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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1347話:来ちゃった

 ――――――――――二二三日目。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 朝からパッフェルの宮殿にやって来た。

 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 フリードリヒ公爵を呼びに行ってもらってる間に、警備員が話しかけてきた。


「それはいつでもやるのかい?」

「いつでもどこでもやるんだぬ!」

「警備員さんもぎゅーしたい? 絵面がちょっとなー」

「ハハハ。可愛い悪魔ちゃんでいいなあ」


 うむ、悪魔は皆それなりに可愛いけど、うちのヴィルは特別だ。

 いい子だからか。

 あ、出てきた。

 パウリーネさんとパスカル君もおるがな。


「ユーラシア君、おはよう」

「フリードリヒさん、おっはよー。えーと、パウリーネさんとパスカル君もガータン行くのかな?」

「オレは行きたい!」

「私も行ってみたいです。その前にお手紙お願いしてもいいですか?」


 プリンスルキウスとのラブラブ通信か。

 キュンキュンするわー。


「キュンキュンするぬ!」

「ヴィル。プリンスに手紙渡して、その後ガータンにビーコン置いたら連絡くれる?」

「わかったぬ!」


 ヴィルの姿が掻き消える。

 感心したようにフリードリヒさんが言う。


「見事なワープだね」

「昨日、悪魔ガルムに会ったんだ。ガルちゃんもワープできる子だったけど、ヴィルほど上手くないよ」


 フリードリヒさんの目が用心深く細められる。

 ガルちゃんが第二皇子付きの悪魔であることは、先日伝えてあるのだ。

 あたしが第二皇子とかなり込み入った話をしてきたことは理解しただろう。

 いや、ソロモコの件で第二皇子に了解してもらわなきゃいけなかったし、ラグランドの件ではあたしが仲裁に入るから当然なんだけど。


「どんな悪魔だい?」

「普通に扱いやすい子だった。悪魔にしては珍しく、食べる子なんだよね。お肉が好きって言ってたから、今度おいしいの食べさせてやろうと思って」

「ハハハ、面白い」


 あたしがガルちゃんをコントロールできることは伝わったろ。

 同時にさほど危険度の高くない悪魔であることも。

 バアルみたいな大胆な子や、あるいは性格の悪い子が第二皇子の側付きだったりすると何やらかすかわからん。

 ガルちゃんくらいの小物の方が大それたことしなさそうだから、世界の安定のためにいい。


『御主人! ガータンにビーコンを設置したぬ!』

「ありがとう。そっち行くね」


 新しい転移の玉を起動し、四人でガータンへ。


          ◇


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 あんたはいい子だのう。

 辺りを見渡していたパウリーネさんがしみじみ言う。


「私、ガータンは初めてなんです。いいところですねえ」

「姉上、何もないところだぞ」


 うむ、ド田舎だ。

 父ちゃんがこんなところを領地にしていたというのに、ドーラをド田舎の山ザルのとコケにしたフィフィのメンタルには恐れ入る。

 しかしパスカル君がもう一度ガータンに来たがるのは意外だったな。

 もう懲りたと思ってたわ。


「おーい、お頭!」


 知った顔発見。

 お頭スイープとお手玉にした煽り男だ。

 あっ、お頭は身体のデカさとレベルで気付いたかな?


「そちらは……ひょっとして公爵フリードリヒ様?」

「そうそう。フリードリヒさんと娘のパウリーネさん。こちらは領民候補のスイープさんと煽り男だよ」

「煽り男?」

「ボビーだよ!」

「ごめん、名前知らなかった」


 フリードリヒさんがお頭に興味を持ったようだ。

 フリードリヒさんもまた元騎士で、相手の強さを測れるくらいのレベルがあるから。


「君は軍の経験でもあるのかい?」

「いや、辺境開拓民だったんでさあ。つまんねえイザコザに首突っ込んじまって、市民権を剥奪されてこの有様で」

「お頭のレベルは辺境開拓民として鍛えたのか」

「なかなかの男だな」

「うん。こういう人が空の民として埋もれちゃうのもったいない」


 むず痒そうなお頭。

 素直に褒められてろ。


「煽り男ボビーのとこの集落ではお酒造ってるんだって。ヘルムート君が大変結構だったって言ってたよ」

「ほう? 口の奢ったヘルムートが?」

「ヒョウタン酒としてブランドにしたいから、造っただけ買ってくれることになったんで」

「ヒョウタン酒?」


 ゼムリヤのヒョウタンの実を加工した容器がどうのこうの。


「ほう、興味あるな」

「値段は大丈夫かな? 買い叩かれてない?」

「いや、結構いい値で買ってくれることになったんだ。ありがたく儲けさせてもらうぜ」

「わかってるね? 欲をかいて売り惜しむと、今度はヘルムート君にスパッと切られて、別の誰かが造ってるお酒に乗り換えられちゃうぞ? するとあんたの浮かぶ瀬はなくなる」

「お? おう」


 ヒューと口笛を吹くフリードリヒさん。


「ユーラシア君。君、ヘルムートの嫁に興味はないかい?」

「ヘルムート君にはリリーがいるじゃん」


 お似合いだと思うわ。

 それにガータンの男爵じゃ、ドーラに来てくれそうにないしな。


「オレの嫁はどうだ!」

「パスカル君の? うーん、色々頑張れ」

「おう、頑張るぞ!」


 頼りない気はするが、男の子は何年か経つとわからんしな?

 お買い得かもしれん。


「ところで二人はここで何やってたの?」

「ベンジャミン領宰と打ち合わせがあるんだぜ。俺は空の民のまとめ役を仰せつかったことについて。ボビーは酒造りの援助について」

「すぐ来るから待っててくれって言われたんだ」

「じゃ、あたし達もここにいればいいな。よく働く感心な二人にはプレゼントをあげよう」

「何だ? カード?」

「ドーラ名物パワーカードだよ。これは『ホワイトベーシック』っていう種類で、装備してると回復魔法『ヒール』と治癒魔法『キュア』を使えるようになるという優れもの」

「「えっ?」」


 驚く二人。


「貴重なものだろう? いいのか?」

「いいよ。つまんないケガや毒なんかで領民人口が減っちゃうのは損だからね」


 ヘルムート君とベンジャミンさん来た。


「こんにちはー」

「ユーラシア殿。父上も?」


 何故か恥ずかしそうなフリードリヒさん。


「来ちゃった」

「来ちゃったって、こーゆー時に使う言葉なんだっけ?」

「ハハッ。ベンジャミン殿に挨拶しておきたくてね」

「どうせ忙しいでしょ? ちょっと顔見に来ただけなんだ」

「さようでしたか。私がベンジャミン・ホープでございます」

「うん、ヘルムートをよろしく」


 握手。

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