってた」

「マジかよ。大変なスキャンダルだ」


 大変なの?

 よくありそうなことだと思っちゃってたわ。

 しかし貴族事情通のサボリ君が知らんとなると、あんまり穿り返しちゃいけないことのようだ。


「帝国は血統主義が厳格だからな。正統な継承権のない者が爵位を継ぐ際には、厳しい審査を受けた上での許可が必要だ」

「ふーん、ウルピウス殿下や左分け皇子は簡単に跡継ぎの許可出たけどな?」

「現在の当主の嫡子でなくても、血の繋がっていることは明白だからな」

「えーと、血が繋がってないのに繋がってるふりをして爵位を継ごうとしたとすると?」

「その有爵家と皇帝家並びに貴族社会全体に牙を向けたとして処刑だろう」

「ええ? 子供は知らないケースだってあるだろうに」


 だから血を継いでいない『疑い』って言い方なのか。

 断定すると処刑になっちゃうから。


「じゃ、サボリ君が知ってるギレスベルガー家の事情は以上?」

「爵位継承についてはほぼ知らないな。カスパー様には前妻の長男がいたんだ。社交界に出る前に宮廷魔道士になったそうだが」

「あ、その人予算が出ないからって宮廷魔道士辞めちゃったんだ。ホームレスしてたとこをスカウトして、今ドーラで活躍してもらってる」

「ええ?」


 いや、だってケイオスワードの素養ある人なんて、滅多にいないんだもん。

 貴重な人材だからさ。


「弟さんが家を継ぐのが規定路線って言ってたんだよ」

「つまりその弟がカスパー様の血を継がない可能性大ってことか。うそ寒い話だな。自分の出自を疑わなくてすむのは幸せだと思う」

「ドーラみたいに完全実力主義でも幸せだけどなあ」


 特にその弟? が結構な実力持ってたりするともったいない。

 帝国じゃ浮かばれないじゃないか。

 さて近衛兵詰め所に到着。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシアさん!」

「「素晴らしい!」」


 双子皇子だけじゃなくてルーネもいるじゃん。

 飛びついてきたルーネとヴィルをぎゅっとしてやる。


「ユーラシア君」

「謝礼があるのだ」

「ありがとう、もらう!」


 どっちか一人が喋りゃいいのに。

 えーと、本?


「「『輝かしき勇者の冒険』と、これをドーラで出版してもよいという権利書だ」」

「えっ?」


 えらく意表を突いたもんが出てきたぞ?

 しかしドーラでも一定の需要はありそう。

 まあこの悪書を駆逐するより売れる本のラインナップを充実させる方が得な気がするから、ありがたくちょうだいしておこう。


「このセンスは双子皇子の考えじゃないよね? 誰のアイデアなん?」

「ルーネロッテだ」

「君と仲がいいから知恵を借りた」

「ルーネやるなあ」

「ユーラシアさんなら何を喜んでくれるか、一生懸命考えたんですよ」

「ルーネに知恵を借りるという方向性も良かったね。大事なことだよ」


 双子皇子嬉しそう。

 わからんところは他人に聞きゃいいのだ。

 聞ける人脈が大事。

 ルーネが言う。


「ヴィクトリア伯母様が、上皇妃様との会談をセッティングしてくれって言うんですよ」

「へー。ルーネ出世したなあ」

「伯母様も上皇妃様も、大きい行事のない日ならばいつでもよろしいようなんです。ユーラシアさんの都合はどうですか?」

「あたし明後日がダメだな。それ以外なら」


 明日にはフェーベ女子爵が領地に着いてるはず。

 となれば明後日にエメリッヒさん連れて、ギレスベルガー家領テルミッツの様子を見に行きたい。


「では三日後の午後でよろしいですか?」

「オーケー。リリーにも伝えておくよ。で、双子皇子聞いてた?」

「「えっ?」」


 ちょっと褒めたら油断してポケーっとしてからに。


「ヴィクトリアさんと上皇妃様が和解しようってことなんだよ」

「「聞いてた」」

「ヴィクトリアさんと上皇妃様が仲良くなれば、すごい大きなグループになるでしょ? 上流階級の御婦人皆がお近付きになりたがるはず」

「「ああ」」

「先んじてお嫁さんを捻じ込んでおくんだよ。皇族を旦那にもらうことで期待されてるのはそーゆーことだぞ?」

「「あっ!」」

「ルーネ、ジルケさんとペトラさんも行きたいって、ヴィクトリアさんと上皇妃様の了承取っといてよ」

「わかりました」


 ヴィクトリアさんやリリーにとってみれば、中立の兄弟の配偶者だ。

 クッションとしてちょうどいいだろ。


「さて、出かけよ。じゃーねー」

「あっ、私も!」

「「予も!」」

「わっちも!」


 ヴィルはわかってるってば。

 まったく可愛いんだから。

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