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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1390話:身内の犯行でした

「期待に応えて美少女精霊使いユーラシア参上!」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルを優しく受け止めてやる。

 その様子を羨ましそうに見つめるリキニウスちゃんとルーネ。

 何故だ?

 微笑ましそうに見つめろ。


 帝国からラグランドに航行途中の使者の船に転移して遊びに来たが、特別リキニウスちゃんとルーネはどうってことなさそう。

 うむ、船長さんの話を聞いていたのか。

 普段聞けない話って興味あるよね。

 しかし?


「うーん、ウルトラチャーミングビューティーの優れたカンによると、船長さんには心配事があるようだね。どうかした?」


 笑顔にやや苦悩を見せる船長さん。


「わかるか? 両殿下をラグランドに届けるまで、もちろんあらゆる危険に対処するよう心得ている。心配事などいくつもあるが、今一番の懸念は、この船が追跡されているんじゃないかということだ」

「追跡?」


 穏やかじゃないね。

 皇族が二人乗ってる船だぞ?


「ラグランド行きの航路だから、たまたまかもしれない」

「んー? ラグランドで蜂起の最中だとゆーことは、船乗りの間で共有されてる認識じゃないのかな?」

「もちろんタムポートの港湾運輸局で公表されている、最重要注意事項に該当する」


 タムポートの役所がしっかりバッチリアナウンスしてるんだ。

 さすが帝国はしっかりしてるなー。


「ラグランド貿易は蜂起後停止されているはずだし、大体貨物船じゃない。巡航速度よりやや速いスピードにしてみたが振り切れないんだ。皇子皇女が乗船されているので護衛がつけられたのかもしれないが、そんな話は聞いていないし」

「あ、ごめん。ひょっとしてあたしの父ちゃんかもしれない」

「何? どういうことだ?」

「ドーラ政府の首脳の一人なんだけどさ。ラグランド行きの航路を知りたいみたいなことだったから。調べるね」

「調べるって?」

「ヴィル、後ろから船がついて来てるんだって。父ちゃんだったら通信繋いでくれる?」

「わかったぬ!」


 消え失せるヴィルにリ殿下が興味津々だ。


「いなくなった。悪魔は皆、瞬時に移動できるのですか?」

「いや、できる子の方が少ないよ。あたしの知ってる悪魔でワープできるのは三人だけ。その中でヴィルは一番ワープが上手なの。下手な子だと魔力をムダに使っちゃうんだ」

「面白いです」

「興味深いですね」


 頷くリ殿下とルーネ。

 ワープは固有能力ではないんだよな。

 悪魔の中で使える者が現れるってことみたい。

 赤プレートが反応する。


『御主人、父ちゃんだぬ!』

「ヴィル、ありがとう。やっぱ父ちゃんだったか」

『おう、ユーラシアか。久しぶりやな』

「父ちゃんが追っかけてる船の中にいるあたしだよ。不審船扱いされてるぞ?」

『そやったか。船長はんはおるか? 代わってくれい』

「うん」


 船長さんに赤プレートを渡す。


「代わりました。当船の船長ミラン・ボックです」

『ドーラ船団長オリオン・カーツや。迷惑をかけたようで、えろうすんまへんな。距離は充分取ったつもりやったですが』

「ハハハ。当方も神経質だったかもしれません。巡航速度までスピード緩めますので、どうぞ近付いてください」

『気遣いおおきに』


 二隻になれば航行中の安全度は増すしな。

 心配は一つ減った。


「父ちゃんはラグランドまで行くの?」

『いや、直前までやな。さすがに反乱中の国に入港はでけんわ』

「だよねえ」

『帰りはゆっくり直接ドーラに向かおう思っとる』


 ドーラ~ラグランド間の新しい航路を引こうということか。

 未知の海域には何があるかわからない。

 危険だが、ドーラ~ラグランド間の貿易のためには必要なことだ。

 父ちゃん頑張れ。


「気をつけてね」

『わいのセリフや。ユーラシアはラグランドに関わっとるのやろ?』

「うん。『アトラスの冒険者』でラグランドのクエストが出ちゃったからね。帝国とラグランドの両方から御褒美をガッポリもらう予定なんだ」

『おお? わいも一枚咬ませて欲しいわ』


 アハハ。

 まああたしも帝国も、目一杯穏便にラグランドを落ち着かせるつもりだよ。

 父ちゃんはその後貿易でしっかり儲けてちょうだい。


「あたしは危ないことないって。じゃねー」

『おう、またな』

「ヴィル、ありがとう。こっち戻ってきてね」

『はいだぬ!』


 一件落着。


「船長さんごめんね。身内の犯行でした」

「ハハッ、犯行って。結果的には護衛がついたようなものだよ。安心できる。しかし何故ドーラ船がラグランド行きの航路を知りたがるんだ?」


 帝国の植民地であるラグランドは、帝国本土としか貿易してないからな。

 ドーラとは一見無縁に思える。


「ここは勉強になるから、殿下とルーネも聞いててね」

「「はい」」

「ヴィル再び参上ぬ!」

「おお、タイミングバッチリだったね。芸人としての心構えができてきたかな?」

「御主人の仕込みだぬ!」


 笑い。

 ヴィルをぎゅっとしてやる。

 いい子だね。


「殿下とルーネに問題でーす。ラグランドが圧政に耐えかねて蜂起しました。帝国政府の対応としては何が考えられますか?」

「「えっ?」」

「考えることは重要で、しかもタダだぞ? 頭は使わないと損なのだ」


 船長さんが面白そう。


「ほう、冒険者も思考とシミュレーションは大事か」

「大事だねえ。でも頭使い過ぎるとぷしゅーってなっちゃうから、そんな時は魔境に気分転換しに行く」

「魔境……?」


 魔境です。

 多分想像通りの場所だよ。

 あたしにとっては気分転換の場所兼エルドラド。


 リ殿下が言う。


「ええと、ラグランドと仲良くする?」

「殿下いいね。今回特使として殿下が派遣されるのは、話し合って仲良くしようねっていう帝国側の意思表示だよ。殿下から仲良くするという意見が出てくるのは合格点でーす」


 リ殿下嬉しそう。

 可愛いやつめ。


「他の対応としてはどうかな?」

「軍を送って制圧する、ですか?」

「ルーネ正解。言うこと聞かないやつは叩き潰してしまえという、シンプルな解決手段だね。帝国がこれまでよくやってたこと。他はどうだろう?」

「他……交渉と軍事以外ですか?」

「放っておくって選択肢があるんだ。ラグランドは帝国本土から大量に穀物を輸入してるほど、食については弱点がある植民地だよ。放っときゃ降参する可能性は高い」


 放っときゃってのは言い過ぎか。

 工作が必要ではある。

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