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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1690話:パワーカードのアイデア

 ――――――――――二六六日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさん、おっはよー」

「おはようぬ!」

「アンタかい。いつも元気がいいね」


 アトムとヴィルを連れてパワーカード工房へやって来た。


「これ、お土産のお肉だよ」

「いつもすまないね。素材はどうする? 換金していくかい?」

「お願いしまーす」


 今必要としているパワーカードがあるわけじゃない。

 また無限ナップザックのおかげで素材をいくら持っていても邪魔にならないので、ついつい工房へ来る機会が少なくなってしまう。

 交換ポイントは四一一一となった。


「カードと交換していくかい?」

「いや、特にいらないかな」

「随分ポイント溜まってるじゃないか」

「まーそうなんだけど」


 最近バトルで苦戦することがないので、特別欲しいパワーカードがないということを説明。


「魔境に行っちゃうと、それ以上に強い魔物と戦う機会自体がほぼないじゃん?」

「これが一年も経ってない冒険者の言うことだから驚きだよ。アンタは大したものだねえ」

「特殊な条件下で使うやつは、これからも特注お願いするかもだけど」

「『デスマッチ』みたいにかい?」


 『デスマッチ』は戦闘が終了するまで敵も味方も逃げられないという、場に干渉する強力なパワーカードだ。

 あたしが謎経験値君と呼び、ダンテがシルバークラウンと呼ぶ、跳ねる人形系レア魔物を倒すのに重宝している。

 

 ただあたしのレベルがメッチャ高くなって、ほぼ何でもかんでも『雑魚は往ね』で倒せる今日この頃。

 新しいパワーカードが欲しいとすると、魔物をただ倒すためじゃなくて、もっとこう……。


「倒した魔物が皆おいしく食べられるようになるパワーカードがあれば欲しいなあ」

「そんなのはムリだねえ」

「ムリだぬよ?」


 アハハと笑い合う。


「ユーさん」

「あっ、ゼンさんこんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 帝国の山岳地帯の集落に住んでいた聖火教徒ゼンさんは、今ではいっぱしのパワーカード職人だ。


「あれ、ゼンさんレベル上がってるね。ひょっとして魔物退治とかしてる?」

「わかるかい?」


 得意げだな。

 ゼンさんは元々戦闘初心者ではなかったけど、この辺の魔物を狩るにはレベル足んなかったんじゃなかったかな?

 今ではレベル七、八はありそう。


「いや、殺人蜂一匹ならレベル三もあればフル装備で倒せるんだぜ」

「あ、なるほど」


 殺人蜂は飛んでいることと毒持ちであることが厄介だが、大して強い魔物ではない。

 『スナイプ』併用だったら飛んでても届くし、『スカロップ』で毒無効にしときゃ殺人蜂は怖くないな。

 待てよ? 食獣植物だって睡眠無効にして火属性武器装備してれば、低レベルのソロでも倒せるんじゃね?

 自由にパワーカードを組み替えて使える環境にあるなら、レベルが低くても結構魔物倒せるって初めて気付いたわ。

 ゼンさんは地道に少しずつレベル上げたのか。


「冒険者のことを少しでも知りたくてよ」

「勉強家だねえ」

「で、一つアイデアを思いついたんだぜ。魔物の気配を察するカードなんてどうだい? 不意打ちを食らうこともなくなるだろう?」


 アルアさんが何か言いたそうな顔してる。

 言い聞かせてやれって?

 了解。


「いいと思う」

「やったぜ!」

「でもそのパワーカードを必要とするのは初心者だぞ?」

「えっ?」


 まだゼンさんのレベルだと気付きにくいんだろうけど。


「中級冒険者くらいのレベルになると、魔物の気配って何となくわかるようになってくるんだよ」

「そ、そうなのか」


 あたしが『閃き』の固有能力持ちになった時期は正確にはわからない。

 少なくともレベル一五を超えた掃討戦くらいの時期は、特に感覚鋭いとかはなかったと思う。

 でも冒険者としての成長とともに、気配や違和感を掴み始めていた時期だ。

 中級冒険者が一般にレベル一五超えって言われてるのは、他人の大まかな強さや魔物の気配を感じ取れるようになってくるからだと認識している。


「うん。だから初心者向きカードの一つの効果としてはありだな。気配関知だけの効果じゃ寂しいけど、追加で自動回復付いてるとかなら欲しい人いると思う」

「……『ヒール』を使えるとかか」

「あっ、回復魔法のがよさそーだな」


 『ホワイトベーシック』は回復魔法『ヒール』と治癒魔法『キュア』を使える上、魔法力を上げる効果のある高パフォーマンスのパワーカードだ。

 でも実際のところ『キュア』は序盤でそれほど使用頻度の高い魔法ではない。

 万能薬持ってりゃいいやと考えるなら、魔物の気配を察する+『ヒール』のカードを選ぶ人も多そう。


「残念だ。ユーさんにいいカードだと思ったんだがなあ」

「ごめん、あたしに察する系統のカードは必要ないかな」

「考え方はいいよ。ゼンも成長したね」

「そうそう。パラメーター上げるとかのダイレクトな効果じゃなくても、重要なものは重要だよ。また良さそうなの思いついたら教えてよ」


 どっちかというと頭おかしいカードを作って欲しい。

 使い方はこっちで考えるから。

 レベルが一になる『ド素人』、重宝してます。


「逆にアンタが欲しいのはどんなカードなんだい?」


 え? 頭おかしいカードって説明しづらいな。


「……あたしが欲しいっていうより、商売のネタなんだけど。帝国では魔法やバトルスキル使える人は登録しなきゃいけないって決まりがあるの」

「ふうん。驚きだね」

「師匠、そうなんで。一般人の武器所持禁止と同じ、一種の危機管理なんでしょうが」

「だから『ヒール』みたいな有用性の高い魔法であっても、魔法を覚えること自体にハードルが高くて」

「ははあ、有用な魔法を付与したパワーカードを売るということだね?」


 こっくり、そゆこと。


「今はスキルスクロールを輸出してるんだけど、お手軽なパワーカードの方が需要ありそうなんだよね」

「残念ながら手が足りないね。注文の『ウォームプレート』と『クールプレート』が完成しているよ」

「もらっていきまーす」


 支払いっと。

 もしいいアイデアがあっても、手が足りないのはわかってた。

 パワーカード職人はもっと人数が必要だなー。

 考えないと。

 でも去年から考えれば、ゼンさん、エルマ、コルム兄の弟子のタッカー君と、三人も職人が増えている。


「今日は帰るね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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