第1304話:帝国艦隊に乗り込む
クララの飛行魔法で上空高いところから帝国艦隊を見下ろす。
長射程の武器があるかもしれんけど、いきなり撃ってくることはないだろ。
どうせ当たんないし。
「近くで見ると一層大きい軍艦だなあ。帝国すごい」
飛空艇もデカいと思ったけど、もっとデカいわ。
国力のある国は違うなー。
「ビッグアンドストロングね」
「マジでそう。一艦建造するのにいくらくらいかかるんだろ?」
「ユー様はすぐにお金の方に思考が向きますねえ」
「おゼゼ大事だぞ?」
貿易船もでっかいやつだと、たくさん積める分輸送コストが下がるんだろうなあ。
欲しいけど、でっかい船が必要なほど今のドーラには輸出品がないのだ。
悲しいことだなあ。
ナップザックから青の民に注文を出していた白旗を取り出す。
「何ですホー? 旗?」
「使者として乗り込むために作った白旗だよ。ただの白旗じゃ寂しいから、フクロウの絵を描いてもらったんだ。そしたらフクちゃんにそっくりだった」
「あっ、本当ですね」
狙ったわけじゃないけど、可愛いデザインなのだ。
「フクちゃんは曰く付きのアイテムを集めてるんだったね。この旗今日しか使わないからあげるよ。帝国艦隊を口先で追っ払う時に使った、伝説のアイテムになるぞ?」
「ありがとうございますホー!」
ハハッ、フクちゃん嬉しそう。
「さて、やるぞお!」
バサッバサッと大きく旗を振る。
「おっと、甲板でも旗振ってやすぜ」
「よしよし、意図は通じたね。行こうか」
フワリと甲板に降りると、明らかに乗務員が引いてる。
まあわかる。
仮面被ってるのが四人プラスフクロウだもんな。
どんな怪しい団体だ。
「妾は精霊の巫女、そしてこれなるは神の使いであるぞ。神霊の島ソロモコにいかなる用件であるか、伺いに参った」
ユー様また精霊の巫女設定ですねって顔をクララがしている。
まあね。
乗員は明らかに驚いたような顔してるか?
あっ、ソロモコはコモンズの通じない島だと思ってたからか。
あたしソロモコ語は『うんばー!』と『おにくびみらー!』しか知らんわ。
「ちなみに先ほどの爆発は、ソロモコに伝わる天雷の秘術である。これなる黒船に術が通じぬことは、神託により存じておる。が、彼の術を海に落とせば津波が起きるのじゃ。さよう心得るがよい」
「しばらくお待ちくだされ!」
甲板長らしい人の指示に従いしばし待つ。
さて、どう出るかな?
津波のヤバさに気付いたらしい魔道士っぽい人が、明らかに青い顔してるわ。
ドルゴス宮廷魔道士長が話しといてくれたんだろう。
「使者の皆様、中へどうぞ」
入れてもらえるようだ。
中は飛んで入るには狭いね。
フクちゃんを抱っこして連れていく。
会議室か何かかな?
広い部屋に通される。
「自分が当艦の艦長ブライアン大佐です。お見知りおきを」
「うむ。こちらこそよしなに」
仮面被っててもレベルは伝わるらしい。
侮るでもなく、さりとて恐れる風もない。
最近会うなり『化け物』って言われることが多かったから、こういう丁寧な対応は好感持てるわ。
さすがに帝国軍の艦長さんともなると人物だなあ。
ドーラに欲しい。
「ただ今艦隊司令官ツェーザル中将をお呼びしています」
「そのツェーザル中将なる御仁が艦隊の頭で間違いないかの?」
「はい、さようでございます」
この艦は旗艦じゃなかったか。
当たり前だな。
得体の知れない一行を旗艦に通して暴れられたら困るだろうし。
艦長が探りを入れるように聞いてくる。
「素晴らしい意匠の仮面ですな」
「艦長殿は見る目があるの。妾の仮面は特別製じゃ」
「ソロモコでは皆がそのように仮面を被っておるのですか?」
「うむ。夜を支配する神の信仰があっての。フクロウが神の使者とされておるのじゃ。であるからして、住民はフクロウを模した仮面を使用するのが常である」
「なるほど」
……あれ? おかしいな。
何か疑われてるっぽいぞ?
今のとこ全部本当のことしか話してないのにな?
「……ソロモコはコモンズの通じない国だと聞いていましたが」
「真である。コモンズはほぼ通じぬ」
「巫女殿は例外ですか?」
「妾は他所から遣わされた者ゆえ」
「ははあ?」
艦長がなおさら怪しげなものを見る目になった。
コモンズを話すの他所から来てるのっておかしいからか。
でも本当なんだってば。
たまたま『アトラスの冒険者』でソロモコのクエストを発給されたからだぞ?
ドカドカ足音が聞こえる。
来たかな?
「……やはりお主だったか」
「中将こんにちはー」
魔道士から津波の危険性については聞いたらしいな。
先に究極魔法見せといた方が話が早いから。
ツェーザル中将が苦々しげな顔をしている。
「話があるのだろう?」
「あるある。中将とお話するのが今日の目的」
「まず仮面を取ってはどうだ?」
「そーさせてもらう」
仮面を外すと視界が広くなってスッキリ。
メッチャ出来のいい仮面なのかもしれんけど、あたしは仮面の国の人じゃないから。
相変わらず中将はデカいなー。
「ソロモコの風習で、仮面を着けてないと失礼ってのは本当なんだよ。でも美少女フェイスが仮面で隠されちゃうのは、人類の損失だよねえ」
「司令官閣下、彼女らは一体?」
「先日ヤマタノオロチを退治したドーラの冒険者がいただろう? あれだ」
「えっ? あのユーラシアという?」
「そうそう。あたし達の活躍を知っててくれてありがとう」
「道理でバカげたレベルだと……」
「おいこら、バカげたとは何だ! 謝罪を要求する!」
形だけ頭を下げる艦長。
「うちの子達は精霊だよ。こっちからクララ、アトム、ダンテね。それからフクロウの姿してるのは、ソロモコ在住の悪魔ゾラスだよ。あたしはフクちゃんって呼んでる」
「悪魔だと?」
疑いの目を向けないでおくれよ。
悪魔と聞いちゃ心穏やかじゃないのかもしれんけど、フクちゃんは良識派だぞ?
あたしも事態を混迷化させる悪魔だったら連れてくるわけない。
エンタメのためなら混迷化を辞さないだろうって?
細けえことはいーんだよ。
「ソロモコの現状をわかってもらうには、フクちゃんの存在を認識してもらわないといけないんだ。だから連れてきた」
「よろしくお願いしますですホー」
フクちゃんが喋ったのを見てぎょっとする二人。
あれ、悪魔ってジョークかと思ってたのかな?
レベルでおかしいって判断してよ。




