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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1501/2453

第1501話:温泉村ノヴォリベツ

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 温泉村ノヴォリベツにやって来た。

 あたしとうちの子達、イシュトバーンさん、ルーネ、フィフィの、自分で転移できるヴィルを除けば計七名だ。

 フィフィの執事がついて来なかったのは意外だったが、気を使ってくれたのかもしれない。

 今日は特に危険があるわけでもないし。


 行ったことない場所でもヴィルを使って転移できるというのはすげえ便利だなあ。

 しかしあたしは暇じゃないので、世界地図を見ながら片っ端から行ってみようという気にはさすがにならない。

 愉快なイベントを用意してくれてるところじゃないとな。


「ユーラシアさん。私もヴィルちゃんをぎゅーしたいです」

「三人でぎゅーしようか。フィフィもおいでよ」

「わかりましたわ」

「「「さんにんでぎゅー」」」

「ふおおおおおおおおお?」


 よしよし、いい声で鳴いた。

 ヴィルは可愛いのう。

 あれ、イシュトバーンさんが羨ましそうな顔してら。

 ヴィルをぎゅーしたいんじゃなくて、ぎゅーされるヴィルが羨ましいんだろうけど。


「フィフィリア様、このノヴォリベツという村は落ち着いたところですね」

「ええ。ルーネロッテ様。泊まりのお客さんは朝に一風呂浴びて帰る方が多いようなのですわ。ですから今くらいの時間は一番すいているんですのよ」

「へー、いい時間に来たな」


 ルーネとフィフィは、お互いに名前くらいは知っていたようだが、ほぼ初対面のようだ。

 様付けで呼び合っているのがおかしい。

 フィフィが皇族であるルーネに対し様付けなのは当然として、ルーネも苦労してドーラに渡り、冒険者として活動しているフィフィを立てているのかな?

 あるいは単にフィフィの方が年上だからかもしれんけど。


「こんにちはー」


 こじんまりした村の門横に立っている男に声をかける。

 愛想のいい壮年の男だ。

 門番というより客引きかな?


「へい、温泉の村ノヴォリベツにようこそ!」

「おっちゃんもひょっとしてビレッジネームテラーなの?」

「おっ? お嬢さん、ビレッジネームテラーを御存じですかい? あっしはカトマスで修行を積んだ、れっきとした認定ビレッジネームテラーですぜ!」

「修行とかあるんだ? 認定制度は知らなかったけれども」


 わからんみたいな顔してるルーネとフィフィにイシュトバーンさんが説明してら。

 ノヴォリベツへようこそって言うための人だよ。

 あたしも修行とか認定とかわけわからんけれども、心意気だよ心意気。


「あんた達は宿泊かい? 日帰りかい?」

「日帰りなんだ。昼食後くらいまでいるつもり」

「じゃあ正面の大浴場ロビー受付へどうぞ」


 ぞろぞろ。

 鄙びた集落に似合わない、大きい建物だなあ。

 受付はあそこか。


「こんにちはー」

「こんにちは。御入浴ですか?」

「そうでーす」

「何名様ですか?」

「えーと、ヴィルは温泉入る?」

「入らないぬよ?」

「じゃあ七名で」


 支払いをすます。


「ではこちら、桶・湯浴み着・髪留め・石けん・タオルのセットを七人分です」

「ありがとう」

「左手に小仕切りがございます。そこで各人が身体を洗い、湯浴み着に着替えてから浴場へどうぞ。小仕切り手前に鍵付きロッカーがあります。着替えの服や荷物等をお入れください。鍵は手首にかけるなどしてなくさないようにしてくださいね」

「おおう、説明聞くだけで気分が高まるねえ」

「あはは。食事は右手にございますフードコーナーか、温泉奥の商店街の方へどうぞ。宿や土産物屋も商店街にございます。またお弁当の申しつけやチドメグサなどの消耗品はフードコーナーで扱っております」

「はーい」

「予定変更でお泊りになった場合、宿に当てがなければ当カウンターで斡旋いたしますよ。お気軽にお尋ねください」

「わかった。ありがとう!」


 おんせんおんせんうれしいなっと。


「ちょっと待った! 温泉の前に一枚描かせてくれ」

「湯浴み着姿じゃないんだ?」

「そいつはあとのお楽しみだぜ」


 お楽しみらしい。

 表紙はさほどえっちな絵にしないんだったか?

 あれ? イシュトバーンさん一体何枚の絵を描くつもりなんだろ?


「フィフィリア嬢、こっちだ」

「はい」


 縁側で裸足で横座りか。


「口元を扇で隠すフィフィは久しぶりだなあ」

「女性らしいです」

「そ、そうですの?」


 恥ずかしそうなフィフィ。

 とゆーか相当色っぽいポーズだぞ?

 だからイシュトバーンさんのえっちじゃない基準は参考になんないのだ。

 字を覚えたばかりの子供にも読ませたい本なのになあ。


「絵を描き終わるまで、軽く商店街冷やかしてくるよ。三〇分後くらいに帰るね」

「おう」


 うちの子達とルーネを連れ商店街へ。

 あれ、クララどうしたの?

 結構珍しい植物が生えてる?

 ほうほう、新芽は苦味があるけど食べられるんだ。

 苦いってどれくらい?

 魔法の葉くらいかな?

 そんな食べられないレベルじゃないって?

 なるほど、ノヴォリベツならではのものもあるんじゃん。


「ユーラシアさん、お土産物を売ってますよ」

「どらどら、あたしのお眼鏡にかなうものを売ってるか、じっくり検分してやろうじゃないか。眼鏡なんかかけてないけれども」


 ふむふむ、ほとんど木製品か布製品だな。

 ノヴォリベツで作ってるのか近隣の集落に外注出してるのか。

 あたしがお土産っていうとほぼお肉だから、何となく食べ物を想像していた。

 けど考えてみりゃ、ここは塔の村ができるまで西域街道の果ての村だったんだな。

 食べ物を持ち帰っても傷んじゃうかも。


「人形が可愛いです」

「本当だ。結構手がかかってるな」


 ルーネは人形を一つ買うようだ。

 こらこらクララダンテ。

 どーしてあんた達は邪神像みたいなのを欲しがるんだ。

 ルーネが買うような可愛い人形にしておけばいいのに。

 しかもクララとダンテじゃ好みが違うし。

 買ってくの?

 アトムは何、木刀?

 あんたパワーカード以外の武器はよー使わんだろうが。

 まったくわけがわからんけれども、まーいいや。

 せっかく遊びに来た記念だからね。

 支払い支払いっと。


「……おかしいな。木刀持ってると謎の安心感がある。どうしてだろう?」

「あはは、何ですかそれ?」

「温泉地に木刀は必須のものかと思えてきたよ。ん?」

「あれは獣人の方ですか?」

「うん。知ってる人だ。おーい、ゲレゲレさーん!」

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