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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1643話:新聞社にてコソコソ

「こんにちはー」

「あっ、ユーラシアさん! お待ちしておりました。こちらへ」


 施政館を辞してから、予定通り新聞社にやって来た。

 記者トリオったら、新聞社の玄関口で待ってるじゃん。

 ソワソワしなくてもいいのに。

 情報は逃げやしないわ。

 奥の個室に通される。


「初めは執政官室にプリンスルキウスやアデラちゃんもいたんだけど、最終的に主席執政官ドミティウス閣下と一対一の話になったね」

「どうなりました?」

「まず記事にできる話からいくよ」

「「「お願いします」」」

「今まで執政官室は主席執政官閣下の部屋だったじゃん? それが来月の執行部改造から机三つ並べる体制になるって。職人が来てて、机を新調する打合せしてた」

「机三つですか?」

「主席執政官ドミティウス様と次席執政官ルキウス様と、あと一つはどなたの席で?」

「アデラちゃんだよ。政権のスポークスパーソン的な役職に就くって。その役職はもちろん新設で、まだ名前決まってない」


 真剣な顔でメモを取る記者トリオ。

 この手の話題は帝国でも注目度が高いらしいから。


「アデラさんは外務大臣という声が漏れ聞こえてきてたんですけどね」

「アデラちゃんに重要どころを任せたいっていう考えはあるんだけど、やっぱ平民女性だと反発が強いんだって。植民地大臣をやらせてみてそれがよくわかったって。慣れさせるというか、実績と知名度を上げさせようってんじゃないかな」

「ユーラシアさん自身はどうなりました?」

「あたしは非常勤の施政館参与兼臨時連絡員を拝命しまーす!」

「施政館参与はわかりますが、臨時連絡員は初耳ですね。どういうものです?」

「今までと同じことやってるのに給料が出ちゃうという、素敵なお仕事だよ。何と施政館の食堂だとタダで御飯が食べられるっぽい」

「おめでとうございます」

「いい身分ですねえ」


 アハハと笑い合う。

 まあ好き勝手やってろってことだ。

 あちこち飛び回ってるあたしは海外の重要な情報もすぐ仕入れることができるかもしれないし、ヤマタノオロチみたいな非常事態にも対応できるかもしれない。

 あくまでも『かもしれない』なのだ。

 実態はあたしみたいな可憐で目立つ美少女を飾っとけば、政権の見栄えがいいだろってことに過ぎない。


「次に記事にできないことだけど」


 記者トリオの顔が緊張する。


「やっぱりアレ関係だった。偉い人がうっかりさんに渡すところを見られてたっぽい」


 皇帝だの遺書だのみたいな大仰なワードを使わなくても通じるだろ。

 内緒話は密なるをもって善しとす。


「ははあ、スパイがいたんですね?」

「まあ想定内だね。影響力を発揮するためには、御隠居じゃなくてあたしが所持してる方がいいという可能性に閣下が気付いて、持ってるんじゃないかってあたしにストレートに聞いてきたんだよ」

「で、どうされたんです?」

「普通に持ってるよって答えた」

「「「ええ?」」」


 何を驚いてるんだろ?


「誤魔化したりはしなかったんですか?」

「あたしはウソ吐いたりはしないぞ? 誤魔化すことはあるけれども」


 誤魔化せる場面ではなかったしな。


「あたしがブツを持ってることは、ある意味変なんだけどさ。閣下が状況から想像できるくらい自然なことではあるんだよ。おまけにあたしは必ずしも秘密にしておかなきゃいけないってことは、実はないんだ」

「かもしれないですけれども」

「ユーラシアさんが持ってることを知られると、ブツの内容が何でもないことのような工作されたりしませんか?」

「かもね。でもブツの内容が重視されるかされないかってのは、結局預かってるあたしの信用度じゃん?」


 だからこそあたしはウソを吐けないのだ。

 陛下とうっかり元公爵の意思を尊重してやりたいから。

 そしてあたしが今後、帝国での発言力を増すためにもだ。


「ユーラシアさんに圧力かけたりするかもしれませんし」

「あたしに圧力なんて不可能だな。噂話を流布してあたしの信用度を下げ、ブツ自体を胡散臭いものにしてしまうことは可能だろうけど……閣下は賢いからズルいことはしないね」

「どうしてです?」

「いくつか理由があるな。明日の新聞であたしが政府の役付きになる記事が載るんでしょ?」

「「「はい」」」

「じゃああたしの信用度が下がると、政権支持率も下がっちゃう」

「「「あ!」」」


 閣下はあたしを味方にしておくことにしたのだ。

 ふつーに考えりゃ、あたしみたいなオールマイティーに使える美少女がいる方が得だから。


「あーんどあたしは娘のルーネと仲がいいじゃん? あたしに意地悪すると、お父ちゃんは娘に嫌われちゃう。お父ちゃんはそれに耐えられない」

「「「アハハ!」」」

「もう一つ。お父ちゃんは全てを知ってるわけじゃないんだ」

「どういうことです?」

「ブツは一つだと思ってる」

「「「!」」」


 リモネスのおっちゃんは、かつてテンケン山岳地帯でヴィルがこそっと偵察していたのに気付いたくらいだ。

 閣下は抜け目ないので、ガルちゃんにリモネスさんを探らせて尻尾を掴まれるようなことはしない。

 つまり、陛下からリモネスさんにも遺書が渡されたことは知らないのだ。


「もらったのがうっかりさんで預かってるのがドーラ人じゃ、内容に信頼性がないじゃん、とお父ちゃんには言ってあるんだ」

「より信頼性のありそうな相手に渡った二つ目の存在を知らないと、ブツを軽視する?」

「いや、二つあること自体が信頼性を増しますよ」


 記者トリオの会話が熱を帯びてくるけど、とどのつまりはブツが本物かどうかにかかってくる。

 陛下の筆跡を知ってる人は多いだろうから、真贋の鑑定はさほど問題はなさそう。


「お亡くなりになったら内容を発表するよ、ってとこまでは言ってあるんだ。記者さん達とこういう打ち合わせしてることは知らないから、新聞社にはギャーギャー言ってこないはずだよ。今も閣僚人事についてのネタ提供って体裁で来てるし」

「では、我々はことのあった日即座に新聞発表すればいいですね?」

「うん。予定は何も変わらないからよろしくね」


 今日の様子からすると、この遺書の件で閣下は静観と思われる。

 リモネスさんにちょっかい出してるという、ヴィクトリア第一皇女の方はどうなってるかな?

 機会があれば探りを入れておきたいが。


「じゃ、またねー」

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