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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1735話:固有能力でできること

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。

 サイナスさんは今日午後会ってるけど。


『あれから転移の玉のチェックに行ったんだろう?』

「うん、特に問題なかった」


 『晴眼』持ちの緑の民ペーターに、昨日新しく受け取った転移の玉とビーコン一〇セットを見てもらったのだ。


「ペーターもだけどさ。固有能力持ちはレベルが上がると、思いもしなかったお得感があるなあとは思う」

『スキルの習得みたいな、見えるお得感もあるだろう?』

「冒険者やってると、スキルの習得はメッチャありがたいね」


 あたしの場合だと、特に『雑魚は往ね』と『リフレッシュ』の二つのレアスキルが効いている。

 その他だと『ハヤブサ斬り』系と『薙ぎ払い』くらいしか使わないもんな。


『一度聞きたかったんだ。輸送隊員選定の時、ユーラシアは固有能力持ちを優先していたろう?』

「優先したね」


 最初の輸送隊員を選んだ時は、対帝国潜入工作部隊の戦力としても考えていた。


「ドーラ独立前は戦闘の可能性があったからね。戦うことを考えると、やっぱ固有能力持ちの方が恩恵大きいんだ」


 今はもう戦争があるわけじゃない。

 でも魔物との戦闘はあり得るから、輸送隊員の採用基準は固有能力持ちとしたいのだ。


『ところでユーラシアはいくつの固有能力持ってるんだ?』

「七つだよ」

『七つ?』

「多分だよ? 最近調べてないんだ。時々増えたり減ったりするんだよね」

『常識はずれだなあ。いつものことながら』


 褒められてると思っとくけれども。

 いや、まあノーマル人で固有能力を二つ以上持ってる人はあんまりいないらしい。

 あたしは恵まれてるなあとは思ってる。


『君、その割に固有能力を神聖視してないよな?』

「何で神聖視しなきゃいけないのよ? あたしが可憐だったり聖女だったりするのは、固有能力全然関係ないぞ?」

『……まあな』

「今の一瞬の沈黙からあたしに対する不敬の気配を読み取るのは、固有能力『閃き』のおかげだけれども」

『やめてくれ』

「やめない」


 アハハと笑い合う。


「固有能力があればやれること増えるよ? でもそんだけなんだよね」

『ふむ?』

「知識があっても技術があっても筋肉があっても、もっと言うとおゼゼがあっても権力があってもやれることは増えるじゃん?」

『……ユーラシアの考えていることがわかった気がする』

「今の一瞬の沈黙からあたしに対する尊敬の気配を読み取るのは、固有能力『閃き』のおかげだけれども」


 アハハ、楽しいなあ。


「重要なのは何をやれるかだと思うの」

『君は時々格好いいなあ』

「普段は可憐だもんねえ。固有能力は四、五人に一人は持ってるって話じゃん? でも持ってたって、役に立ててる人の方が少ないよ」


 帝国の人を見てると本当にそう思う。

 固有能力を必要以上に重視しない姿勢は正しいと思うけど、固有能力でしかできないこともある。

 自分の能力くらいは手軽に調べられるのがいい。

 利用できるものは利用すべき。

 レベルが必要なら上げることを考えるのがいい。

 これは帝国でもドーラでも同じだが。


『ユーラシアの結論としては、レベルの方がずっと重要?』

「他の何かと比べてレベルが重要って言ってんじゃないよ? けどレベル高いのと低いのとじゃ、高いのがいいに決まってる」

『ユーラシアの価値観は一貫してるなあ』

「実用主義かな? 効率主義かな? 物事楽に短時間にこなせる方がいいじゃん?」


 固有能力持ちのレベル上げによる見えないお得感の話から離れたな。

 まあいいか。


「今日双子皇子の関係者と会うイベントだったんだ」

『その言い方だと、犯罪者の身内に会うイベントみたいだな』

「本当だ。でもまあ似たようなもんかな」

『おいこら』

「これこそ不敬罪だなあ。関係者が皇族貴族だもんねえ。でも実際には不経済の話になってさ。着地点はさらにおかしなことになった」

『君が関わるとおかしなことになるのは平常運転だろう。どうなった?』


 サイナスさんこそ失礼なのだが、エンターテインメントに期待はしてくれてるらしい。


「双子皇子の関係者というのが、それぞれのお嫁さんの実家と双子皇子の母ちゃんの実家合わせて三家ね。皆帝国本土北西地区を領地とする貴族で、食べるのには困んないけどド田舎。だから商業活動はあんまり盛んじゃない。ここまでオーケー?」

『オーケー。自給自足してるような地区か』

「自給自足できるのは大したもんなのにねえ。その三家にも境遇に差はあるんだけど、とにかく経済活動を活発にしたいっていう思いがあって、評判の美少女たるあたしを御輿に担いで村おこししようという」

『君の商売の仕方や急速な人脈の広げ方に驚いて、コンタクトを取りたがったということか。双子皇子の皇帝選立候補なんて関係なくなってるじゃないか』

「あたしも変だなあって、チラッと思った」


 今から思うと、皇帝選立候補の是非や言い訳にあたしが絡んだのを幸いとして、ちょっと会わせろってことだったんじゃないかな。

 双子皇子もそれぞれの義父に引け目があるから断れなかったんだろう。


『どう解決したんだ?』

「辺境侯爵の領地ゼムリヤとは山脈を隔てた反対側なんだよ。山越えの街道があるんだけど、魔物が出るから使われてなくて。街道使って交易しろって言ってきた」

『可能なのか? どの程度の魔物が出るんだ?』

「あたしもゼムリヤ側の山の麓しか見てないんだよね。山越え街道沿いのことはわかんないから、詳しいメルヒオール辺境侯爵をヴィルに連れてきてもらって。魔物除け使えば十分に交易路として使用可能だっていう言質もらったの」

『辺境侯爵も本土他領とのパイプが太くなるのは望ましいということか』

「望ましいね。今のゼムリヤは、地理的にも経済的にもガリアとの関係が帝国本土よりも強いくらいだもん」


 帝国の人は魔物を怖がり過ぎだと思う。

 おいしいやつもいるよ?


『お手柄じゃないか。相当な謝礼をもらったんだろう?』

「あっ! 昼御飯美味かったからもらうの忘れてた!」


 しまったなー。

 またあのモブ双子皇子に会わなきゃいけない用事ができてしまった。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はエルフの里。

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