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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1575話:ルーネの活躍をダイジェスト版でお伝えします

「こんにちはー。美少女精霊使いユーラシアと皇女ルーネロッテがやって来ましたよ」

「はい、伺っております。こちらへどうぞ」


 施政館受付で挨拶すると、すぐに執政官室に案内される。

 ルーネが来るのも予想の内だったみたいだな。

 あたしも施政館で顔になってきたもんだ。

 あたしの影響力を帝国に及ぼす上で都合がいい。

 それ以上に気分がいい。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシア君、いらっしゃい」


 お父ちゃん閣下の他はアデラ植民地大臣とデニス封爵大臣がいる。

 アデラちゃんがいるとこをみると、やっぱりタルガ植民地を重視している。

 内海貿易に注力して儲けを大きくしたいという、施政館の姿勢が見えるな。

 何で今まで内海に力入れてなかったのかはわからんけど。

 しかしお父ちゃん閣下、不機嫌というより困惑しているようだが?


「閣下のそーゆー顔面白い」

「……」


 ヴィルが面白いぬよって言わない。

 一定以上の緊張に似た何かを感じる。

 無言だが注意はルーネに向いてるな。

 ルーネ、出番だぞ。


「お父様ごめんなさい」

「ああ」


 明らかにホッとしてるやん。

 今までルーネが怒ることなんてなかったから、どうしていいかわからなかっただけなんだなニヤニヤ。


「親が子供の身を案じるのは当然だから、お父様が腹を立てるのはわかるとユーラシアさんに言われて。お父様の愛情に私が怒るのは筋違いだと気付きました。本当にごめんなさい」

「わかればいいんだよ、ルーネ。ところでユーラシア君に申し開きはあるかい?」

「何の申し開き?」

「ルーネロッテを魔物退治に参加させたことだ! 危ないことはさせるなと言ったろう!」


 直接言われたんだったかな?

 意図はヒシヒシと感じていたけれども。


「全然危なくなんかないわ! ところで昨日のルーネの活躍をダイジェスト版でお伝えするけど聞く?」

「うん、聞こう。ダイジェスト版でなくてもいい」


 ハハッ、危ない危なくない認める認めないはさておき、愛娘の活躍となると聞き逃せるものではないらしい。

 お父ちゃん閣下扱いやすいぞニヤニヤ。


「転移先がタルガの正門から一〇〇ヒロくらい外れたとこだったんだ。街中に悪魔が突然出現すると騒ぎになっちゃうから、知らないところへ行く時、あたし達は大体そうしてるの」

「うん。それで?」

「ガイドの説明によると、タルガの町周辺にはハマサソリっていう毒持ちの魔物が生息してるってことだった」

「毒持ちか。危ないように思えるが……」

「でも弱いんだ。今のルーネの実力は、ステータス補正の大きい装備品でもなければ、ドーラで最弱クラスって呼ばれてるスライムでもギリギリ一撃で倒せないくらい。言い方を変えると、魔物の反撃を一回許すくらい。ところがハマサソリは、現地の子供が狩って小遣い稼ぎにしてるくらいだって」


 ドーラにハマサソリがいればな。

 後衛職でもレベル二、三になるまで倒せれば、ルーキー冒険者のハードルがぐんと下がるんだけど。


「ルーネの風魔法なら遠くから一発で倒せて、毒を食らう危険もないんだ。初めての獲物としてはこれ以上ないくらいの条件でした。これがあたしが安全だって判断した理由ね?」

「安全なのはわかったが、魔物退治させる必要があったのかい?」

「経験は必要だとゆーのに。社交界でも面白い体験談ネタの一つや二つはいるんじゃないの? 知らんけど」

「む……」


 自分がルーネに何もさせていないことに思い当たったか、眉を顰める閣下。

 封爵大臣とアデラちゃんがその通りですみたいな顔してるわ。


「ちょうど三ヒロくらいの距離のところにハマサソリが一匹いました。小さいから、どこにいるか割とわかりにくいと思ってちょうだい」

「ユーラシアさんが、近くにいるから探して『ウインドカッター』でやっつけようと、教えてくださったんです」

「すぐにルーネもわかったんだ。あれ目で見つけたの?」

「いえ、何となく違和感があって、よく見たらいたんです」

「やるなルーネ。違和感を感じ取ることはすごく大事だよ。その感覚を磨きなさい。いつか危険が迫った時、避けることができるかもしれない」

「はい」


 頷くお父ちゃん閣下。

 閣下がここ施政館の昼食で毒を盛られたのは記憶に新しい。

 ああいうのに気付けるか気付けないかで、人生変わっちゃうこともあるし。

 違和感を察することに関しては、魔物の邪気に晒される冒険者は鍛えやすいですぞ。

 剣術の訓練だけじゃなかなか。


「続きいくよ。ハマサソリを見つけたルーネは短杖を正眼に構えます。風魔法一閃、一発で魔物を仕留めました!」

「表現に迫力が足りない」

「ダイジェスト版だとゆーのに。でもあんだけ狙いが正確なのは大したもんだよ」


 ルーネ嬉しそう。

 練習してたのかもな。

 何気なく閣下が聞いてくる。


「その短杖はユーラシア君のものかい?」

「いや、ルーネの所持品だよ」

「何故ルーネが短杖など持っている?」


 あ、ルーネったら魔道研究所の件も話してないのか。

 しょうがないなー。


「一〇日くらい前だったかな。帝都とドーラの杖職人、どっちの腕が優れてるか対決っていうイベントがあったんだ。二人の杖職人がルーネに合う杖を作って献上して、どっちをルーネが気に入るかってやつ」

「つまりルーネは現在、二本の魔道杖を所持している?」

「うん。短杖は帝都の杖職人が普段使いをテーマに作ったやつだよ。武器所持の法律違反にならないサイズのはずだけど。ルーネ、今も持ってる?」

「はい、これです」


 袖から短杖を取り出すルーネ。

 変なところに隠してるな。


「魔法力の補正大きめで、なかなかの逸品だよ。こんなのが役に立つ場面なんてないに越したことはないけど、世の中何が起きるかわからんじゃん? せっかくもらったんだから常に持ってた方がいいと思う」

「……うむ」


 お父ちゃん閣下が小難しげな表情だ。

 これはルーネが杖のこと話してなかったから拗ねてるんだな?

 めんどくさい。


「杖もらったことくらいお父ちゃんに話しておきなよ」

「だってお父様ったら、何だかんだで文句言いますもの」

「ルーネは分別あるよ。閣下があんまりギャーギャー言ってると、何にも話してくれなくなっちゃうぞ?」

「そ、それは困る! 以後気をつける」


 こんなもんだろ。

 ルーネとお父ちゃん閣下は、もう少し会話が必要だわ。

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