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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1624話:ダンは『精霊の友』

「ペペさんばいばーい。今日はありがとうね」

「いいえ、私こそお肉ありがとう。さようなら」


 一旦ホームに帰ってきた。

 お土産のお肉を持ち、転移の玉を起動して消え失せるペペさん。

 チュートリアルルームで魔法の契約関係の話がすぐにすんだのは良かった。

 一仕事終わった気分。


 ダンが言う。


「要するに、さっきの交渉はシスターとバエちゃんに対するサービスなんだな?」

「まあね」


 一見水魔法『アクアクリエイト』と盾の魔法『ファストシールド』のスキルスクロールの海賊版を作らせないように、ペペさんの権利を守ったように見える。

 が、実際はそーゆー意図じゃないのだ。

 ペペさん自身が権利やおゼゼに頓着してなかったくらいだしな。


「バエちゃんが可哀そうでさ」

「どういうことだ?」

「『アトラスの冒険者』廃止で貧乏クジ引いちゃってるの」


 廃止される部署にいた末端人員なので、おそらく閑職に回されて給料も減ってしまうだろうことを話す。


「向こうの世界では聖職者イコール公務員らしいんだ。シスターってのは単なる修道女じゃなくて、一種のランクみたいなもんなんだって。三年間チュートリアルルームの職員を勤めればシスターの資格を取れたんだけど、まだ一年くらいしか勤めてないバエちゃんは残念なことにダメなんだ」

「運がねえな。ユーラシアが同情したくなる気持ちもわかる」

「でしょ? バエちゃんには随分お世話になったからさ。できれば恩返ししたいじゃん?」

「せめて魔法を売って儲けてくれってことか」

「うん」


 あたしは『アトラスの冒険者』になれて、人生が愉快な方向に転換した。

 バエちゃんだっていい目を見てもらいたい。

 首をかしげるダン。


「しかし……今日の話だと、儲かるのはシスター・テレサなんじゃねえか? バエちゃんじゃなくてよ」

「バエちゃんはスキルスクロール事情に詳しいってわけじゃないから。シスターは詳しいんだ。今こっちの世界に卸してくれてる水魔法も、全部シスターの手配なの」

「ほお?」

「シスターだって、あたしとバエちゃんが仲いいおかげで儲け話が転がり込んできたってのはわかってるじゃん? だからバエちゃんには、シスターから給料もらえって話してあるんだ。バエちゃんはシスターに可愛がられてるから、うまくやってくと思うよ」

「めでたしってわけだな?」


 というのが自然の流れだ。

 ……しかしあたしとバエちゃんとの付き合いは、『アトラスの冒険者』廃止後もずっと続く気はしている。

 ただのカンだ。

 ヴィジョンはなくもないが、まだ何とも。

 不確定要因ばっかりだから。


「ユー様、ダンさん、ハーブティーが入りましたよ」

「クララありがとう……って、えっ?」


 ダンがいるのに何故クララが話しかけてくるんだ?

 クララが笑う。


「ダンさんはもう『精霊の友』ですよ」

「そーなん? 出世したねえ」

「何がどう出世なんだよ」


 アハハと笑い合う。

 初めて会った時からこのツンツン頭の男は精霊親和性が高そうだなあ、とは思っていた。

 こんだけうちのパーティーと絡みがあると、『精霊の友』になってもおかしくないか。


「おお? えらくスッとするじゃねえか」

「清涼感が強いよね。これ魔境で取ってきたタイムのハーブティーなんだ。普通のタイムより香りが強いの」

「これも魔境関係か。あんたほど魔境を満喫してるやつもいねえな」

「枝あげようか? 挿しとくとすぐ増やせるよ」

「おう、すまねえな」

「いいってことよ。その代わり、うまい利用の仕方を発見したら教えてよ」

「わかったぜ」


 このタイム、今うちではハーブティーにしか利用していない。

 ちょっともったいない気がしているのだ。

 上手に料理に使えればいいんだが。

 スイーツにも利用できそう。


「そっちにあるのが前に話したイチゴだよ。帝国のフリードリヒ公爵からもらった『パウリーネ』って品種」

「こんなに小さい株なのかよ?」

「いや、あたしもキイチゴしか知らなかったからビックリで。大分赤くなってるのがあるから食べてみ? 本当はもう一日二日あとが食べ頃だけど」

「……美味い」

「でしょ? 食べ頃だともっと甘いよ」


 本来フリードリヒさんは『パウリーネ』を外に出す気はなかったと思う。

 でも帝国本土中央部とドーラとではどう考えたって競合しないから、感謝の気持ちとしてくれたんだろ。

 あたしにとっては実にありがたい。


「このひゅっと出てる枝に先に芽があってさ。皆根が出て子株になるっていうから、増やすのは簡単だな」

「暑い時期を過ぎれば植え替えの季節だぜ」

「おう、カカシか。そういやあんたも精霊だったな」

「うちでは大活躍してくれてるんだよ。特に魔境連れてってからは、管理できる畑の面積がすごく広くなってさ」

「え? あんた依り代タイプの精霊までレベリングしてるのかよ?」

「オイラも驚きだったぜ」

「照れる」

「呆れてるんだからな?」


 笑い。

 レベルアップは大体何でも解決するのだ。


「ユーラシアは今から魔境へ行くんだろ?」

「よくわかってるね。ちょっと前オニオンさんに誰が魔境によく来るかって聞いたら、お兄さんズとラルフ君パーティーだって言ってたんだよ。でもお兄さんズもドラゴンスレイヤーになったって話じゃん? これから行かなくなっちゃうよねえ」

「お兄さんズってキーンさんヤリスさんのことかよ。魔境は何だかんだで気を抜けねえからな。次の転送先に行くんだろ」


 気を抜けない?

 リラックスできないってこと?

 感覚が違うな。

 ダンが笑う。


「魔境の女はあんただけだ」

「ダンは最近どうしてるの?」

「冒険者活動はほぼ休みだぜ。農繁期だしな」

「だよねえ」


 ダンのパーティーのメンバーは農場の従業員だしな。

 植えつけ除草に加えて、そろそろ小麦の収穫も始まる今の時期は忙しかろう。


「この前デミアンとその妹に付き合わされたぜ」

「いーなー。あたしも行きたかった」

「行きゃいいじゃねえか」

「あたしあんまりデミアンと会えないんだよ。何時頃ギルドに行けば会えるのかなあ?」

「比較的朝に会う気がするな。九~一〇時頃ならいいんじゃねえか?」

「明日時間あるから行ってみよ」


 さて、楽しい楽しい魔境へ行くか。


「俺も連れてけ。暇なんだ」

「じゃ、行こうか。ダンにもヤバい人形系見知ってて欲しいんだよね。ギルドで注意喚起してよ」

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