第1321話:どーらにおおきくかかわります!
――――――――――二二〇日目。
「うーん、雨降りそーだね」
今日は楽しい凄草株分けの日。
畑番の精霊カカシ及び大悪魔バアルとお喋りしながらの作業だ。
しかしどんより。
とっても雲行きが怪しいのだ。
最近晴れが続いてたので、ひと雨欲しい頃合いではあったが。
空を見ていたダンテが言う。
「昼頃からレインね。トゥモローもね」
「今日明日雨かー」
明後日は帝国施政館行きが決まっているが、今日明日は特に予定を入れていない。
どうしようかな?
「ユーちゃんよ。今の作業には問題ないぜ?」
「早く植え替えを進めるべきである」
「バアルは意外と堅実だな」
いや、合理的だとしっかりした考えになるのか。
悪魔が皆真面目ってことじゃなくて、バアルの性格なんだろうけど。
「ダンテ、これ場所はどこが雨になるの?」
「レイノスからアルハーン平原にかけてね。トゥモローはウエストもレインになるね」
「魔境は?」
「モーマンタイね」
ドーラ大陸南部の海岸寄りが雨ということらしい。
となると?
「……午前中にお肉を狩ってきて、海の女王のところで昼食だな。午後ドワーフの集落へ行ってみようか。顔見知りになっておきたい」
ドワーフの集落は所謂西域よりも遥か西だ。
今日なら雨に降られない。
「ドワーフであるか」
「おっ、バアルと何か関わりがあるのかな?」
首をかしげるバアル。
「吾も昔はやんちゃしていたである。吾がライバルヒバリのパーティーがドワーフの塔をホームにしていたゆえ、ドワーフとも摩擦があったのである」
「ふーん、ヒバリさんはバアルのライバルなのか」
「しかし以降は接触していないである。ドワーフの寿命からして、吾を直接見知っている者が残っているとは思えぬ」
「ふむふむ、なるほど」
ドワーフの寿命はノーマル人とほとんど変わらないと聞いたことがある。
ヒバリさんの時代から関わってないなら、ほぼ忘れられてるだろうな。
油断は禁物だが、ただバアルを披露しなきゃいけない理由もないから。
「ドワーフの集落にも、変わった作物があるかもしれねえよ?」
「あり得るね」
「どうであろう? ドワーフどもは肉と酒を好むであるが、野菜の類を好むとは聞かぬである」
「でもお酒造るための作物があるはずだし。ま、お肉をお土産にすれば間違いないな」
ドワーフは職人気質で偏屈らしいけど、お肉好きに悪い人いないし。
「さっさと凄草を植えちゃってくれよ」
「あいあいさー」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
肉狩りのあと、ほこら守りの村にやって来た。
昼に海の王国へ行くまでは時間があるので、何となくマーシャに占ってもらおうかなと思ったのだ。
魔境でもよかったけど、ほこら守りの村もいいところなんだよね。
時々様子を見に来たいというのもある。
「こんにちはー」
「おお、精霊使い殿。いらっしゃい」
「これ、お土産でーす」
仕事キッチリお肉ごっそり。
「いつもすみませぬな」
「いいんだよ。お肉は正義だからね。マーシャに会いに来たんだけど、この時間だとほこらかな?」
「いや、雨が降りそうですから、家だと思いますぞ」
「ありがとうございまーす」
村長に別れを告げ、土地神様の碑を参ってからマーシャの家へ。
「こんにちはー」
「あっ、ゆーしゃさま!」
マーシャが飛びついてくる。
相変わらずヴィルに行動が似てるな。
ちなみにヴィルをマーシャに会わせたのは一度きりだ。
マーシャの感情は気持ちいいが、魔力は弱い聖属性を帯びているらしく、悪魔にとってはちくちく痛むんだそーな。
ヴィルが変に痛快感に目覚めても嫌だし、会わせないことにした。
「骨、お土産だよ。お肉は村長さんに渡してあるからね」
「ありがとうなのです! ほねのすーぷはおいしいのです!」
「まあ、すいません」
「マーシャ借りるね」
散歩に出かける。
今日は雲のせいで陽の光が差さないのが残念だ。
でもほこら守りの村にはのんびりした優しさが感じられて好き。
「ここは魔物いないのかな?」
「りたのちょうしがよければ、とおざけられるですよ」
「そーかー。残念だね。魔物にもおいしいやつがいるんだよ」
御神体だもんな。
リタのパワーは何だかんだで村人のためになっている。
以前悲しみの感情に飲まれかけていた時には、参道にユーレイが出現していたこともあったけれども、最近は問題ないらしい。
少女霊リタも安定しているということだろう。
「ゆーしゃさまはどうしたですか?」
「うん、マーシャに占ってもらおうかと思って来たんだ」
「なにをうらないましょうか?」
「えーと……」
何と言われると難しい。
ラグランドのクエスト以降、忙しくなる漠然とした予感があるのだ。
今は嵐の前の静けさというか。
「……知り合いに『魔魅』っていう、悪魔に好かれやすくなる固有能力持ちの人がいるんだよ。あたしとその人との関わりがどうなるかを教えて欲しいな」
おかしな聞き方になってしまった。
まあでも今あたしが関わっているのは、ラグランド含めて帝国方面の案件が多い。
『魔魅』持ちかつ主席執政官である第二皇子との関係が拗れることなければ、概ね順調なはず。
「はい、では、わたしをじっとみてください」
マーシャをじっと見つめる。
涼やかな魔力があたしの頭の中に入り込んでくる。
マーシャの髪の毛も随分伸びてきたなあ。
これからの季節は麦藁帽子が似合うかも。
「こんなんでました!」
マーシャが元気よく叫ぶ。
「だいきちです! ながいつきあいになります! さいしゅうてきにそのひとは、どーらにおおきくかかわります!」
「えっ?」
どーゆーことだろ?
第二皇子が皇帝になるなら長い付き合いになるかもしれないが、それは大吉って言えないだろうし。
いや、統治能力は確かだ。
バアルが影響を及ぼさなくなりゃ、全く問題ないってことなのかな?
しかしドーラに大きく関わるとゆーのは何でだ?
第二皇子のドーラへの執着は、あたしが考えてたよりずっと強い?
「うーん、わからん。でもマーシャの言うことだから重要なんだよね。覚えておくよ」
「だいきちだからへいきなのです」
「ごもっとも」
どう転んでも大吉が保証されてるなら、何てことないわ。
マーシャの占いはすげえ安心感あるな。
「ありがとう、マーシャ。また来るよ」
「ゆーしゃさまのぜんとにさちあれっ!」
転移の玉を起動し帰宅する。




