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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1611話:タメ口が許される理由

「全員整列! 諸君らの点呼を取る! 番号!」

「一!」

「二!」

「三!」

「ユー様、何やってるんですか?」

「もークララったら尊敬の目であたしを見ないでよ。弟分達のやる気を確認してるんだ。気合の入ったいい返事だね」


 灰の民の村図書室での一コマだ。

 今日はアレクケスハヤテを連れて、ガリアの王宮へ商売の交渉に行く日。

 三人ともいい表情をしている。

 でも緊張することはないよ。


 ガリアに豊富な森林資源を利用した産業に、王様が乗り気なのは間違いない。

 それ以上に、あたしの連れていく子達に興味があるんじゃないかな?

 エンターテインメントが好きな人だから。

 そして王様はアレクケスハヤテのレベルくらいわかるので、決して粗末にはしない。

 

「今日の予定を確認するよ。ガリアの王宮へ行って、スレイプニルに挨拶しまーす」

「「「スレイプニル?」」」


 ハハッ、アレクはスレイプニル知ってるみたいだな。

 目が輝いてるわ。


「神獣扱いされてる八本脚のデカいウマだよ」

「スレイプニルって本当にいるんだ? 伝説じゃなく?」

「伝説なのかもしれないね。でも本当にいるよ。あんた達じゃプニル君の喋ってることは理解できないだろうけど、向こうはこっちの言ってることわかるんだ。失礼のないように」

「姐さんはそのウマが何言ってるかわかるのか?」

「わかる。実はプニル君には、自身よりレベルの高い相手にしか言ってることを理解させることができないとゆー、おかしな設定があるんだ」

「スレイプニルのレベルはいくつだか?」

「九九だよ」


 三人が何だそれって顔してるが、本当だから仕方がない。

 ただプニル君の会話条件に関するわけのわからなさについては、あたしも同感だ。

 単なる喋るウマでいいのに、何故相手のレベルが高くなきゃダメなのか?


 アレクが言う。


「喋るスレイプニルより、重要な用件が抜けてるんじゃないの?」

「プニル君へのお土産のニンジンを買っていかねば。忘れるところだったわ。アレクありがとうね」

「スレイプニルから離れてよ。本来の用件である商売上の交渉だよ。『文字を覚えるための札取りゲーム』を売り込みに行くんだろう?」

「売り込みはあんた達の仕事であって、あたしは関係ないから」

「「「えっ?」」」


 驚くアレクケスハヤテ。

 素っ頓狂な顔するな。

 相手の身分は高いけど、向こうが乗り気になってる簡単な交渉だぞ?

 練習としては最適だろ。


「お、おいらが王様と話をする?」

「あんた達三人の中では、今後ケスがそういう役割を担っていかなきゃならないね。ま、今日は初めてだから、アレクが手伝ってやりなさい」

「了解」

「おいら敬語なんて使えねえよ」

「あたしだって使わないわ。王様は雰囲気ある人だけど、フェアだし度量も大きいから、つまんないこと気にしないぞ? ドーラの山ザルはこんな喋り方なんだごめんねって言っときゃいいよ」

「そ、そうか?」

「でも今後必要だと思うならば、ケスも敬語を覚えることにしなさい。美少女はどこ行ってもタメ口が許されるから、あたしには必要じゃないけど」


 あたしの偉大さを理解したらしいアレクケスハヤテ。

 ユー様は傍若無人ですからと思ってそうなクララ。

 姐御に敬語はどう考えても似合わねえと顔に出ているアトム。

 ポーズに出してふーって言ってるダンテ。

 反応は様々だなあ。


 ハヤテが言う。


「ユーラシアさんは交渉に口出さないだか?」

「基本的には出さないつもり。でももちろん同席するし、あたしの思惑に絡むことがあったら意見くらい言うかも」


 だからビビることはないとゆーのに。


「交渉のあと、昼食をごちそーになって帰りまーす」

「御馳走になるところまで予定に入ってるんだなあ」

「むしろ御飯の予定は一番大事だね」


 アハハ。

 さて、ニンジン買ってこ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 キョロキョロ周りを見渡すアレクケスハヤテ。


「ここがガリアの王宮か」

「メッチャ広いよねえ。庭の中に森があるってすげーわ」

「少し寒いだ」


 うむ、ドーラに比べると気温が低いのだ。

 海霧の月、いわゆる五の月と言ったら、ドーラでは日によっては暑いくらいだ。

 でもガリアではそんなことはない。

 北国の厳しさを少し感じる。


「あれがスレイプニル?」


 アレクが指差す先に、宙を駆ける黒く大きな八本脚のウマがいる。


「うん。使ってるのが特殊な飛行魔法らしくてさ。空を蹴って走る感じなんだよね」

「すごくデカい!」

「デカいんだよ。あれ? 誰か乗ってるな」


 あ、こっち来た。

 乗ってるの王様やん。

 勇壮に近付き、優しく降り立つ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おう、よく来たなユーラシア。そちらがゲームの販売担当者か?」

「そうそう。札取りゲームの生産と販売の担当者で、あたしの弟分達アレクケスハヤテだよ。よろしくね」

「「よろしくお願いします」」


 頭を下げる三人。

 うんうん、初々しいね。


「ふうむ。まさか子供があのゲームを担当していたとは。正直驚きだ。三人のレベルもかなり高いではないか。ユーラシアが目をかけているだけある」

「なかなかやる子達なんだ。冒険者として活動してるし、輸送隊員として働いてるし、スキルスクロール生産にも関わってる」

「スキルスクロール生産? 量産できるものなのか? 大変に興味があるが」

「スキルスクロールはスキル作成者の権利の問題があるから、ガリアじゃムリだぞ?」


 王様至極残念そうだけど、スキルスクロールはドーラの強みだからね。

 ガリアは森林資源の有効活用と北限農業を考えてください。


「他にも新しい企画を持ってると思うから、色々話聞いてやってよ」

「うむ」

「ところで王様、何でプニル君に乗ってるの?」

「うむ、背中に乗れと言っている雰囲気だったのでな」

『甘いビートをたくさんもらった礼だ。今後王に限り、我の背に乗ることを許すことにする』

「ビートのお礼だって。今後も王様を背中に乗せてやるって」

「ほう、嬉しいな!」


 プニル君に乗って登場は結構な迫力と威厳なんだが、子供のようにはしゃぐ王様とはギャップがあり過ぎる。


「ニンジン持ってきたんだ。食べてね」

『うむ、いただこう』

「王宮まで来てくれ。既に大臣達が来ておる」

「大臣『達』?」


 森林大臣を呼ぶって話だったけど、他にも来てるのか。

 有力者に会えるのは嬉しいなー。

 いざ、王宮へ。

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