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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1723話:相当美味いもの

「相当美味いものを馳走しないと許さんという話があったろう?」


 リリーと黒服、新聞記者トリオを連れて大店『ケーニッヒバウム』へ行く途中だ。

 ヴィルはいつものようにあたしが肩車している。


「昨日ヴィクトリアさんが言ってたね」


 新聞記者トリオにも説明を加える。

 先妃様の追悼式典で上皇妃様がスイーツを全部食べちゃって、料理人が亡くなってどうのこうの。

 

「母様に話したところ、心当たりがあるようなのだ」

「相当美味いものに?」


 ヴィクトリアさんは美食家って話だった。

 魔物肉みたいに食べたことのないもので驚かすことはできても、皇宮の料理人による技術的に優れた品ということじゃ難しいんじゃないの?

 かなりの変化球なのか、それとも……。


「どんな料理なのか、内容は教えてくれなかったんだ?」

「うむ。笑っているだけであった」

「研究を重ねたものがあるのかな? メッチャ楽しみだわ」

「であろう? 我も食べたいのだ。姉様と母様が会う日は、また我も皇宮に連れてきてくれ」

「もちろんだよ。でも起きてないと放っとくぞ?」

「努力する」


 アハハ、元々会食の日はリリーを連れてくるつもりだってばよ。

 カレンシー上皇妃様も不安だろうから、リリーが間に入ってくれた方がいいからね。


「ユーラシアは何か美味いものを用意できんか?」

「えっ?」


 予想できない遊撃だったな。

 いや、コブタ肉やワイバーンの卵なら用意できるけれども、驚きがない。

 上皇妃様が相当美味いものを持ってくるのだから、あたしだって意表を突いたものを食べさせたい。

 最近食べた美味いものと言えば……。


「……サソリのから揚げかな」

「サソリ?」

「から揚げっていうか素揚げだな。ハマサソリっていう弱い魔物がいてさ。毒のある尻尾だけ切って長めの時間揚げるの。塩振って食べるとおいしいんだけど……」

「逆説の後に何が続くのだ?」


 気になっちゃう?


「このハマサソリってやつ、タルガにもいるんだ。ただタルガじゃ食べられてないみたいなんだよね。ひょっとしてゲテモノ扱いなのかなーと」

「「「紛うことなきゲテモノですよ!」」」

「うーん、見た目はグロテスクだけど」

「ユーラシアが美味いと言うなら美味いのであろ。我にも食べさせるのだ」

「わかった。どっかで機会作るよ」


 新聞記者トリオがハマサソリを食べる前のアトムダンテみたいな顔してるよ。

 一度食べればそんな顔できないけどな。

 ただヴィクトリアさんと上皇妃様に紹介するなら、ハマサソリよりもやっぱクリームシチューだわ。

 クリームシチューについて意見が欲しいのだ。


 さて、『ケーニッヒバウム』に着いたぞ。

 魔宝玉コーナーへ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、リリー様、ユーラシアさん」


 ピット君が出てきた。


「フーゴーさんいない?」

「お爺様は忙しいんですよ。皇帝選挙の関係の役に任命されまして」

「皇帝選壮行会で挨拶してたの見たわ。忙しくて大変だねえ」


 有力者ともなると頼まれごとも多いだろうからな。


「ピット君でもいいや」

「『でも』って」

「ごめんよ。今日はルーネ連れてきてないんだ」

「ルーネロッテがどうしたのだ?」

「ピット君はルーネラブなんだ。リリーの婚約者候補であるにも拘らず、まことにけしからんことだけど」

「ちょっ! ユーラシアさん!」


 大商人たらんとする者が焦るなとゆーのにニヤニヤ。


「ふむ、お似合いではないか? ルーネロッテは意外と夢見がちなところがあるから、ピット殿とは合うと思う」

「ピット君、リリーは諦めろ。こんなに冷静に分析されるようでは丸っきり目がない」

「ユーラシアさん!」


 顔を真っ赤にするピット君。

 からかい甲斐があるなあ。

 ハハッ、新聞記者トリオがネタ増えたみたいな顔してるわ。


「しかしルーネロッテは父親が難物であろ?」

「お父ちゃん閣下がなー。ルーネもピット君にさほど興味ないみたいなんだよね」

「何、そうであったか」

「いや、ピット君に興味がないとゆーのは正確じゃないな。ルーネもようやく箱入りから脱しかけてるじゃん? 面白いことにたくさん出会えて、色恋に目が向かないって感じ」


 聞いてないようで聞いてるピット君。

 新聞記者トリオニヤニヤ。


「つまりピット君には、ルーネを振り向かせお父ちゃん閣下をあしらえるだけの成長が必要なのだ。これは商人にも必要な資質だから頑張れ」

「ユーラシアの『頑張れ』は、見込みのある者にかける言葉だぞ」

「リリーはよくわかってるなあ」

「本日の御用件は何です?」


 いつまでもピット君で遊んでるわけにもいかないからな。

 フィフィの本を取り出す。


「じゃーん! フィフィの書いたドーラ紀行の本でーす!」

「フィフィリア様の? あっ、この表紙絵は、画集『女達』の絵師の手ですね?」

「うん、イシュトバーンさんが描いてくれた。大々的に売り出そうと考えてるんだ。今後識字率上げて紙を安くして、どんどん本が売れる世の中を作ろうと思ってるの。画集に続く第二弾の仕掛けだね。これあげるから、ピット君も読んでよ」

「ありがとうございます。でも表紙だけで結構売れちゃうんじゃないですか?」

「結構くらいの売れ行きじゃ、あとが続かなくて困るんだな。前代未聞ってレベルで売れて欲しい」

「画集みたいにですか? さすがにムリでしょう」


 字の読めない人にも訴求する画集ほど売るのはムリだが。

 メッチャ売れることは間違いないぞ?

 ピット君が軽視してるみたいで面白くないね。


「スタンダードな読み物にならないかって考えてるんだ。『輝かしき勇者の冒険』みたいな」

「低価格と読まれるきっかけが必要ですね」

「ドーラでは一二〇ゴールドなんだ。帝国での小売価格は三〇〇ゴールドくらいになると思う。帝国でもそろそろ発売のはずなんだけどな?」

「かなり安いですね」

「こっちが読まれるきっかけ」


 記者トリオがプリンスとパウリーネさんの推薦文を見せる。


「フィフィリア様の元婚約者ルキウス様の推薦文?」

「話題になるからって頼んだの」

「やり方がえげつない……」


 はいはい、褒め言葉ありがとうね。


「ピット君も読んでみてさ。売れると思ったら貿易商のベンノさんに注文してよ」

「わかりました」

「さて、帰るべ。さいならー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動、リリーと黒服を連れホームへ。

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