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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1631話:あたしと言えばドーラの中心

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 毎晩恒例のヴィル通信だ。


「水魔法『アクアクリエイト』のスクロール生産の件、どうなったかな?」

『アレク達とエメリッヒ氏には伝えたぞ。スキルスクロール製作はチェックだけだから、全然問題はないらしいが』

「スクロール用紙自体の生産がどうかってことを聞きたかったんだけどな」

『話に出なかったな。大丈夫だろ』

「集中力欠けてない? 不良品売ったらドーラの信用度が下がるんだぞって、言い聞かせておいてよ」

『ハハッ、商売には熱心だな』

「当たり前だわ。信用なくなったらドーラ製の品が買い叩かれちゃう。買い叩かれたら大損だ。あたしの大嫌いなワードだよ」

『どこまでも自分中心なのがえぐい』


 あたし中心ちゃうわ。

 ドーラの話だわ。

 あれっ、あたしと言えばドーラの中心か。

 あながち間違っちゃいなかったわ。


『アレクとエメリッヒ氏がデスさんに宿題を出されたんだ。転移術についてだがな』

「デス爺がカラーズに来たんだ?」

『ああ、時々は様子見や買いつけに来るからな。珍しくほろ酔いだったが』

「そーいや三日前、お酒をお土産に渡したんだった」

『ユーラシアもいいことしてるじゃないか』

「デス爺を働かせる必要経費だね」

『酔いが醒めるほどドライでえぐい』


 えぐくないわ。

 働いてもらうなら報酬が必要ってだけの話だわ。


「ガリアの王様にもらったお酒だったんだ」

『ほう? じゃあかなりの高級酒に違いないな』

「リリーの従者によると、手に入れようとしても不可能なやつも入ってるって言ってたな」

『デスさん喜んだろう?』

「あんなに喜んでるじっちゃん見たの初めてかもしれない。一〇本くらいあげたから、対価分はしっかり働いてもらうわ」

『いい酒を一〇本? そりゃまずい』

「えっ?」


 あれ? ここは何だかんだほにゃららでえぐいって言われる予定だったんだけど。

 まずい? とは何で?

 デス爺に喜んでもらえるとあたしも嬉しいのは本音だぞ?


『デスさんの酒好きは尋常じゃないんだ。普段は自分でセーブしてるけど、目の前にいい酒が一〇本もあったら我慢できないだろう。飲んだくれるぞ』

「……とゆーことは作業が遅れる?」

『チェックが甘くなることだって考えられそうだな』

「マジか。早めに教えてもらってよかったよ。サイナスさん、ありがとう」


 明後日には転移の玉一〇個ができ上ってくるのだ。

 チェックしてもらうのはお酒がなくなった頃にしよ。

 その前に『晴眼』持ちペーターに転移先を見てもらうんでもいいな。


「開拓地に水引くためにクー川のやや上流の方調査した際、結構な魔物が出たじゃん?」

『これはどっちだ?』

「どっちだとは?」

『撹乱話法か跳躍話法か』

「跳躍話法の方だよ」


 変なことに拘るなあ。

 話の腰を折られるあたしの身にもなってみろ。

 聞く側の心構えが違うんだろーか?


「あの時に『アトラスの冒険者』が一人助っ人に来たでしょ?」

『ああ、黄色いマントが鮮やかな人だな? 確かデミアンとかいう』

「そうそう、悪くない人。彼の妹が冒険者志望なんだ」

『ふむ?』

「お兄に負けないだけのレベルと知識が欲しいんだそうな」

『しかしあの黄色いお兄さんは、かなりの実力者なんだろう? ユーラシアもかなり評価してたみたいじゃないか」


 黄色いお兄さんって表現は面白いな。

 どっかで使う機会があるかな?


「あんな儲かるもとい強い魔物がポコポコ出現するクエストに派遣されるくらいの冒険者だもん。デミアンはあたしも認める実力者だよ」

『高いハードルだなあ』

「デミアンもシスコンだもんだから、あたしに妹の教育を頼むみたいなこと言ってくるんだよね。妹はアグネスって言うんだけど、アグネスもあたしと遊びたいみたいで」

『最近そういうの多くないか? ルーネロッテ皇女も似た感じなんだろう?』

「教育者としての手腕が認められちゃってるんだよ。美少女精霊使いは熱血スパルタ教師」

『ウソだ。保護者が甘いから、本人の希望が通るだけだ』


 何でわかるんだろ?

 マジでサイナスさんは鋭いなあ。


『いつものパターンで魔境ツアーなのかい?』

「いや、真剣に冒険者やりたい子に対しては、最近レベリングしないことにしてるんだよ」

『何故? 冒険者こそレベルが必要だろう?』

「レベルが必要なのはその通り。でもレベルほど経験積んでない状態ってのはあとで祟るんだよね。地道に経験積んだ方が身になるから」


 あたしはレベルと運とカン、バラエティに富んだクエスト体験で補えちゃってるけど、レアなケースだとはわかっている。

 あたしに祟ったのは金銭面だけだ。


『ふうん、ユーラシアは考えてるんだなあ』

「あたしの頭部は美しいことだけが評価されがちだけど、実は頭蓋骨の中身も優れてるんだよね。ところが教育頼む言われても、あたしんとこおかしなクエストしか回されないじゃん? 初心者に近い冒険者の育成には向いた転送先がないんだよ」

『やっぱりユーラシアのところにはおかしなクエストしか回されないのか。どうもエンターテインメントに偏り過ぎだと思ったんだ』

「エンターテインメントにしてるのは、あたしの類稀なる実力とヒロイン補正あってだと思うけど。違うわトラブル体質じゃないわ!」


 機先を制してやった。

 それはともかく。


「とにかくいろんな経験させてやんよってことで、明日帝都へ連れていくことにした。プリンスルキウスの結婚式とパレードなんだ」

『ふむ、ハプニングが起きちゃうわけだな?』

「何でだ。起きないわ」


 ダンといいサイナスさんといい、言い草がひどい。

 何なのだ一体。


「パレードを見てくるだけだとゆーのに。帝都はやたらと人口多いからさ。パレードを見て、すんごい人波を経験してくるだけでも勉強になるかと思って」

『トラブルへの対処の仕方もな。いや、君のやり方は豪腕だから参考にならないか』


 変なフラグを立てるのやめておくれ。

 明日は無事に終わることが第一だ。

 プリンスへの一般大衆の印象が、いい方向に高まるといいなと思ってるんだから。


「お終いでーす。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 クリームシチューについて言い損なったな。

 まあいいや、今度食べさせてやろう。

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