第1322話:寒天スイーツを買いに
フイィィーンシュパパパッ。
「ウルトラチャーミングビューティーじゃないか」
「そう、あたしことウルトラチャーミングビューティーだよ。よろしくウルトラチャーミングビューティー番のノア君」
「字面がうるさいんだが」
ほこら守りの村から帰ってきたあと、イシュトバーンさん家にやって来た。
イシュトバーンさんったら、即行で飛んできたぞ?
「おう、来たか精霊使い」
「こんにちはー。これどういう仕組みであたしが来たこと伝わってるの?」
「鈴が鳴るんだぜ」
「鈴?」
あたし番のノアが紐を引っ張ると、その先についてる鈴が鳴るということらしい。
変な仕組みを作ってるなあ。
「今日はどうした?」
「昼頃から雨らしいんで、『サナリーズキッチン』のテイクアウトスイーツを買いに来たの」
「はん?」
わからなかったか。
雨が降ると海の王国へお肉を食べに行くのどうの。
「……とゆーわけで、女王はまだ寒天スイーツを食べてないんだよね。せっかく海底産の優れた材料を使ってるんだから、食べさせてあげたいじゃん? お土産に持って行こうと思って」
「何だ。うちの料理人に作らせりゃよかったじゃねえか」
「いや、特別製じゃなくてさ。一般の人が普通に食べられるクオリティがこんなもんだってのを知ってもらいたいんだよね」
「なるほどな。おう、ノアついて来い」
「はい」
『サナリーズキッチン』へゴー。
◇
「で、愉快な話があるんだろ?」
道々話しながら行く。
チラッとイシュトバーンさんを確認するのを忘れない。
ここんところの足取りはかなりしっかりしてきているので、かなり筋力がついてることを窺わせる。
『サナリーズキッチン』はやや遠いけれども、問題はあるまい。
いざとなったら『遊歩』で飛べるしな。
「あるある。明日の夜御飯食べに来ていいかな?」
「おう、来い。楽しみにしてるぜ」
「イシュトバーンさんにしか相談できそうにないこともあるんだよね」
「ほお?」
えっちな目で見るな。
恋愛相談じゃねーよ。
「ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」
「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」
「ごくろーさま」
新聞記者ズでした。
最近現れるのは予定に入っている。
出てこないとイベントを損した気持ちになるくらい。
「「ひどいじゃないですか!」」
「えっ? 何がよ?」
「大使ルキウス様の婚約のことです!」
「帝都の新聞記者には直接取材させたとのことじゃないですか! 差別です!」
「あっ、そのことか」
婚約のことはアドルフに聞いたのかな?
別にあたしが差別したわけじゃないんだが。
「うーん、レイノスの人はノーマル人以外に差別意識あるじゃん?」
「ノーマル人ファースト的な傾向は強いですね」
「この件悪魔が関わってるんだよ。プリンスと婚約相手のパウリーネの間の手紙のやり取りは、悪魔が仲介してたの」
「悪魔? ユーラシアさんの僕に悪魔がいるという話は聞いたことがありますが」
「すげえ可愛い幼女悪魔だぜ。悪魔といっても悪さしねえんだ」
「会ってみる?」
「「ぜひ!」」
脇道の見えにくいところに移動し、赤プレートに話しかける。
「ヴィル、聞こえる?」
『聞こえるぬ! 感度良好だぬ!』
「あたしのところに静かにこっそりおいで」
『わかったぬ!』
新聞記者ズが興味津々だ。
「その赤いペンダントが悪魔との連絡手段だったんですか」
「うん。悪魔のエネルギー源は負力っていう感情なんだよね。この赤プレートを通じてあたしの感情がヴィルに送られているから、ヴィルはいつも元気に活動できるの」
「そんな仕組みだったのかよ?」
「あ、イシュトバーンさんも知らなかったか。プレートの色は悪魔によって違うらしいよ。ソロモコという島国にいるゾラスって悪魔のプレートは黄色だって言ってた」
「「「「へえ」」」」
悪魔だけで記事書けちゃいそうだな。
あ、来た。
「御主人、来たぬよ?」
「よしよし、いい子だね。帽子被っててね」
「はいだぬ!」
ぎゅっとして肩車する。
「こっちの二人は新聞記者さん達だよ」
「よろしくお願いしますぬ!」
「「これはこれは御丁寧に」」
「うちのヴィルは普通の悪魔と違って、好感情が好みなんだよ。嫌われたり敬遠されたりっていう感情がダメだから、レイノスでは連れて歩けないんだよね。ヴィル、この二人はどうかな? 気持ち悪くなったりしない?」
「大丈夫だぬ!」
「ヴィルの合格が出ました。今後新聞記者さん達がヴィルに会うことを許可します」
「「ありがとうございます!」」
新聞記者ズすげえ嬉しそう。
ついでにヴィルも嬉しそうというウィンウィン。
記事にしてくれて、ヴィルへの偏見がなくなるといいなあ。
「ヴィルちゃんは可愛いですねえ」
「可愛いぬよ?」
「すかさず中身のない会話始めんのやめろ。せっかくの悪魔だよ? あんまりない機会だろうし、何か聞きたいことないの?」
「他の一般的な悪魔はどういうものですか?」
「強大な魔力をコンパクトな身体に凝縮することができてこそ、最高位の魔族の証なんだって。だから見かけはどの子もちっちゃくて可愛いよ。でも基本的に悪魔はこっちから悪感情搾り取ることしか考えてないじゃん? 大体皆クソ生意気だよ。ヴィルみたいな好感情好きのいい子は稀有な例外」
「精霊使いみたいに、悪魔と付き合うことは考えない方がいいぜ。食い物にされる」
「やはり難しいですか?」
「難しいねえ。でも悪魔は認められたり褒められたりすることは好きなんだよ。悪魔に何言われても気にせず褒め続けることができる鋼のメンタルを持ってるなら、うまいことやれる気もするな?」
いや、でもレベルもスキルも特殊な固有能力も持たない普通の人が、悪魔と交渉できるかなあ?
特殊な事情か条件がないとムリなんじゃないかな。
「ユーラシアさんは悪魔の機嫌を取るなんてことしてないですよね?」
「今まであたしが会った高位魔族のレベルは四〇~八〇の間くらい。それ以上のレベル持ちになると、悪魔も一目置いてくれるんだよ。あたしは悪魔とケンカしたいわけじゃないから、対等に話そうとするじゃん? 尊重してやれば普通に付き合えるな」
「「なるほど」」
「御主人はパワーが強いから特別ぬよ?」
「もし悪魔で困ったことあったら、あたしに連絡してよ」
「わかりました。ありがとうございました!」




