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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1510/2453

第1510話:大国同士が疑心暗鬼

 フイィィーンシュパパパッ。


「こ、ここが?」

「ガリア王宮の庭、とゆーか森だよ」

「王宮なのか!」

「王宮なんだぬ!」


 うちの子達とルーネ、ライナー君を連れてガリアにやって来た。

 ライナー君がキョロキョロしてるわ。

 ちょっとは落ち着け。


「敷地がやたらと広くないか?」

「ここガリアの首都ヴァロマの市内ではあるらしいんだよ。でも政治の中心の場とか市街地とかからは結構離れてるんだよね」

「大きいウマがいる。あっ、八本足?」

「スレイプニルですよ」

「スレイプニル? 伝説の神馬?」

「プニル君は神と関係ないって言ってたぞ。神馬って言われることに関しては抵抗ないみたいだけど。おーい!」


 喜んで駆け寄ってきたぞ。

 暇だったのかな?


『新顔がいるな』

「カル帝国の貴族で騎士のライナー君だよ」

「す、スレイプニルと話せるのか?」

「話せるよ。プニル君の言ってることわからんかもしれんけど、プニル君は人間の喋ってること完全に理解してるからね」

「そうなのか……」


 何を愕然としてるんだか。

 あたしのお供で来たんだったら、これくらいのことはあるわ。


「王様帰ってるかな?」

『つい先ほど戻ってきたぞ。高官を一人伴っていた』

「高官を?」


 誰だろ?

 重要な用件か?

 ルーネが言う。


「ユーラシアさん。出直した方が良いのでは?」

「かもしれないけど、あたしには主人公補正ってものがあってね。大体こういうのは関係のあることなんだ。あたしが行くと、いいところに来たって歓迎されちゃう」


 うちの子達が、あるのはフラグ回収能だって顔してる。

 どっちだっていいのだ。

 フラグは今立てた。


「お土産にニンジンを持ってきたんだよ。プニル君、食べてみて」

『うむ、いただこう』


 もしゃもしゃもしゃ。


『……大変に美味いな』

「やっぱプニル君の味覚に合ってるか。今日はあんまり数持ってこなかったけど、次はたくさん用意するね」

『うむ、期待しているぞ』

「じゃねー」


 プニル君と別れ王宮へ。

 ライナー君がブツクサ言う。


「……あれがスレイプニルか。確かな存在感というかオーラがあるというか。貴重な体験には違いないんだが、どうもこう、ちっぽけな出来事に思える」

「仕方ないんだ。比較対象のあたしが偉大だから」


 アハハ。

 あれ? うちの子達は冗談ってわかってるけど、ルーネの目がキラキラしてんぞ?

 警備兵に挨拶する。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシア殿か。よくいらした」

「王様誰かと会談中だと思うけど、あたしが来たよって伝えてくれる?」


 驚いた様子の警備兵。


「コージモ外相が御一緒なのを知っているのか?」

「コージモさんだったのか。いや、王様が高官を連れてたって、プニル君が言ってたから」


 すぐお伺いを立てに行く警備兵。

 議会政堂じゃなくてわざわざ王宮にコージモさんを連れてきたってことは、私事じゃなければかなりの秘密を要する外交上の用件ってことだが?

 あ、もう戻ってきた。


「すぐ通せとのことだ。こちらへ」


 やはりあたしがいた方がいいようだ。

 中へ。


「こんにちはー」

「よく来たユーラシア。そちらは?」

「帝国のツムシュテーク伯爵家の長男で騎士のライナー君。こちらはピエルマルコ王とコージモ外務大臣だよ」


 あ、王様躊躇してるし、ライナー君は遠慮してるじゃないか。

 しょうがないなー。


「ライナー君にはここで見聞きしたことは喋るなって言ってあるし、まあルーネのお父ちゃんのドミティウス主席執政官にしか漏れないと思っていいよ。その上で語ってちょーだい」

「ハハッ、ユーラシアは話が早いな。実はカル帝国がテテュス内海に軍艦を就艦させるという情報が入ったのだ。知っていたか?」


 ラッキー!

 ビンゴだ。


「ちょうどその件で相談しに来たんだよ。アンヘルモーセンがサラセニアに進出しようとしてるらしいじゃん?」


 苦々しい顔になる王様とコージモさん。


「内海が荒れるんじゃないかってことで、帝国は新造艦一艦を就役させるよ。同時にツェーザル中将がタルガに派遣される。目的はあくまでタルガの権益を守るため、と言ってたよ」

「何だ。一艦だけなのか?」

「であればタルガ防備のためで間違いないでしょうな」


 数は知らなかったらしい。

 安堵の表情になる王様とコージモさん。


「で、あたしが来た理由ってのが、ガリアがどういうつもりなのか知ること。主席執政官閣下とクンツ軍務大臣から、王様に聞いてこいってゆー要請を受けました」

「どういうつもり、とは?」

「正直に言うぞ? 何が何でもサラセニアをガリアの影響下に置きたいのか、港の使用権さえ認められればサラセニア自体はどうでもいいのか。それともガリアとアンヘルモーセンの間に密約でもあるのか。ガリアの腹がわからないってことだったんだ。言える範囲でいいから教えてよ」

「言える範囲も何も、サラセニアは我がガリアの友好国だ。テテュス内海への出口でもある。手放すなど考えられん」

「りょーかーい。閣下に伝えときまーす」


 王様が笑う。


「情報をもたらしてくれて助かった。カル帝国こそがアンヘルモーセンと結託して内海支配を目論んでいるのではないかと憂慮していたのだ」


 なるほど、ガリアから見てもアンヘルモーセンの動きはゴリ押しに近いから。

 バックに帝国がいるかもと考えていたのか。


「帝国は昨年末からドーラ・ソロモコ・ラグランドと外での面倒事が続いたから、今テテュス内海に構う余裕はないと思うぞ?」

「損害はなかったのであろう? 軍事的余裕はあるのではないか?」

「軍事的余裕じゃなくて政権支持率の余裕がないの。今帝国は厭戦ムード気味なんだ。戦争すれば支持率が下がっちゃうじゃん? 次期皇帝を狙う主席執政官閣下に、これ以上支持率下がることは許されないから」


 次期皇帝を狙ってるから人気を下げられないという視点はなかったか、目を瞬く王様。

 帝国はわざわざ得意分野でないテテュス内海を、軍事的にどうにかして波風を立てる気はないってことだよ。


 しかしアンヘルモーセンという帝国にもガリアにも直接関係のない国の動向で、大国同士が疑心暗鬼に陥ってるのは面白いなあ。

 あっちでもこっちでも本音に近い話を聞けるあたしの立場って、割と面白くね?

 国際関係って難しいものと思ってたけど、ひょっとしたらあたし好みかもしれない。

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