第1633話:ニライちゃんが余ってる
フイィィーンシュパパパッ。
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「やあ、精霊使い君いらっしゃい。随分大勢だね」
「まーサボリ君も暇過ぎると給料が減額されそうだから、ちょっと働かせてやろうかと思って」
「そりゃ御丁寧なことで」
アハハと笑い合う。
新聞記者ズとアグネスを連れて皇宮にやって来た。
新聞記者ズがキョロキョロしている。
「ユーラシアさん、ここは?」
「皇宮だよ。帝国のやんごとなき方々が住んでる宮殿」
「「ええっ?」」
「失礼があると首ちょんぱだから注意ね」
「とても大きい建物ですね。ビックリしました」
「……まあユーラシアさんが許されるなら、我々は全然……」
アグネス全然驚いてないじゃん。
あたしと初めて会った時はあんなに驚いてたのにな。
おまけに新聞記者ズが何げに失礼だし。
サボリ土魔法使い近衛兵に紹介しとこ。
「ドーラの新聞記者とあたしの友達の冒険者アグネスだよ。プリンスの結婚パレードを見に来たんだ。彼は美少女番近衛兵。土魔法を使える優秀なやつだけど、大体いつもサボってるか油断してるかのどっちか」
「そういう紹介の仕方はやめてくれ」
「真理だぬ!」
アハハ。
ヴィルのツッコミが絶妙で困る。
いや、困らないけれども。
「今日は近衛兵も半数が、結婚式とパレードの警備に駆り出されているんだ」
「え? じゃああんたもサボってる場合じゃないじゃん」
「俺はサボってないよ。こう見えても仕事だよ」
今日は人数が多いせいか、仕事してるアピールが強めだな。
「ドーラには女性の冒険者も多いのかい?」
「美少女は大体冒険者を目指すね」
「ウソだぬ!」
「あれ、今日はヴィルのツッコミが早いね」
よしよし、ぎゅっとしたろ。
「女性の冒険者が多いわけではないな」
「男女比一〇:一くらいだと思います」
「思ったより多いよ。アグネスちゃんも結構冒険者経験があるんだろう?」
「私はまだほんの駆け出しなんですよ」
「えっ? でもレベル一〇超えてるだろう?」
「ドーラでその程度は初級なの」
「自信失くすなあ」
もっともレベル一〇~一五の間に中級の壁があるような気がするけどな。
「詰め所にニライカナイ様がいらしているんだ」
「ニライちゃんが? ノルトマンさん連れで? どっちがどっちを連れてるのか知らんけれども」
「いや、伯爵はルキウス様の結婚式に参加されているはずだから」
「あ、そーか。じゃあ他の従者連れてか」
何の用だろ?
スライムで問題でもあったかな?
「詳しいことは知らないんだ。俺も報告を受けただけで」
新聞記者ズとアグネスに、ニライちゃんが伯爵家の令嬢であることを伝えておく。
どうも予想外の面白展開らしい。
「あんなにちっちゃい貴族の子が一人で来たなんて考えにくい。何者かが連れてきたのか? 何の目的で? 謎が謎を呼ぶ展開に肌が泡立つ。決着はいかに?」
「「何ですか、それは?」」
「ムリヤリサスペンス仕立てにするテクニックだよ。今日は記者さん達とアグネスがいるからサービスかな」
再びの笑い。
近衛兵詰め所にとうちゃーく。
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「あっ、ユーラシア!」
ニライちゃんとヴィルが飛びついてきたぞ?
タイミングを外してアグネスがオロオロしてるじゃん。
つか従者がいないぞ?
「どうしたの? ニライちゃんまさか一人なん?」
「そうぞなもし! ととさまとかかさまがひどいのだ。るすばんしてろというのだ!」
「えーと、誰か説明お願い」
今日は近衛兵長も出払ってるんだな。
留守を預かる近衛兵の一人が状況を話してくれる。
現在プリンスとパウリーネさんの結婚式が行われている。
伯爵夫妻が出席し、兄のライナー君も騎士だから警備で出張っているとのこと。
「ははあ、なるほど。ニライちゃんが余っちゃうのか」
「まだ式に出席できる年齢じゃないですからね」
「屋敷で待ってるべきじゃん。何でこんなとこにいるのよ?」
「つまらぬぞなもし!」
「我が儘だなー。今日くらい大人しくしてなよ」
「おぬしだったらがまんできるのか?」
「できるわけないだろ。あたしは天下御免の我が儘冒険者だぞ?」
アハハと笑い合う。
ニライちゃんもちょっと笑顔になったね。
「屋敷でお留守番がつまんないって言い分はわかったけど、詰め所にいるのはどうしてなの? 待ってるならどこでも同じことでしょ?」
「もしユーラシアがくるなら、あそんでもらってもいいといわれたぞなもし。それでととさまにつれてきてもらった」
「えっ?」
何それ? どゆこと?
ノルトマン伯爵は今日あたしが帝都に来ること知ってたわけじゃないだろうし。
「……ニライちゃんはお出かけする時、いつもノルトマンさんと一緒なのかな?」
「だいたいととさまといっしょぞなもし。にいさまがおやすみのときは、にいさまがあそびにつれていってくれることもあるぞなもし」
ははあ。
ツムシュテーク伯爵家には、ノルトマンさんやライナー君以上に腕の立つ護衛がいないんだな?
当たり前か。
天才剣士やその父親以上の腕の人なんか、そんじょそこらに転がってるわけない。
だからこの前もノルトマンさんが、ニライちゃんの従者みたいな格好で詰め所に来てたんだろう。
ニライちゃんをすげえ可愛がってるってこともあるんだろうけど。
しかしさすがにプリンスルキウスの結婚式である今日は、ノルトマンさんもライナー君もニライちゃんを構ってるわけにいかない。
おまけにお祭り騒ぎで、街中には確実に浮ついてる輩が多く出歩いている。
安全な場所で待たせておきたいが、ニライちゃんは家族の誰もいない屋敷で待つのを嫌がった。
困り果てて、あたしが必ずしも来るとは限らなかったけれども、来るなら遊んでもらえという条件でニライちゃんを納得させたんだな?
あたしがついてるならば、誰に絡まれようがどうにでもなるから。
「オーケー、大体理解した。あたしの子守りの腕前が正当に評価されたということだな? 遊んでやろうじゃないか」
「ありがとうぞなもし!」
「パレードは何時からかな?」
「正午からです」
「まだかなり時間あるね。じゃ、ニライちゃんが行ったことなさそーなところに連れてってやろう。パレードの前に早めにお昼食べに戻ってくるよ。お土産のお肉置いてくから、皆さんで食べてね。じゃ、出かけるよー」
裏町へしゅっぱーつ。




