第1623話:おまけに盾の魔法
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、チャーミングなユーラシアさん。いらっしゃい」
「こんにちはー、ポロックさん」
「こんにちはぬ!」
帝都の皆さんを送ってから、ギルドにやって来た。
「静かにしてやってくれるかい? 今寝たとこなんだ」
「ポーラはお昼寝の時間か」
寝顔が可愛いな。
元気に遊んでバタンと寝るのは子供の仕事だ。
え? あたしもよく動いてよく寝るだろって?
永遠の無垢なる少女だなんて照れるなあ。
あんまり見てるとヴィルまで眠くなっちゃうから中へ。
お店ゾーンへ足を運ぶ。
「あれ、珍しいね?」
「よう、ユーラシア」
「こんにちはぬ!」
ペペさんとダンが話してるじゃん。
最初から起きてるペペさんは結構レアだ。
折っちゃった世界樹を確認しに行く時は確か起きてた。
人形系の魔物が大量発生していて、初めてウィッカーマンを倒せた日でもある。
所謂ハッピーデーだった。
今日もいいことありますように。
「ユーラシアちゃん、これ。水魔法『アクアクリエイト』のケイオスワード文様よ」
「ありがとう。ペペさん時間あるかな? チュートリアルルームまで来て欲しいんだ」
「あるわよ? お昼御飯食べて眠くなってたところ」
「ちょうどよかったな。ペペさんの昼寝の時間を奪ったんじゃ申し訳ないから、早めに用をすまそう」
「おい、何の用だ?」
大声で言えないことなんだよ。
察しろ。
「興味ある? じゃ、ダンもおいで。あんまり面白いことではないよ」
「一緒に行くぬ!」
転移の玉を起動し一旦帰宅する。
ペペさんが小さかったり大食いだったりするのって、寝過ぎて御飯を食べ損なうことが多いからかなあ、という疑問を抱きつつ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「ユーちゃん、いらっしゃい」
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
ペペさんとダンを連れてチュートリアルルームにやって来た。
ダンが言う。
「テレサさん、だな?」
「はい。あなたは?」
「ギルドのパパラッチこと情報屋のダンだ。よろしくな」
「こちらこそ」
ギルドのパパラッチって、完全に二つ名として使ってるのな?
シスター・テレサのことは画集で見知ってたんだだろう。
手っ取り早くペペさんに説明する。
「『アクアクリエイト』の外注受けてもらえなくなっちゃったじゃん?」
「そうね」
「外注に関してはあっちの世界の都合があるから仕方ないことなんだけど、『アクアクリエイト』は便利な魔法だから、異世界でも継続して販売したいってことなんだ。でも『アトラスの冒険者』が廃止されると世界の行き来がなくなるから、今の契約だとお金のやり取りができなくなっちゃう」
バエちゃんが言う。
「ダンさんは『アトラスの冒険者』が廃止されることを知ってるのね?」
「変なところから感付かれてさ。嗅ぎ回られても迷惑なんで話したよ」
まあダンは理屈が通れば協力してくれるから。
「ペペさんに相談なんだ。異世界で『アクアクリエイト』を作って売ってもいい権利を譲ってあげられないかってことなんだけど」
「もちろんいいわよ?」
「おーい、まだ金額が提示されてないぞー。オープンザプライス!」
「四〇万ゴールドで、どうかよろしくお願いいたします!」
深く頭を下げるシスター。
しかし四〇万ゴールドか。
公務員たるシスターにとっては年収の何倍?
払える最上限の金額じゃないだろうか。
とゆーか結婚資金もつぎ込んでるんじゃないの?
バエちゃんビックリしてんぞ?
意気込みとゆーか悲壮感とゆーか、特別なパワーを感じるわ。
「いいの? 四〇万ゴールドって大金よ?」
「足りないことは重々承知の上ですが、どうかよろしく……」
「勝手に作ってもらっても構わないのよ?」
「いえ、権利関係の怪しい品は売れませんから」
ついこの間までビンボー生活だったペペさんには、四〇万ゴールドの価値は重々わかってる。
一方でシスターも一本一〇〇ゴールドの儲けで月二〇〇〇本売ってるペペさんの収入は当然承知してるから、四〇万ゴールドがいかにちっぽけな金額か知っている。
譲り合いになりそうだなあ。
時間のムダだ。
「よし、ペペさん。四〇万ゴールドで売ろう!」
「えっ? 何だか悪い気がするのだけれど」
「盾の魔法をおまけにつけてあげればいいじゃん」
「あっ、そうね!」
「「盾の魔法?」」
うん、これは知るまい。
ギルドでは売ってるけど、こっちには知らせてない。
魔物のいないあっちの世界で『ビートドール』は役に立たないだろうけど、盾の魔法は出番がありそう。
「要するにシスターは、ペペさんオリジナルの魔法の作製・販売で儲けたいわけじゃん?」
「はい、そうですね」
「盾の魔法は最近ペペさんが開発した魔法で、やっぱり帝国に輸出してるんだよ。シスターも商品ラインナップが『アクアクリエイト』だけより、複数あった方がよくない? ってこと」
ハハッ、喜んでら。
スキル作成の天才ペペさんに感謝するがよい。
「どんな魔法ですか?」
「やってみせるよ。ヴィルおいで」
「はいだぬ!」
「『ファストシールド』起動してくれる?」
「ファストシールドだぬ!」
ヴィルをぎゅーっと抱きしめる。
むにゅむにゅに遮られてぎゅーしづらいな。
「……変だぬ。何も感じないぬ。寂しいぬ」
「あっ、効果切れた」
「ふおおおおおおおおお?」
「こういう魔法だよ」
「「全然わからないわ」」
ダンが大口開けて笑ってやがる。
ペペさんが説明する。
「短い時間だけど、物理ダメージも魔法ダメージもシャットアウトする魔法よ。基本八状態異常や即死効果も受けなくなるわ」
「上手に起動できれば、すげー高いところから落ちようが馬車にはねられようが無傷ってことだよ。痴漢除けにもなる。サンプルとしてシスターに一本あげるね」
「ありがとうございます。でもいいんですか?」
「いいわよ」
「で、では契約書の方、よろしくお願いいたします」
書きものしてる間にバエちゃんに聞く。
「聞いとかなきゃいけないことがあったんだった。チュートリアルルームで冒険者へのスキルスクロールの販売は、いつまでやってくれるのかな?」
「飽魚の月末『アトラスの冒険者』廃止まで続けるわよ」
ならば今販売してるやつは、ドーラでの内製を急ぐことはないな。
さて、書類に署名も終わったようだ。
「じゃ、あたし達帰るね」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動して帰宅する。




