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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1332話:『黄金の左足』と『天翔ける少女』

「いやー、スカッと晴れてるじゃん」

「今から一ヶ月くらいがいい時期じゃの」

「あめがふってないでつ! きもちいいでつ!」


 マウ爺のクエスト転送先である、ゴブリンのいる森と草原にやって来た。

 ここは雨が降っておらず、以前来た時より緑が多くて気持ちがいい。

 草を靡かせる風が爽やかだ。

 キョロキョロしていたチトー君が言う。


「この森にゴブリンが?」

「うむ、樹上生活を営んでいるゴブリンがおる。道々罠が仕掛けてあるゆえ、気をつけるのじゃぞ」

「そうそう。ポーラもよく聞いててね。ジーク君は落とし穴に嵌って糞の芳しさを備え、『黄金の左足』と呼ばれるようになったんだ」

「呼ばれてないヨゥ! 右足だったヨゥ!」

「レノアは右足を引っ張り上げられて宙吊りになってたよ。それ以来『天翔ける少女』の異名がついた」

「聞いたことないですけど格好いいですねっ! でも吊り上げられたのは左足だったのですっ!」


 アハハ、左右が逆だったか。

 どうでもいいけど。

 こーなると同じパーティーメンバーのチトー君にも異名をつけてやりたくなるな。

 ゴブリンの罠に引っかかってみる気ない?


「掛け合いはええじゃろう。行くぞ」


 森へ足を踏み入れる。

 マウ爺が先頭じゃ、誰も罠に引っかからないじゃん。

 まことにつまらん。

 あ、ゴブリン出てきた。


「キュイ!」

「おー、ゴブ君じゃないか。久しぶり」

「見分けがつくのかヨゥ?」

「姿形見ただけじゃわかんないけど、親しげな感じと仕草で何となく。わっしょーい!」

「キュイキュイ!」


 高く放り投げてやったら大喜びだ。

 人間は大体ビビるんだけどな。

 ゴブリンは純粋だなー。


「かわいいでつ!」

「可愛いぬよ?」

「何なんだあんた達は。で、ゴブ君、何があったの?」

「キュイキュイ!」

「角のある大きな魔物が五体出た? 森の中の居住区近くに?」

「キュイキュイ!」

「直接見たわけじゃないから、それ以上わからない?」


 ジーク君が聞いてくる。


「ゴブリンの言ってることがわかるのかヨゥ?」

「わかるんだよぅ。あたし『閃き』って固有能力持ちなんだ。レベル上がったら、言葉通じなくてもあらかた何言ってるか理解できるようになった」

「師匠はレベルいくつなんですかねっ?」

「今一三一か二くらい」

「「「えっ?」」」

「あたしはレベル上限が一五〇になる固有能力が発現してるんだよね。手持ちのギルドカードじゃ九九までしかレベル計測できないから、正確なところがわかんなくて」

「すごいですねっ!」

「んーでも悪いこともあるよ」

「例えば何です?」

「力加減がどーもうまく利かないんだ。肩揉んであげようとすると嫌がられる」


 笑いごとじゃないわ。

 軽く蹴ってもすっ飛んでくし。

 マウ爺が言う。


「嬢よ。いよいよ草食魔獣のセンが濃厚じゃぞ」

「そーなの?」

「うむ、森の中で五頭の群れとなるとな」


 草原だと群れで狩りをする肉食魔獣がいるが、森だとオオカミの類くらいだという。

 角があって身体が大きいとなると、まず草食魔獣ということらしい。

 やったぜ!


「楽しみだなー」

「キュイ?」

「心配しなくていいぞ? あ、お肉の保存の心配は必要だな」


 ゴブリンの集落へ行く。


          ◇


「もう皆集まってるね。こんにちはー」

「「「「「「「「キュイキュイ!」」」」」」」」

「やっぱり何言ってるかわからないヨゥ」


 考えるな、感じろ。

 広場に集まってるゴブリン達が歓迎してくれてるのはわかるだろうが。

 しかし皆緊張気味だな。

 相当凶暴なやつが出るんだろうか?


「角ありの身体の大きな魔物が五頭出たって話を聞いたよ。合ってるかな?」

「キュイ!」

「キュイキュイ!」

「シカみたいなやつだって? やたっ! 草食魔獣で決定!」


 高レベルの肉食魔獣や亜魔族だったりすると危険だ。

 考える間もなく襲ってくることがあるから、ポーラを帰らせることも考えないといけなかったが、草食魔獣なら問題あるまい。

 ポーラにもお肉ハンターの狩りとゆーものを見せてやれるな。


「キュイ?」

「何を喜んでいるのかって? 草食魔獣だぞ? イコールおいしいお肉!」


 あれえ?

 ゴブリン達が皆解せぬ面になったぞ?


「師匠、これ言ってること通じてるのですかっ?」

「通じてるけど、草食魔獣イコールおいしいお肉ってのに賛同してもらえないんだよね。どーしてだろ?」


 あんた達前にコブタ肉大喜びで食べたじゃないか。

 草食魔獣だったら多分、同様に美味いぞ?

 マウ爺が言う。


「ゴブリンでは大型の魔獣は狩れまい。肉として認識しているのは、小型の動物と鳥だけなのではないか」

「ゴブリンは草食魔獣の美味さを知らないのか。実に不幸だね」


 そもそも大型の草食魔獣を自力で狩れるなら、あたし達に助けを求めるなんてことはなかったわ。

 美味さを教えてやれば、大型の魔獣でもどうにかして罠にかけ、お肉にしようと考えるかもしれないな。

 ゴブリンは割と賢いから。


「キュイキュイ!」

「問題の魔獣、昼間は草原にいるけど?」

「キュイキュイ!」

「夜に襲ってくる?」

「夜に休む場所を求めて森に入るんじゃないでしょうか?」


 チトー君の意見にマウ爺が頷く。


「おそらくそうじゃろうの。森に侵入するとゴブリンの警戒網に引っかかる。騒ぎ立てると向こうも興奮して襲いかかってくる、ということなのではないか」

「ふーん。夜に寝かせてやるだけなら共存できそーだね? でもお肉と共存を考えても仕方ないか」


 ユー様はお肉に人権認めませんよねって顔をクララがしてるけど、認めるわけないだろ。

 大体お肉に人権っておかしいだろ。


「じゃ、倒しに行くぞー! いる場所に見当つく人、連れてくから立候補して」

「「「「「「「「キュイ!」」」」」」」」


 おお? 半分以上手挙がってるじゃん。

 ゴブリンもエンターテインメントに飢えてるのかな?

 一人でいいんだよ一人で。


「おいこら、ちょっとは考えろ。あたし達がいない間、村が魔獣に襲われないとも限らないんだぞ? 戦える人はなるべく残って」


 結局道案内一人とゴブ君がついて来ることになった。

 何でゴブ君を同行させるんだって?

 強いて言えば和み係かな。


「じゃ、クララお願い」

「はい、フライ!」

「わあ、すごいでつ!」

「「キュイキュイ!」」


 飛行魔法でフワリと浮き上がると、ポーラとゴブリン二人は大喜びだ。

 浮かれていないでしっかり案内してね。

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