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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1641話:ダメに決まってる!

「こんにちはー。ドーラの美少女冒険者ユーラシアがやって来ましたよ」

「はい、お通りください」


 ついに施政館も案内すらなくなったぞ?

 セキュリティどうなってんのかな?

 ドーラの行政府はおゼゼがないからやむなしだけど、帝国はまずいんじゃないの?

 執政官室へ。


「こんにちはー」

「やあ、ユーラシア君」


 あっ、プリンスルキウスいるじゃん。

 アデラちゃんと職人みたいな人も。

 何かの打ち合わせしてるところだったかな?


「昨日のパレードは盛り上がったねえ。プリンス腕痺れてない?」

「ハハッ、大丈夫だよ」

「ところでこれ、何やってるの? お邪魔なら帰るけど」

「邪魔ではないよ。新しい机の手配だ」

「机?」


 プリンスの次席執政官復職に伴い机が必要ということらしい。

 アデラちゃんは?

 主席執政官閣下が説明してくれる。


「来月の政治執行機関改造で、スポークスパーソン的な役職を新設するんだ。アデラが担当することになる。まだ役職名は決まっていないけどね」

「へー、だもんでこの部屋に机なのか。噂ではアデラちゃん外務大臣になるんじゃないかって聞いてたけど」

「将来は国土大臣や外務大臣辺りを任せたいね。だが重要閣僚を平民女性に任せるのは風当たりが強いんだ。植民地大臣を受け持たせてそれがよくわかった」


 ふむふむ、経験を積ませるということか。

 広報担当だと市民への露出も多くなりそうだから、認知度も上がるだろうしな。

 考えてるんだなあ。


「じゃ、今度新聞記者連れてくるよ。ドーラでやってることなんだけどさ。毎日決まった時間に記者呼んで、記事になりそーなネタを話してるの。政府の意思が市民に伝わりやすくなるよ」

「……政府の機関紙を出版した方がいいかな?」

「民間のゴシップ紙みたいに、エンタメに寄せないと誰も買ってくれないぞ? 自信ある?」


 顔を見合わせる閣下プリンスアデラちゃん。


「試みに問うが、ユーラシア君だったらどうすれば売れると思う?」


 ドーラの新聞記者にも言われたな。


「大人気の画集『女達』の絵師に毎回美人画書かせてトップに持ってくれば、間違いなくものすごく売れちゃうよ」

「あの絵師か」


 舌打ちする閣下。


「技量は認めざるを得ないが……」

「美人絵画集の帝国版を出そうかって話があるんだ。アデラちゃんモデルやってくれない?」

「私でよろしければ」

「やたっ! モデル一人確保!」


 喜ばしげなアデラちゃんに比べ、閣下とプリンスが胡散臭そうなものを見る目で見てくるんだけど。


「アデラ、いいのかい?」

「はい、光栄です!」

「植民地大臣に抜擢した時と同じ返事だ……」

「とっても名誉なことだから。絵師のイシュトバーンさんは真のいい女しか描こうとしないんだぞ? あたしもモデル調達するの大変」


 だからいかがわしそうにこっち見んな。


「ルーネも描かせてもらっていいかな?」

「ダメに決まってる!」

「ケチだな。じゃあパウリーネさんを……」

「ダメに決まってる!」

「何で同じ返事なのよ。気が合うなあ。もーせっかくの計画が頓挫しちゃうよ。閣下もプリンスも我が儘なんだから」

「「どっちが我が儘だ!」」


 アハハ、職人さんまで笑ってるじゃん。

 閣下が言う。


「ユーラシア君に相談があるんだが」

「何だろ?」

「非常勤の施政館参与兼臨時連絡員を受けてもらいたいんだ」

「具体的に何すりゃいいのかな?」

「今までと同じだよ。時々施政館に来てもらって、昼食でも食べていけばいい」

「すごく魅力的な申し出だねごくり」


 笑い。


「ユーラシア君の入手してくる情報は非常に有益だ。突然の事件に即座に対処できる人員をキープしておくのも施政館の強みとなる」

「おお? 高く評価されてるね、さすがあたし」

「どうだろう、受けてくれるだろうか?」

「もちろんだよ」


 あれ、閣下意外そうですね?


「随分簡単に受けてくれるんだね。いや、ガータン男爵の時はうまく躱されたから」


 ははあ、ヘルムート君を新男爵にしたことは、一杯食わされたと思ってるんだな?

 パウリーネさんがプリンスルキウスのお嫁さんになったことで、アーベントロート公爵家の皆さんは次期皇帝争いでプリンス陣営についたと見えるから。

 

「そりゃ今までと同じことしててお給料もらえるなら、断る理由がないじゃん。ドーラ政府なんて、あたしにボーナスすら出そうとしないぞ? 男爵はあたしよりうまく経営できる人材がいたからだよ。ガータンの現状の報告も入ってるんでしょ?」

「うむ、市民権非保持者を領民に組み入れるという政策だな。犯罪も激減していると聞いている。奇抜な手があるものだと驚いているよ」

「明日リリーを連れてガータン行ってくるんだ。様子見てくるね」

「ユーラシア君はしょっちゅうガータンに行ってるみたいじゃないか。あんな田舎に何の用があるんだい?」


 あたしの目的までは情報が入ってないのか。

 べつにヘルムート君ラブってわけじゃないよ。


「あたしの欲しい石が出るんだ。ガータンに出資する代わりに、その石をもらってるの」

「リリーを連れていくのは何故だい?」

「リリーとヘルムート君は将来くっつくような気がするんだよね。世話焼いてやるのがあたしの使命とゆーか、あたししか仲立ちできないとゆーか」

「ユーラシア君はマメだなあ」


 マメなんだよ。

 あたしのマメなところを評価してくれる人はあんまりいないけど。


「ところでホルガーさんが在ドーラ大使として着任するのは、いつ頃になるのかな? 当面ドーラが困っているわけではないけれども」

「次のラグランド総督ジェロンとの引継ぎが終わり次第だな。ジェロンは数日中に本土を発つとのことだったから、ホルガーも来月の五日までにはドーラに着くんじゃないかと思う」

「りょーかいでーす。ドーラ行政府にも伝えておくね」


 職人さんから声がかかる。


「では今月末には机二台お持ちしますぜ」

「よろしく頼む」

「へい、お任せを」

「ルキウス、アデラ、御苦労だった。ルキウスは大量ですまないが、資料を持ち帰って十分読み込んでおいてくれ」

「わかりました、兄上」

「アデラは職務に戻るように。ああ、予はユーラシア君と話があるので、しばらく執政官室には誰も入らないように伝えてくれ」

「はい」


 プリンスアデラちゃん職人さんが退室する。

 さて、本日のメインイベントの始まりだ。

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