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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1297話:一番忙しそうな人なのに

 ――――――――――二一七日目。


『オルムスだよ。ユーラシア君だね?』

「そうそう。あたしことウルトラチャーミングビューティー」


 ヴィルに行政府と連絡を取ってもらったらオルムスさんが出た。

 一番忙しそうな人なのに悪いなあ。


「『ウォームプレート』と『クールプレート』の今月分ができる予定なんだ。受け取ったら行政府に持ってくね。昼頃になると思う」

『ハハハ、昼食を用意しとけということだね?』

「オルムスさんは察しがいいなー」


 ぜひおいしいのを用意しといてください。


『今日は帝国の商人が来る予定なんだ。ユーラシア君が昼頃来るなら会えるんじゃないかな』

「やたっ! ナイスタイミング! 新しい輸出用魔法の生産ラインが立ち上がりそうなんだ。まだ試運転だけど、スキルスクロール月一〇〇本は注文受けられるって言ってたよ。商人さんに効果を見てもらって、注文あったらもらおっと」

『盾の魔法だね? 報告は受けてる』

「うん。水魔法ほどの差し迫った必要性はないと思うけど、それなりに有用だと思う。もうちょっと生活魔法もラインナップ増やしたいね」


 水魔法だって今は売れてるけど、行きわたってくると需要は落ち着くだろう。

 数で勝負したい。

 こーゆーのはアイデアなんだよな。

 帝国でどういう魔法が求められてるかってのは、ドーラ人じゃわからんところがあるからな?

 誰か教えて欲しいわ。


「オルムスさん、じゃーねー」

『ちょっと待って。今日は何人で来る予定だい?』

「御飯食べないヴィルを入れないで五人だよ。スクロール製造の責任者を一人連れてく」

『わかった。また後でね』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 そこへはケスを連れてやって来た。


「……塔の村?」

「そう。紛うことなき塔の村。君は今塔の村に足を踏み入れているのだ」

「ええ? 強調されなくたってわかるぜ」


 わかるなら何を不思議がってるのだ。

 大体魔法陣の上に乗った時、『塔の村』ってアナウンスがあったろーが。


「姐さん、行政府行くのと塔の村に、何の関係があるんだ?」

「おおう、説明してなかったか」


 サイナスさんに言ったし、オルムスさんにも伝えたから、ケスにも説明した気になってたわ。


「今後のドーラにとって、帝国への輸出品を増やすことが重要だって話はしたじゃん?」

「ああ、聞いた」

「輸出用のパワーカードってのがあるんだ。今月分ができてるはずだから、受け取って行政府に届けるの」

「商売関係だったのか」


 納得しましたか?

 さすがにケスの顔合わせだけで昼御飯をごちそーになっちゃ悪いから。

 パワーカード屋へゴー……あれ?


「フィフィじゃないか。おっはよー」

「あら、貴方達。御機嫌よう」

「何ニコニコしてるんだよ。高飛車令嬢らしさが欠片もなくなっちゃったぞ?」

「最初からそんなものはないのですわっ!」


 アハハ、バリバリにあったわ。

 あたしの記憶力は『おサルさん』言われたのを忘れるほどお粗末じゃないわ。

 

「執事さん、ガータン旧臣のリストありがとうね。すごく役に立った」

「役に立った、ですか。となるとベンジャミン殿を?」

「うん。ヘルムート君の家来になってくれた」

「それはようございました」

「あとはベンジャミンさんの裁量で家臣を増やしてると思う」

「では間違いないと思います」


 ホッとした様子の執事。

 ガータンの様子は気がかりだったのだろう。

 いい人だな。


「マテウスはガータンの出身なのよ」

「あっ、そーだったんだ?」


 所作が洗練されてるから帝都の人かと思ってた。


「ガータンで農地広げる際の障害になってた硬い石あるじゃん?」

「はい、黒妖石ですね」

「何だ。執事さんも石の正体知ってたのか」

「黒妖石って何なの? マテウス、知識を披露してもよくってよ」


 執事の知識は信頼できる。

 黒妖石が帝国でどういう扱いなのか、正確なところが知りたいな。


「カル帝国本土の山間部で普遍的に産出する、黒く均質な鉱石です。魔力に対する親和性が高いことが知られていますが、非常な硬さのため加工が困難であり、現在のところさしたる利用価値のないものと考えられています」

「山間部だと普通に出るのか。黒妖石はあたしが欲しい石なんだよ」

「黒妖石をですか? 何にお使いになるのです?」

「これあげる」


 ナップザックから『光る石』スタンドを六つ取り出す。

 帝国で魔力に対する親和性が高いことが知られてるなら構わんだろ。

 フィフィももう、著作以外でそんなに帝国には関わらないだろうし。

 『光る石』スタンドがあれば執事が喜びそうだし。


「これは何なの? 飾り物?」

「黒妖石の小石を粘土で固めたものだよ。こうやって使うの」


 『光る石』を乗せる。


「あっ、手で持ってなくても光る?」

「純粋なものに比べて容量は小さくなるけど、黒妖石の小石を集めて固めたものでも魔力は蓄えられるんだ。余ったマジックポイント流し込んどくと、五時間以上は使えるよ」

「これは素晴らしいですね」

「皆そーゆー評価だな? 夜は寝た方が有意義だと思うけど」

「執筆活動が捗るわっ!」

「役立ててちょうだい。イシュトバーンさんの了解は取れたから、フィフィの本の表紙絵はオーケーだぞ」

「ほんと! 楽しみだわっ!」


 ハハッ、フィフィ大喜び。


「黒妖石の大きいやつは転移術に使えるんだよね」

「しかし、かなり複雑なケイオスワードの刻印が必要でしょう?」

「メッチャ硬い黒妖石でも、ドワーフの加工技術なら可能なの」

「なるほど……」

「あたしがガータンに出資して黒妖石を掘り出す器具を作り、無料で貸し出すことにしたんだ。石はあたしがもらう。ガータンの農地はどんどん広がるよ。あと山賊に『ガータン仮住民登録証』を発給することになった」

「どういうものですか?」

「市民権までの経過措置だよ。ガータン領内で通用、税を免除し、許可を得れば未開発地域の開拓が可能である。ただし商売に制限ありってやつ。もちろん『ガータン仮住民登録証』所持者にも石掘り具は貸し出す」

「山賊を領民に? 何という発想だ……」

「ガータンは数年ですげえいいところになるよ」


 これは間違いなかろう。


「また時々ガータンへは行くから、開発が進んだら報告するよ」

「お願いします」

「じゃーねー」


 さて、パワーカードもらってこないと。

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