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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1362話:優先する考えがある?

「……と、急に叫びだし、セウェルス兄上は発狂してしまいました。後ほど担当の医師から、詳細な診断書を提出させましょう」

「やはりセウェルスは使えぬか」

「到底ムリかと思います」


 施政館執政官室で、主席執政官閣下に経過の報告だ。

 フロリアヌス殿下アインハルト君と、アデラという植民地大臣が同席している。

 フ殿下の説明に、閣下は特に意外そうでもないな?

 まさか施政館にガルちゃんが現れて報告したとも思えん。

 ならば元々閣下は第三皇子についてあらかじめ調査させており、かなり現在の状態を把握していたことになる。


「ユーラシア君には苦労かけたね」

「本当だわ。セクハラされ損だったわ!」

「よく切り抜けた」

「おいしい御飯を食べさせてくれないと許さないぞ?」

「ハハハ、用意させよう」


 『よく切り抜けた』、というのも意味深だ。

 何で高レベル者であるあたしが危機に陥っていたと思うのか?

 閣下はセウェルス第三皇子が『強奪』持ちであることを知っていたのかな?

 であれば証人として騎士二人を同行させたことも、ガルちゃんに見張りを命じたことも頷けるが……。


「ん? ユーラシア君どうした」

「……今頃になって貞操の危機に身震いが」

「腹が減っただけだろう?」

「閣下はひどいなー」


 アハハと笑い合う。

 第三皇子が『強奪』持ちであることは、他人の考えていることがわかるリモネスさんでさえ完全には把握していなかった。

 となれば誰も知らなかったんじゃないかってくらいの個人情報だが、閣下はどこで知ったんだろうな?


 ……いや、閣下が知っていたと決めつけるのは早計か。

 あるいは、たまたま第三皇子を見た鑑定士から情報を得たということかもしれんし。


「セウェルスが女性に節操がないことはわかっていた。だからセウェルスがユーラシア君に襲いかかるようだったら、すぐ助けろと二人には言い含めてあったんだ」

「そーだったのかー」

「ユーラシア君に反撃されると、セウェルスが哀れなことになりそうだからな」

「おお、閣下は兄弟の情に厚いね」


 再びの笑い。

 ふむ、閣下はやはり第三皇子の固有能力を知っていて、あたしが被害に遭わないよう配慮していてくれたらしい。

 だったらあたしに教えといてくれればよかったのに。

 閣下のいけず。


「ドミティウス閣下。ラグランドへの特使の人選はいかがいたしましょう? 私がまいりましょうか?」

「いや、君は予の近くにいてもらわねば困る」

「おー閣下やるなあ」


 俯き顔を赤らめる植民地大臣アデラちゃん。

 栗色ショートの髪の、活動的な印象のある女性だ。

 現場がラグランドなのだから、植民地大臣が交渉に当たるのは当たり前のような気がする。

 でもやっぱ皇族の誰かを派遣することに拘るのかな?

 皇位継承権一位の皇子を蹴落としたんだから、あとはスムーズに和平交渉を終えることを考えりゃいいと思うんだが。

 ちょっと閣下が何考えてるかわからん。


「若い女性が大臣ってすごくない?」

「君だって若いじゃないか」

「あたしはほら、スーパーヒロインだし」


 政治家でもないし。

 ってゆーか、政治家は男の人の仕事ってイメージがあったよ。

 アインハルト君が説明してくれる。


「アデラ大臣は才媛として知られていてな」


 ドーラ独立後に植民地大臣として抜擢されたらしい。

 あれ? じゃあ前大臣はドーラ独立で責任取らされたのか。

 大臣の能力関係なくない?

 シビアな世界だなあ。


「年若の女性で、しかも平民ということで、就任当初は風当たりが強かったとも聞くよ」

「でも優秀かそうでないかなんて、年齢性別や身分は関係なくない?」

「もっともだね」

「だが頭の固い連中に理解してもらうのは難しいんだ」


 アデラちゃんがニコッと笑う。


「でもユーラシアさんの活躍が知られるようになってから、すごく楽になったんですよ。プレッシャーが抜けたというか」

「意外なところにあたしの功績が」

「ユーラシア君の活動は派手で、誰にでもわかりやすいだろう?」

「おまけに新聞が味方だ。功績が周知されやすい」


 あたしがスーパーヒロインでウルトラチャーミングビューティーでミラクルシックスティーンだから、若い女性が認められる土壌ができつつあるということみたい。

 いいことっちゃいいことだけど。


「あたしの影響力大きくない?」

「大きいよ」

「大きいですよ」


 ヴィルがいたら『大きいぬよ?』って言いそう。

 さらにバアルがいたら『おっぱいは小さいである』とか余計なこと言いそう。

 まーあたしの影響力の大きい小さいはあるかもしれんけど、ボーナスが出ないことには変わりない。


「アデラ大臣が存在感を増せるかは、今後の組閣人事にも関わるんだ。ユーラシア君、仲良くしてやってね」

「うん、もちろん」


 アデラちゃん嬉しそう。

 インウェンみたいな優等生っぽいところのある人だな。

 そーいやインウェンにしばらく会ってないから、時間できたら顔見に行くかな?

 閣下が言う。


「ラグランド統治については、見直しをアデラから提言されていたのだ。今回の蜂起は、対策を後回しにした予の失態だ」

「いえ……」


 アデラちゃんがウルウルしてるけど、深刻に考える必要はないぞ?

 どーせ閣下の頭の中には、ラグランドの反乱を叩き潰して政権の威信を示すプランもあったはず。

 たまたまソロモコ遠征と重なって困っただけだろ。


「特使については本日中に定める。ユーラシア君、明日の午前中に施政館へ来られるかな?」

「大丈夫だよ。特使決まったらラグランドに伝えてくるね。セウェルス殿下が特使の有力候補って聞いて、ホルガーさんが首捻ってたからさあ」

「ハハハ、よろしく頼むね」


 第三皇子がダメでも特使はすぐ決まるらしい。

 第三皇子を使えないケースもシミュレーションできてたみたい。

 当たり前っちゃ当たり前か。

 アデラちゃんが行こうかって言った時、即却下したんだから。


 ……植民地大臣であるアデラちゃんを派遣しないのは何でだろ?

 女性平民大臣のアデラちゃんに功績を挙げさせて、地位を強化してやるいい機会だと思うのにな?

 アデラちゃんを見限っているわけではない。

 が、それ以上に優先する考えがある?


「さて、いい時間だね。昼食を用意させよう」

「やたっ! 今日の報酬だ!」

「フロリアヌスもアインハルト君も食べていくんだろう?」

「「いただきます」」

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