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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1565話:真っ赤なイチゴ

 ――――――――――二五〇日目。


「いい天気だなー」

「ユーちゃん、御機嫌だな」

「吾が主よ、御機嫌であるな」

「何なんだあんた達はもー。その繰り返しはギャグになってないぞ?」


 アハハと笑い合う。

 今日は凄草の株分け日だ。

 いつものように畑番の精霊カカシ、大悪魔バアルと話をしながら作業をする。


「ユーちゃん、そろそろ収穫可能だぜ?」

「イチゴだよね。今日摘んで食べてみるよ」


 フリードリヒさんからもらったイチゴの品種『パウリーネ』だ。

 確かに大粒。

 そして真っ赤でとってもおいしそう。


「実が大きいであるな」

「イチゴってキイチゴしか知らなかったよ。こんな小さな株なのにでっかい実がなってるとビックリする」

「ここの畑はオイラが見てるからいいが、普通の畑なら藁を敷くといいと思うぜ。腐るのや虫害を避けやすい」

「そーか。ありがとうカカシ」


 腐っちゃうと泣けるもんな。

 地面になるイチゴはキイチゴと違う配慮が必要なんだなあ。

 勉強になるわ。


 イチゴは『ランナー』と呼ばれる芽がにゅっと伸びて増えていく。

 実をたくさん収穫するためには、ランナーを切って実に栄養を集めるべきなんだそーな。

 ただしあたし達は苗を増やすことを優先したいので、ランナーを伸ばし放題にしてある。

 イチゴは増やすの簡単そうだから、いずれドーラ中に広めたいが、どこを優先するかと言えば……。


「灰の民の村と『オーランファーム』に分けてやりたいんだよね」


 『オーランファーム』で栽培してくれれば、すぐにレイノス市民に知られるだろう。

 また精霊のいる灰の民の村なら栽培技術には問題がないから、苗を増やすのにも収穫するのにも活躍してくれるだろう。


「夏を無事越えられれば、あちこちに配るくらい十分増えるぜ」

「あ、夏は難しいんだ?」


 そーいやクララもやや涼しく、みたいなこと言ってたな。


「アーベントロート公爵領の夏の暑さはそこまでではないである」

「なるほど。イチゴはどっちかというと帝国向きの作物なのか」

「ドーラの夏はキツいぜ。直射日光が当たると株が弱るから、暑くなってきたら遮光してやってくれ。秋涼しくなったら株を配ってくるといい」

「うん、わかった」

「でもイチゴがドーラに向いてないわけじゃねえぜ。春が温かいから、実はなりやすい」


 いかにもうまそーだもんな。

 ドーラにとって果物は貴重だ。

 ぜひあちこちで増やさねば。


「今日、タルガってとこ行ってくるんだ。帝国の植民地」

「タルガであるか」

「うん、バアルは知ってるか。どんなとこ?」

「騒がしい町である。正門近くは辺境開拓民の、港は貿易商のエリアであり、街中は両者が溶け合うように移行するである」

「へー」


 騒がしい町なのか。

 辺境開拓民と貿易商がともに町に馴染んでるってことだな。

 どっちが欠けてもタルガじゃないんだろう。

 商人と冒険者の村カトマスと印象が被るなあ。


「ユーちゃんが注意しなきゃいけないことはあるかい?」

「主が? 特にないであるぞ。少々のハプニングはエンターテインメントであろうし」

「大悪魔はわかってるなー」


 活気のあるやんちゃな町なんだろう。

 楽しみだ。


「よーし、植え替え終わり! 朝御飯だ!」


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「アリスー、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「あら、いらっしゃい」


 朝食後、本の世界にやって来た。


「今日もいつものようにお肉の補給なのね?」

「いつものように愛と幸せと正義の補給だよ」


 アハハ、そーだ。

 天使国についてアリスにも聞いておかねば。


「アンヘルモーセンっていう天使崇拝の国あるじゃん? サラセニアに貿易制限チラつかせてるって聞いたけど」

「国家認定商人以外のサラセニアへの食料の輸出を絞ってるわね」

「認定商人以外なんだ? 認定商人が食料運んじゃダメじゃなくて?」

「認定商人は天崇教徒だから」


 ははあ、傍からは親切な天崇教徒以外、食べ物売ってくれないように見えちゃう?

 メッチャ嫌らしいことしてるな。

 いや、驚くべきは認定商人以外の行動も縛れるアンヘルモーセンの物流支配力か。

 テテュス内海諸国の中では、やっぱ圧倒的のようだ。


「アンヘルモーセンはどうして食料が豊富なの?」

「隣国のダイオネアとラージャが農業国なのよ。アンヘルモーセンを通して、テテュス内海中に食糧を供給しているわ」

「ふーん?」


 ダイオネアとラージャは天使国とベッタリなんだな?

 帝国産の穀物が内海に流れるとダブつくだろうか?

 いや、別にそれは悪いことじゃないわ。

 人口増えても困んないってことだし。


「寒いところは農業難しいと思うんだけど、ダイオネアとラージャって国は比較的温かいのかな?」

「温暖ではないわ。ガリアと比べると明らかに寒い地域にまでライ麦とソバ、ジャガイモが栽培されているのよ」

「んー? 寒いとこまで栽培できるのは変だなあ。何か理由があるのかな?」

「私ではわからないけれど」


 アリスではわからない。

 つまり品種か土壌か天候かに、知られていない理由がある?

 いずれにせよ現地に行ってうちの子達が調べれば事情がわかりそう。


「サラセニアが虐められるのは何でだろ?」

「それもわからないわ」


 これもアリスが把握できるような根拠はないのか。

 となると結構な機密が隠されている?


「……サラセニアは国内がガリア派とアンヘルモーセン派で割れちゃってるって聞いた」

「大公ボニファツィオ二世殿下を筆頭として、ほとんどの穏健派中道派はガリア寄りよ。一部の急進派と商人達がアンヘルモーセン派閥なの」

「サラセニア国内の主なアンヘルモーセン派の人は?」

「大公の弟ヒラルス殿下とベルナルド騎士団長、ジョコンド商業ギルド長の三人ね」

「思ったよりえらそーな肩書きだなあ」


 どーせアンヘルモーセンから賄賂でも渡されてるんだろう。

 軍事クーデター起こして弟を大公位につけるっていうシナリオが見えちゃうメンツだ。


「でもアンヘルモーセン派の動きは大公殿下も百も承知で警戒してるわ。本来騎士団は大公への忠誠度が高いですし」

「ふんふん」


 じゃあ性急な動きはなくてジワジワ勢力を増そうっていうことか。

 だったらサラセニア~タルガ貿易の開始で潰せそう。


「わかった。ありがとうアリス。愛してるぞ」

「愛してるぬ!」

「まっ!」


 赤くなる金髪人形に別れを告げ、肉狩りへ。

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