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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1386話:タムポート港にて

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 可愛いやつめ。


 杖職人ナバルのおっちゃんと合流して、タムポートへ転移したはずだが?

 建物の中だな。

 おっちゃんが片眼鏡をクイクイしながら言う。


「ここはどこかね?」

「港の使われていない倉庫の中ぬよ?」

「うん、ヴィルは偉い!」


 もう帝国でもあたしのことを知ってる人は多いだろうけど、やっぱり悪魔を使って転移すると目立つから。

 できれば変に注目されたくないもんな。

 ヴィルに帽子を被せ、肩車して外へ。


「おお、懐かしのタムポート港よ! 私は戻ってきたぞ!」

「なかなかかっちょいいセリフだね。やっぱ感慨があるかー」


 タムポートの港はメッチャ広いな。

 さすがに帝都の玄関だけある。


「今日はラグランド行きの使者の船が出るのであろう?」

「と、聞いたんだけど」


 皇族が使者として出発するんで、たくさん見物人がいるのかと思ってたわ。

 全然そんなことなかった。

 混乱すると警備も大変だからかな?

 事前報道はなく、事後の発表のみなのかもしれない。


「人集まってるね。あそこかな?」

「おそらくそうだぬ。貨物船じゃない綺麗な船だぬ」


 なるほどな。

 近付いていくと……。


「何やってんの?」

「あっ、ユーラシアさん! いいところに!」


 グレゴールうっかり公爵がアデラ植民地大臣に食ってかかってる。

 どうせ船に乗せろと言ってるんだろう。

 うっかりさんの従者達も困っとるがな。

 マジで予想通りのイベントで笑える。


「花束も持たずに女性に言い寄るのは、スマートじゃないと思うの」

「む? 紳士らしくなかったか。すまぬな、アデラ嬢」

「いえいえ、お気になさらずに……」

「紹介しとくね。うちのヴィルとドーラ一の杖職人ナバルさんだよ。こちらは元ドーラ総督のグレゴール公爵とアデラ植民地大臣」

「公爵様と大臣閣下であらせられましたか。私はナバルと申します。お見知りおきを」


 あれ、うっかり公爵が杖をじーっと見とるがな。

 興味があるのかな?


「黄金皇珠の魔道杖か。知性と感性がうねるようなラインに凝縮されている。素晴らしい!」

「公爵様はお目が高いですな」

「ナバルのおっちゃんは実用的かつかっちょいい杖が得意だよ。じっちゃんも注文出すといい」

「ふむ、では我が屋敷の方へ……いや、それどころではないのだった!」


 側近に耳打ちされて正気に戻るうっかり公爵。

 ちっ、誤魔化せなかったか。


「今日はリキニウスちゃんの見送りに来たんでしょ? いざこざはリキニウスちゃんの門出に相応しくないぞ? 縁起でもない」

「しかしリキニウスちゃん一人では寂しいだろう? わしもついて行きたいのだ」

「ダメだとゆーのに」

「何故だ! ルーネロッテ嬢が許されてわしがダメなのは納得いかん!」


 しょうがないなあ。

 お付きの人含めて内緒話モード発動。


「ルーネは人質だぞ?」

「……人質? 不穏なワードではないか」

「リキニウスちゃんとプリンスルキウスは、次期皇帝争いで主席執政官閣下のライバルでしょ?」

「えっ……ま、まあそういう側面はある、とも言えるな」

「あるんだよ。現実を認識しなよ。じゃあ二人を使者としてラグランドに遣わしたあとで、艦隊を送ってラグランドを怒らせるとどうなる?」

「……リキニウスちゃんとルキウス殿は拘束される?」

「間違いなく捕まっちゃうねえ。で、火炙りか首ちょんぱになっちゃう。主席執政官閣下が自分の娘であるルーネを同行させるのは、そーゆー不届きなマネはしませんよっていう意思表示だぞ? つまりルーネの存在は、リキニウスちゃんの安全のために必要」


 愕然とするうっかり公爵。

 アデラちゃんが小さく頷く。


「ルーネロッテ嬢の同行に、まさかそんなシビアな意味があるとは……」

「アデラちゃんだってわかってたと思うけど、現役閣僚として言えることと言えないことがあるじゃん。察しなよ」

「る、ルーネロッテ嬢が必要なのはわかった。しかしわしが行ってはいけないことにはならぬであろう?」

「だからダメだとゆーのに」

「何故だ!」


 自分のキャラを把握してないやつはこれだから。


「ラグランドが戦争状態にあること忘れてるだろ。今は蜂起の規模は小さく抑えられてるよ? でもいつ何があって火がつくかわかんないんだ。危険な場所であることには変わりない」

「だ、だからこそわしがリキニウスちゃんを救うために……」

「おいこら、何を言っているんだ。そーゆーのはスーパーヒロインたるあたしの役目だ。じっちゃん今までの人生を振り返ってみなよ。アクシデントがあった時、率先してズブズブ嵌り込むのがじっちゃんの役どころでしょ?」

「え? う、うむ……」


 自分でメッチャ失礼なこと言ってる自覚あるのに、お付きの人達まですげえ共感してんじゃねーか。

 うっかり公爵の日常が察せられるわ。


「じっちゃんは同行しても何の役にも立たない。変事の際はあたしが転移でリキニウスちゃんとプリンスルキウスとルーネを連れ帰るつもり。だけどもしじっちゃんが一緒に行くとすると、多分ドジ踏んで何かやらかすでしょ? とっとと逃げなきゃいけない時に、リキニウスちゃんにお爺様を助けてってウルウル迫られたら断れないだろーが。つまりリキニウスちゃんを危険に晒す時間が長くなる」

「……」

「じっちゃんを連れていかない理由はわかった?」

「……うむ」


 よーし、いいだろう。

 内緒話モード解除。

 あとでまた気が変わってガタガタ言い出すかもしれないけど、とっくに船出ちゃってるから問題なーし。


「アデラ嬢。貴女の立場も考えず、ムリを通そうとして悪かった。許してくれ」


 ぺこりと頭を下げるうっかり公爵。


「いえいえ、私こそグレゴール様の申し出を聞き入れることができませず、すみませんでした」

「じっちゃんはお偉い公爵様にも拘らず、すぐ頭を下げられるのは好感持てるなあ。ところで帝都の公爵家のお屋敷は皇宮に近いの?」


 物わかりよく引き下がってくれたから、ちょっとサービスしてやろう。

 あたしが使者の船に飛んだ時、リキニウスちゃんの声くらい聞かせてやるわ。


「む? 近いぞ。皇宮正門から歩いて五分とかからん」

「ヴィル、屋敷にいるってわかれば、じっちゃんとコンタクト取れそう?」


 どう見てもうっかり公爵にパワーなんかありゃしないがどうかな?

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