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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1709話:ナイスな策

 皇宮のラウンジみたいなスペースで、マルクス殿下とガイウス殿下と面会する。

 さすが双子、顔の造作が同じで不機嫌さも同じくらいだ。

 モブで同じ顔されると見分けがつかんな。


「で?」

「で、とは?」

「幼女悪魔は君の従者なんだろうからわかる。では何故ルーネロッテがいるんだ?」


 ルーネに聞かせたくない用件と考えているのか。

 まあわかるけれども。


「ルーネに勉強させてやりたいんだよね」

「「勉強?」」


 マルクス殿下とガイウス殿下が揃ってる、滅多にないシーンを見物しに来たとは言えないから。


「ルーネも皇族の一員として、貴族間のちょっとしたトラブルを仲裁しなきゃいけない場合だってあるでしょ。そーゆーのの勉強」

「ちょっとしたトラブルではないんだが」

「どういうトラブルかな?」


 何故そこで牽制し合うのだ。

 早く言え。

 どうせ二人同じだろ。

 見当はついてるわ。

 大したトラブルじゃないわ。


「二人で張り合い、つい調子に乗って皇帝選に立候補してしまった。でもお嫁さんの実家に怒られた。皇帝になんかなれるわけないだろ。新皇帝に盾突いてどうする。ああ、我が家が没落してしまう。手遅れにならない内に何とかしてくれ、で合ってる?」

「「大体合ってる」」

「ユーラシアさんすごいです!」


 ハッハッハッ、まあまあ。

 やっぱりくだらない理由だったわ。

 勝手に恥かいてりゃあたしなんか必要ないわ。


「そもそもどうして皇帝選に立候補したん? 当選できないことはさすがにわかってたでしょ?」

「何となく……」

「ノリで」

「わかる。あたしもノリで行動するの好きだから。後先考えずにやっちゃうほど脳足りんじゃないけど」

「「……」」

「やっぱルーネも面白おかしく皇帝選に出ればよかったねえ。しがらみができちゃうとなかなか難しいんだよ。自分の都合だけでは動けなくなっちゃうからさ」

「本当によくわかりました」


 ヴィクトリアさんと双子皇子のケースで学習したようだ。

 ルーネの立候補はマジでお茶目ですんじゃうやつだったのに。

 貴重な経験になる上、話のネタにもなるのになあ。


「で、会ったこともないあたしんとこに話を寄越したのは?」

「「ルキウス兄上に相談したんだ。そうしたら精霊使いに会ってみろと」」

「プリンスルキウスだったか。皇帝選を戦うライバルだろーが。一応形の上では」

「戦うなんて恐れ多いことは考えてなくて……」

「義父や妻に強い口調で言われて、本当に進退窮まってしまって……」


 完全に白旗上げてるやないけ。

 女性であるヴィクトリアさんに相談すべき事柄じゃなかったか。

 主席執政官閣下は公務で忙しい、年下に相談することじゃない、ってことでプリンスなんだろうなあ。

 プリンスも面倒になってあたしに振ったんだな?


「状況は大体理解した。ちょっと確認するけど、皇帝選に勝てるなんて思ってないんだよね?」

「「ああ」」

「なるべく傷口を小さく撤退したい、でいいかな?」

「「構わない」」

「さて、ルーネに問題です。どうしたらいいですか?」

「先ほどから考えていたのですが、立候補を取り下げる以外にないのではないでしょうか?」


 うむ、ごく常識な答えだ。

 俯き頭を抱える両殿下。


「普通はそうだね。両殿下も立候補を辞めりゃいいくらいのことはわかってるんだ。お嫁さんの実家や側近に散々言われてるだろうから。でもここで取り下げると、おおやるじゃないかって立候補を評価してくれた人の支持も失っちゃう。両殿下の面目丸潰れ」

「他に方法がありますか?」

「ナイスな策を思いつくと両殿下から褒美がもらえちゃうから、頑張って報酬ゲットしようぜって局面だよ」


 あれっ?

 ここは笑うところなんだが。


「立候補したっていいんだ。要は他の候補者を敵に回さなければいい」

「ムリですよ。だって票の取り合いになるのですから」

「じゃあ新皇帝が、あの時の両殿下の行動は適切でありがたかった、って思うようなアクションにすればいい」

「そ、そんなものがあるのか?」

「あるよ。施政館行こうか」

「「「施政館?」」」


 キョトンとする両殿下とルーネ。


「……ドミティウス兄上のところか?」

「正解」

「しかし……」

「今お父ちゃん閣下に会おうとすると、公務がある上に皇帝選で忙しい予に何の用だ。意味のない立候補でバカを晒すだけでなく、予の邪魔までしようというのか。許せん、イモでも食ってろと、敵意剥き出しにされまーす」

「「ダメじゃないか」」

「イモ……」


 イモはルーネのツボだったみたい。


「ところがダメでもないんだ。新聞記者も呼んで、各候補者同士が握手して正々堂々と皇帝選を戦うぞっていう記事を書いてもらえばいい」

「新聞記事? わからない。何の意味があるんだ?」

「後腐れのない正々堂々の戦いを誓って、皇帝選に勝ち残った候補者は真の皇帝って印象を市民に植えつけるんだよ。後々のことを考えりゃ求心力が違うわ」

「「な、なるほど?」」


 両殿下の声はよく揃ってて面白いなあ。

 芸の一種かな?

 もうこれだけで今まで両殿下が一緒にいることなかったってのが、すげえもったいなく感じるわ。


「正々堂々の戦いをアピールするなら、ある程度候補者の数がいた方がいいって考え方はできるよ。有権者の選択肢が増えるからね」

「「うむうむ」」

「対外的にもいいんだ。皇帝決定に揉める要素がないとなれば、外国からの嫌らしい干渉を防げる」

「「うむうむ」」

「とゆー説明をチラッとしてやりゃ、お父ちゃん閣下は一理あると考える」

「一理なのか? 正直メリットばっかりに思えるが」

「いやー、不必要な立候補で状況を混迷化させた責任ってのは免れ得ないな。施政館にいる三人は政治のことをわかってるから、場外戦で遺恨を残すようなことは皇帝になったあとに響くくらいのこと、元々理解してるだろうし」


 だからこそ、新聞を使って正々堂々の勝負を内外に訴えかけようってのは刺さるんじゃないか?

 立候補者が出揃う今日は絶好のタイミングなのだ。


「で、お父ちゃん閣下は娘に甘いから、ルーネも施政館へ行きたそうって話せばすぐ来いって言う」

「「完璧だ!」」

「完璧です!」

「完璧だぬ!」


 ハッハッハッ、盛大に褒められると気分がいいなあ。


「ヴィル、お父ちゃん閣下と連絡取ってくれる?」

「わかったぬ!」


 ヴィルの姿が掻き消える。

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