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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1525話:伝説の階段を翔け上がる少女

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 毎晩恒例のヴィル通信だ。


「サイナスさんに栄えある権利を与えよう!」

『えっ? いきなりだね。ユーラシアがこう言い出す時は、大体ろくでもないことだと相場が決まっているが』

「何の相場だ」


 ろくでもなくないわ。

 あたしの相場は赤丸急上昇中だわ。

 乗り遅れない内に買っとけ。


『何の権利をくれるんだい?』

「最近あたしは世界的なヒロインじゃん?」

『間違いではないね。自分で言っちゃうところはいかにもユーラシアだとは思うが』

「キャッチフレーズをつけてくれないかなあと思って。『世界を股にかける少女ユーラシア』みたいな」

『なかなかイカすと思うが、ダメなのかい?』

「股にかけるのは可憐な少女の形容として、ちょっとお下品な感じがするの。自分じゃなくて他人につけてもらいたいってこともあるじゃん?」

『帝都の名付け屋の出番だろ』

「ひゃい子か。正攻法ではあるね。でも二つも名付けてもらうと御利益が薄れそうだから」

『何の御利益だ』


 あたしの気分的な発言に対して、ストレートに疑問を呈するな。

 自分でお金を払って二つ名なりキャッチフレーズなりをつけてもらうのは、何か違うんじゃないかと思い始めているってこともあるのだ。


「早く決めてよ。またユー様がおかしなこと始めてって目でクララが見てるんだ」

『え? じゃあ『伝説の階段を翔け上がる少女ユーラシア』?』

「照れる」

『何なんだ君は』

「とても気に入ったけど、自分で言うには恥ずかしいな」

『何なんだ君は』


 何なんだってか。

 そうです、あたしがウルトラチャーミングビューティーです。


「ところでエメリッヒさんはどうしたかな?」

『相変わらず君の話は問答無用で飛ぶなあ。アレク達の協力で、黒妖石に魔力を溜める装置までは完成だぞ』

「もう? 魔力だけ溜めたって何もできないでしょ?」

『溜まっていくのを見ていると面白いらしいぞ?』


 『魔力操作』の固有能力持ちのエメリッヒさんは、魔力の流れが見えるからか。

 魔力の流れなんか見てても面白いもんじゃないと思うけど、まったく研究者は何に興味を持つかわからん。

 度し難い人種だな。


「エメリッヒさんが満足してるならいいや。気分よく研究して欲しいし。あ、そーだ。デス爺にアレクとエメリッヒさんを寄越してくれって言われてたんだ。伝えといてくれる?」

『デスさんに? カラーズに来ないで寄越してくれってのは何の用だろう?』


 まあサイナスさんにも言っとくか。


「内緒だぞ? 『アトラスの冒険者』は廃止されちゃうんだ」

『えっ? いつ?』

「あと四ヶ月くらいで」

『マジかよ。『アトラスの冒険者』って一〇〇年以上も続いてたって話じゃなかったか? 君、何やったんだ?』

「どーしてあたしが何かしたと思うのか。今回は冤罪だぞ?」

『今回『は』無罪だったか』


 えらく納得いかない物言いだけれども、単なる事実という理不尽さ。


「『アトラスの冒険者』運営元の異世界の事情でさ。もうあんまり役に立ってないのに赤字体質とかの理由で、結構前から廃止の議論はされていたらしいんだ」

『もったいない気はするね。ユーラシアが『アトラスの冒険者』になって、実態がよくわかってきたし、役に立つ組織だという認識が出てきてるのになあ」

「まースポンサーの意向には逆らえないからしょうがないんだ。ただ『アトラスの冒険者』がなくなると困っちゃうでしょ? ドーラの治安維持に効いてるってことがあるから。で、代替組織を作ることにしたんだよ。デス爺製の転移の玉と各地への転移石碑を集めたステーションがあれば、『アトラスの冒険者』と似たようなことはできるよ」

『君が黒妖石のドワーフのって言ってたのは、代替組織の設立を見越してたのか?』

「うん」

『さすが『伝説の階段を翔け上がる少女ユーラシア』だけのことはあるなあ』

「あるんだよ。でもマジでそのキャッチフレーズは背中がかゆくなるな」


 あたしを褒め称えるのはともかく。


「デス爺にはちょっと前に廃止のことは伝えてたんだ。代替組織で使用する転移の玉の設計頼んできたの」

『ははあ、転移術の継承を目論んでアレクとエメリッヒ氏を?』

「サイナスさんは察しがいいなあ」


 あたしには魔道の難しいことはわからん。

 魔道オタクどもにお任せしちゃう。

 ドワーフとの連絡役になることと、黒妖石の入手があたしの役割なのだ。


『今日はどうしてたんだい?』

「大したことはしてなかったな。塔の村へ行ったこと以外だと、魔王配下の連絡係の子を一人、ギルドに紹介してきた」

『またよくわからないことしてるなあ』

「魔王があたし達と連絡取りたいことがあるみたいなんだよ。となると、ギルドに伝言してもらうのが確実じゃん?」

『無分別に悪魔を出入りさせると良くないんじゃないか?』

「いや、レダはすごく善良な子なの。摂取する負力は何でもいいらしいから、人間に対しても礼儀正しく接してくれる。人間一般のイメージで言うと天使」

『変わった悪魔がいるんだなあ』


 うむ、レダは天使な悪魔なのだ。


「助けられたから魔王に尽くすみたいなこと言ってたな。ああいう子を知っちゃうと、本当に世間一般の悪魔観は間違ってるなあと思うよ。レダやヴィルは例外なのかもしれないけどね」

『魔王とも友好関係を保ちたいということか』

「だって争いは何も生まないから」

『『伝説の階段を翔け上がる聖少女ユーラシア』』

「聖少女に格上げしたぞ? ますます背中がかゆい」


 アハハと笑い合う。


「うっかり公爵やオードリーが、昨日ラグランドに旅立ったんだ。その船にルーネを連れて遊びに行ってきた」

『ルーネって、主席執政官の皇子の娘なんだろう? 最近その子とつるんでることが多いね』

「あたしが連れ回すようになってから、ルーネは目に見えて生き生きとしてるの。だからじゃないかな。遊んでやってくれって」

『言われてるのかい? 主席執政官閣下に?』

「直接ではないけど」


 マーシャの占いによると、お父ちゃん閣下はドーラに大きく関わるってことなのだ。

 ルーネとも仲良くしておくべき。


「眠いよ。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はどーすべ?

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