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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1326話:お肉記念日

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「えー本日はお日柄もよく……」

『雨降ってたじゃないか』

「お日柄とゆーのは暦の上での吉凶の話だわ。お天気関係ないわ」

『暦の上で吉日なのか? ユーラシアがカレンダーなんか気にしてると思えないが』

「ユーラシア暦では毎日が吉日だね」


 アハハ、準備運動代わりの軽い掛け合いだってばよ。


「今日はお肉の日だった」

『幸せそうな言葉の響きだね』

「わかる? この味が、いいねとあたしが言ったから、今日のこの日はお肉記念日」

『記念月の方が、幸せ度アップだぞ?』

「あっ、サイナスさんやるなー」


 記念年じゃ語呂が悪いもんな。


「雨の日は海の王国にお肉を食べに行くじゃん?」

『当たり前のように言われても』

「で、午後からドワーフの集落行ってお肉の宴」

『えっ?』


 うむ、これには解説を加えねばなるまい。


「今日雨なのはこの辺だけなんだよ。西の方や魔境は降ってなかったの」

『天気のことは聞いてないよ。もうドワーフにコンタクト取りに行ったのかい? 黒妖石の確保もまだなんだろう?』

「まだだけど、ドワーフに会っておきたかったんだもん」


 明後日から忙しくなりそうなのだ。

 ドワーフと親しくなるのに時間かかるかもと思ったし。


「注文出してすぐ受けてくれるとは限らないじゃん。まず仲良くなっとかないと」

『道理だな。ドワーフは気難しいと聞くが』

「偏屈なフリしてたな。腕の安売りはしないみたいなツンを見せてたけど、お肉の暴力の前にあえなく陥落だよ」

『ははあ? 肉の魅力には誰も勝てないんだな?』

「勝てる人今までに見たことないな。お肉はチャーミングでバイオレンスだから」

『何か君の形容語みたいだな』


 ほんとだ。

 お肉に匹敵すると言われると嬉しいな。

 おっぱいにもお肉がつくといいんだけど。


『ドワーフとの商売も普通に行えそうなんだな?』

「仕事を依頼するのは大丈夫だな。ただ向こうさんがお肉とお酒以外何を欲しがってるのかは、まだよくわかんない」


 そーゆーとこで意地っ張りを発揮して、欲しそうな顔をなかなか見せないという可能性はあるかもしれないな。

 お肉には勝てないに決まってるからどうにでもなるけど。


「アルアさんのことも聞いたんだ。そしたらドワーフの長老が知ってた」

『知ってた、くらいの認知度か。では今でも交流を持ってるわけではないんだな?』

「ないんだろうね。アルアさんの婆ちゃんがアリアさんって人でさ、パワーカードの始祖の直接の弟子なんだ。アリアさんがアルアさんを連れて、新天地を求めてドワーフの集落を飛び出したんだって」

『すると現在、ドワーフの間でパワーカードは?』

「今日行った集落では使われてないって。でも他の集落では使われてるの見たことあるそうだから、今でも職人いるかもしれない」

『楽しみかい?』

「楽しみだね。こっちにはない、変わった発想のカードが生まれてるかもしれないし」


 エルフの方でも『クールプレート』『ウォームプレート』みたいな毛色の変わったパワーカードが独自に発達していた。

 今でもドワーフにパワーカード製作技術が受け継がれているなら、ユニークなカードがある確率は高い。


「で、ここから本題だけど」

『え? 肉が本題じゃなかったのかい?』

「そう思いたくなる情熱はひっじょーにわかるけれども」


 お肉はいつ何時であっても常に主役だと思いがちだもんな。


「本題ってのはちょっと違うか。ちょっと意外なことがわかったから、サイナスさんにも教えてあげようかと思って」

『もったいぶるね。何だい?』

「塔の村のデカい塔だけど、あれドワーフが作ったものではないんだって。外観内装はドワーフが弄ったらしいけど」

『……興味深い話だが、ドワーフ以外に大規模な石造建築を作れる存在というと?』

「遥か昔に異世界からの旅人達が作ったと伝えられてるそーだよ」


 塔のダンジョンの、登ったら階段消える転移みたいな仕組みはおかしいと思ってた。

 異世界人が作ったもんだと思えば納得できる。


『つまり、『アトラスの冒険者』の運営母体の世界が作った塔?』

「多分。サイナスさん、どう思う?」


 いろんな解釈ができる事実だ。

 賢いサイナスさんの意見を聞きたい。


『まあ『永久鉱山』を生かすためだろうな』

「こっちの世界の監視のためとか、移住するための準備とかいうセンはないかな?」

『あるかもしれないが、それは主目的じゃないだろう。でないとあの場所である説明がつかない』


 サイナスさんの言う通り。

 しかし何故『永久鉱山』の場所に塔を建てたのか?


『もし塔がなかったらどうなる?』

「『永久鉱山』は魔力が豊富だから、当然強い魔物が溢れちゃう」

『魔物を閉じ込めるためと考えるのが妥当だな』

「そお? むーん?」


 一々塔に入らなきゃいけないとなると、素材の回収効率が悪くなるよな?

 集落を近くに作る目的があったのかもしれないけど、あんだけの塔を作るコストに見合わない気がする。


「しかもせっかくの塔を放棄しちゃったのもわからない」

『政権が代わって、方針も刷新されたからなんじゃないか? 塔はかなり昔に建造されたんだろう?』

「あ、そーか」


 たわわ姫の話からすると、異世界からの干渉というか探検や開発等の活動は、『アトラスの冒険者』以前からあってもおかしくない。

 向こうの世界の政変の事情に合わせて、こっちの世界へのアプローチの仕方も変えた。

 結果、塔は放棄された?


「辻褄は合うな。何でアイテム回収を不便にしてまで、魔物を閉じ込めたかったのかはわからんけど」

『向こうの世界には、魔物退治できる人がいないのかもしれない』

「えっ?」


 そんなことある?


『一〇〇年も監視つけるくらい危険視してる旧王族も、処刑しないで追放に留めているんだろう? 野蛮なことは好まれていないのかも』

「サイナスさん、冴えてるなー」


 考えてみりゃ、異世界に魔物がいるかいないかは聞いたことがなかったわ。

 とりあえず魔物を閉じ込めといて、素材回収用の人員をあとで育てる予定だったのかもしれない。


「スッキリしたから寝る。サイナスさん、おやすみなさい」

『ハハハ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日も雨か。

 ガータンへ行くかな。

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