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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1607話:非常識な攻撃だったとは

「調査を兼ねて魔物退治を行う」

「この前みたいに、魔獣を狩ったらヴィルが運ぶから、処理をよろしくね」


 魔物のいる山である聖モール山の麓に村人を集め、メルヒオールさんが説明している。

 魔物退治要員三人がちょっと緊張してるかな?

 気持ちはわかる。

 何たって夜はお肉の予定だから、たくさん狩らないといけないとゆー使命感があるもんな。

 新緑の季節だ。

 いい感じに草食魔獣も太っているに違いない。

 楽しみだ。


「では、行ってまいる」

「メルヒオール様、お気をつけて」


 いざ、しゅっぱーつ。


「爺様、柵は効果があるのか?」


 集落がある辺りと山との境界として、簡易的な柵が設置されているのだ。

 魔除けの札が貼りつけてあるわけじゃなし、確かに獰猛な魔物には効果がなさそうだが?


「ここより山側に入るなという、村人に対する注意喚起の意味が強いな。もっとも山の植物の生育が順調ならば、数の多い草食魔獣はわざわざ柵の外にまで出て来ぬということはある」

「なるほどの」


 ふむ、簡単な柵でも割と効果があるのか。

 ドーラ西域より魔物の密度小さそうだしな。

 魔物との付き合い方も、地域ごとに結構違うもんだ。


「心配だなー」

「新人の魔物狩りがか? それなりに鍛えられているのだぞ?」


 新人さんの心配なんかしとらんわ。

 上級冒険者レベルが何人いると思ってるんだ。


「新人さんのことではなくて。今日人数が多いじゃん? 草食魔獣が寄ってこないんじゃないかと思ってさ。狩れないと夕御飯困っちゃう」

「夕御飯の心配なのか」

「だって村人達もお肉を期待してると思うし。あたしはプロのお肉ハンターだから期待に応えねば」


 リリーよ呆れんな。

 お肉は紛れもなく重要だぞ。

 草食とはいえ魔物なら邪気はあるので、バッタリ遭遇とかなら間違いなく戦闘になるけど、ある程度距離があると難しい気がする。


 メルヒオールさんが言う。


「この時期は気が立っている子連れが多いぞ」

「子連れは可哀そうだから見逃してやりたいんだけど?」

「どうせ肉資源は保護したいと考えているのであろ?」

「バレたかー」


 ちょっとは憐憫の情がなくはないけど、魔物は魔物なのだ。

 敵でありお肉でもある。

 お肉に人権はないという、ユーラシア語録に載っている有名な格言もあることだし。


「……オニカモシカだ」

「一頭か」


 手頃だな。

 魔物退治要員三人のお手並み拝見といこうじゃないか。

 一対三だと逃げちゃう可能性も大きいけど。


 黒服が言う。


「ユーラシア様、仕留めてください」

「えっ? 新人さんの腕を見るんじゃないの?」

「そうだ! ユーラシア、倒すのを見せてくれ!」


 リリーまで何なん?

 逃げられちゃうかもしれないから、食料保存の法則に従って夕食を確保しておけってことかな?

 それとも三人がかりだと毛皮がズタボロになっちゃうから?

 あたしが倒した方が安全確実ではあるから、構わないけれども。


「ほいっと」


 ギリギリ届く距離だ。

 スナップを利かせてオニカモシカの首を刎ねる。


「す、すげえ……」

「いや、すごくはないんだ。レベルが上がれば皆にもできるよ」

「で、でもレベルが上がったって命中率は上がらないでしょう?」

「えっ?」


 何で命中率の話になる?

 あたしとしたことが意表を突かれたわ。

 黒服が説明してくれる。


「ユーラシア様はかなりの長距離から攻撃なさるでしょう?」

「うん。『スナイプ』を装備していると、間合い一〇ヒロくらいは有効だからね」

「完全に飛び道具の間合いです。弓矢や魔法のように狙いをつけるわけでもなく、一〇ヒロの攻撃を当てるというのは、正直考えられないです」


 そーなの?

 全然考えたことなかったわ。

 リリーが言う。


「パワーカード屋で聞いたら、『スナイプ』というのは、図体の大きな魔物に対して遠距離から攻撃することを想定したカードだそうではないか」

「他人がどう使ってるかは気にしてなかったわ」

「ユーラシアのやってる遠くの小さな魔物を不意打ちしたり、飛行魔物を落としたりすることは非常識過ぎるのだ」

「非常識て」

「俺もヤマタノオロチ退治の時から、バカげて射程の長い武器だなとは感じていた。強度の命中率補正でもついているのだろうと思ったが」

「命中率補正のカードなど使っておらぬのだろう?」

「必要性を感じたことないな。特別に回避率の高い魔物が相手とゆーならともかく、パワーカードは七枚しか装備できないんだから、命中率上げるために装備枠を消費するのはもったいない」


 リリーが呆れたように言う。


「おかしいと思わなかったのか?」

「思わなかったなあ。飛行魔物に攻撃を届かせる、飛び道具の代わりになるパワーカードだと思い込んでたから。そりゃ最初はちょっと扱いが難しいなと思ったけど、慣れりゃどうってことないよ」

「「「「「「慣れない」」」」」」


 『スナイプ』併用による遠隔物理攻撃が、あたしのごまんとある長所の一つだったとは気付かなかった。

 だってあたし達には先輩のパワーカード装備者がいなかったんだもん。

 すげえ便利に使えてたし、疑問の余地なんかなかったわ。


「しまったな。自分の感覚から、『スナイプ』は物理アタッカーに必須の装備だと思ってたよ。皆に勧めまくってた。悪いことしちゃったかな?」

「いや、必須だとは思いますよ。間合いが長くなることは確実に有利ですし。皆がユーラシア様のように目一杯の射程で使用することはないですが、名人芸的な使い方もオプションとしてあるのだということを、新人諸君に見せておきたかったのです」


 名人芸って言われると照れる。

 遠隔物理攻撃を見せる意図で、あたしにオニカモシカを仕留めろって言ったのか。

 黒服は教育係としても優秀だなあ。

 魔物退治要員の一人が聞いてくる。


「遠隔攻撃のコツはありますか?」

「今の場合は首だけど、相手の弱いところを攻撃する技だから、力入れなくていいんだ。モーションをできるだけ小さくして、刃を狙ったところに置いてくるイメージだよ。レベルが低いと一撃で首を刎ねることはできないけど、太い血管を切れれば倒せるからね」

「「「はい!」」」


 元気がいいなあ。

 練習すればかなりのことはできると思うよ。


「草食魔獣は引き続きユーラシアが倒してくれ。お前達はその他の魔物を担当するのだ。よいな?」

「「「はい!」」」

「あいあいさー」

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