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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1677話:遺書と号外

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あっ、精霊使い君!」

「おーい、皇子もその奥さんも元公爵もいるんだぞ? 一番可愛くてキュートでチャーミングなあたしに声をかけるのは大正解だけれども」

「大正解だぬよ?」


 アハハ、陛下が亡くなっても笑いを忘れない大らかなあたし。

 プリンスルキウスとパウリーネさん、うっかり元公爵を連れて、皇宮に戻ってきた。

 相当焦っているのか、いつものサボリ土魔法使い近衛兵が倍速で動いてるみたいに見える。


「それどころじゃないんだ!」

「落ち着こうか。深呼吸だよ。大きく吸って~吐いて~吐いて~吐いて~吐いて~」

「もう吐けないだろ!」


 アハハ。

 常にエンタメ精神を忘れないことがあたしの魅力の根源なんだよ。


「魅力的だぬ!」

「よしよし、ヴィルは本質をわかってるね。ところで何なの? 陛下が亡くなったこと以上に大変なことなんてないでしょ」

「大変なことになってるんだ! 驚くべき内容の新聞の号外が出たから!」

「号外?」

「陛下御逝去の発表と、グレゴール様とリモネス殿から預かった陛下の遺書を、君が持っているという記事だ。本当なのか?」

「少なくともわしが預けた陛下の遺書を、ユーラシア君が持っているというのは本当だ」

「ぐ、グレゴール様……」


 絶句するサボリ君。

 だからうっかり元公爵もいるんだってば。


「主席執政官閣下は何か言ってる?」

「急いで施政館に来いと……」

「だろーな。町の様子はどうかな?」

「蜂の巣をつついたような大騒ぎだ!」

「歩いて行ったんじゃ、どんだけ時間かかるかわからんなー」

「転移で行くぬか?」

「うん。でもちょっと待っててね。その前にリモネスさん呼んでくれる? 連れてかなきゃいけない」


 リモネスさんのことだ。

 どうせスタンバイしてるだろうけどな。


          ◇


「美少女精霊使いとその他四名参上!」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 プリンスルキウスとパウリーネさん、うっかり元公爵、リモネスさんとともに、施政館の執政官室に飛んで来た。

 苦り切った顔の主席執政官閣下と困惑気味のアデラちゃんと封爵大臣、それと……。


「どーしたの? 閣下に虐められた?」

「「「ユーラシアさーん!」」」


 涙目の新聞記者トリオがおるやん。

 ちょっと予想外だったけど、号外の内容を問い質されてるんだな?

 プリンスが切り込んでくれる。


「兄上、ガリア、タルガ、ゼムリヤ、ラグランドへの報告はすませました。概ね悪くない感触です。混乱があっても本土にまで波及することはないでしょう」

「御苦労」

「お腹がグーグー不平を鳴らしております。お昼御飯を要求します」

「用意させよう。しかしユーラシア君」

「何だろ?」

「号外で見た。遺書が二通あるというのは本当か?」

「うん、本当」


 うっかり元公爵もリモネスのおっちゃんも頷いている。

 閣下が君二通あるなんて言わなかったじゃないかって顔してるけど、聞かれなかったから。


「リモネス殿、遺書には何が書かれているかわかるだろうか?」

「皇帝後継者について」


 凛としたリモネスさんの言葉に場が静まりかえる。

 リモネスさんの発言には重みがあるなあ。

 そして続ける。


「陛下の頭の中にはいくつかの考えがありました。しかし第一皇子ガレリウス殿下が亡くなられたことで、最も有力な選択肢が失われました。ガレリウス殿下逝去の頃には陛下の思考も弱まっており、陛下の最終的なお考えは私にも読み解くことはかないませなんだ」

「「「「……」」」」

「おそらくこの二通の手紙に、具体的な名が記されていることはありませぬ。しかし、皇帝後継者に関する重大な決定について書かれていると断言できます」


 次代の皇帝に相応しい条件とかが書かれてるのかなあ?

 条件を満たした者を後継者に任ずるとか?


「ユーラシア君、この二通の遺書を託された経緯を教えてくれ」

「一七日前、ラグランドに渡ったうっかり公爵達の様子を見に行ったんだ。慣れない生活に戸惑ってるかもしれないから。そしたら陛下の遺書を渡されて、よきように使ってくれと言われたの」

「うむ、間違いない」

「大事なものを渡されても、あたしだけじゃさすがに判断に迷うじゃん? だから次の日、リモネスさんに相談しに行ったら、何とそっちからも遺書が出てきちゃったの。で、リモネスさんにも預かってくれって言われて」

「さよう、精霊使い殿の言う通りです」

「そういうことだったのか……」


 いや、遺書が二通存在したことを除けば閣下の推察通りだよ。

 二通あったことを元々知ってたプリンスルキウスは、すっとぼけた顔してるけど。


「じゃあどうしようかってことになって、新聞に協力してもらうことにしたんだ。陛下が亡くなったら遺書の存在を即座に公表しろってね。だから記者さん達は悪くないんだよ。許してやってよ」

「じゃあやはり記者達は事前に遺書の存在を知ってたのか!」

「「「ひっ!」」」

「うん、知ってた」

「何故施政館じゃなくて新聞を信用するんだ!」


 信用ってわけじゃないんだが。


「あたしは記者さん達に、陛下の遺書を帝国民注視の中開封して内容を公表するって言ったけど、号外にもそう書かれてるかな?」

「ああ」

「聖女ユーラシアは考えました。あたしの手に重要な遺書が手に入ったからには、これを私してはいけない。陛下の意思を尊重し、皆に伝えることがあたしの使命であると」


 表情に違いはあるが、皆が一様に頷く。

 ハハッ、ずっとあたしのターン!


「商売人ユーラシアは考えました。陛下が亡くなると後継者問題が噴出して帝国は荒れる。とばっちりでドーラが割りを食ったら大損だ。混乱は可能な限り小さくすべきであると」


 皆の表情がちょっと柔らかくなった。

 まああたしがドーラの損得で動いていることは自明の理だから。


「賢者ユーラシアは考えました。陛下の死後、混乱が起きる前に、あたしが遺書を預かっていることと遺書の内容を衆人環視の場で発表することを、報道で伝えればいいと」

「遺書の存在を公にしたせいで帝都は大混乱してるんだが」

「混乱の方向を遺書に向けただけだって。明日内容を発表するぞーって教えてあげれば収まるよ。明日午前中に中央広場で発表でいいよね?」

「構わない。しかし……」


 何を言い淀んでいるのだ。

 閣下らしくもない。

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