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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1252話:魔王とごたいめーん!

「何だこれ?」


 魔王が住んでるとゆーところに来たら、木でできたいくつかのみすぼらしい小屋がある。

 これが魔王の館?

 イメージを裏切るなよ。

 魔王の住処って言ったら、もっとすごいやつが出てくると思うじゃん。


 しかしソル君の説明に思わず納得する。


「魔王の配下には建築技能を持った者がいないらしいですよ」

「そーだったかー」


 なるほどっちゃなるほどだけど、幻影の城を見たあとだとあまりの落差にビックリするわ。

 どの小屋よりもあたしん家の方がずっと大きくてちゃんとしてるもん。


「悪魔は家を必要としないぬよ?」


 悪魔は寝なくても平気みたいだしな?


「でもヴィルの家はすごかったじゃん」

「ヴィルちゃんは家持ちなんですか?」

「亜空間の隙間を見つけたからだぬ。偶然だぬよ?」


 ワープできる悪魔ばかりではないし、使用可能な亜空間の隙間を見つけることはさらに運が必要ということか。

 ヴィルが続ける。


「何かをコレクションしている悪魔は多いんだぬ。保管場所が欲しいということはあるぬ」

「ふーん。あっ、ヴィルが集めてたのは、あの青くて四角い石?」

「そうだぬ。亜空間で拾うことがある次元石の結晶だぬ」


 アトムが首捻ってる。

 次元石はこっちの世界にはないものらしい。

 ソル君が聞いてくる。


「どういうことです?」

「ヴィルに会ったのは亜空間の隙間の小さな実空間だったんだ。そこを家みたいにしてて、たくさん青くて光る四角い石があったの。メッチャ不思議な様相だったよ。でも考えてみれば、ものは石とヴィルの座ってた椅子しかなかったな」


 悪魔も精霊と同じで実体を持たない存在だ。

 重い道具を持って作業するのは苦手だろう。

 レベルが高いから、ある程度のことはできるんだろうけど。

 かといって魔王島まで人間の大工を大勢連れてきて、館を建てさせるってわけにもいかなかったか。


「……何だかビジネスチャンスが見えてきたよ」

「商売も結構ですけど、魔物退治を先に」

「おお、今日のお仕事を忘れるところだった」


 一番大きな小屋をコンコンとノックする。

 中から誰か出てくる。


「こんにちは。ソールだ」

「魔王だ。おお、友ソールよ。助っ人を連れてきてくれたか」

「ソル君、魔王に『友』呼びされてんのかよ?」

「そなたがユーラシアであるな。……ば、化け物!」

「おいこら魔王。無礼にも程があるだろ。ぶっとばすぞ?」


 あたしを見るなり何なんだ。

 アンセリは大笑いしてるし。


「こ、これは失礼した。こちらへ」


 ギクシャクしてる魔王が点々と建つ小屋の真ん中の広場に案内してくれる。

 ふむ、ピタッとした全身タイツにたてがみのような頭の装飾。

 レベルも相まって魔王はなかなかの存在感だな。

 でもサイズがサイズだからやっぱり可愛い。


「自己紹介が遅くなってすまぬな。魔王の名はバビロンという」

「魔王の一人称って『魔王』なのか」


 一々意外性があって面白いな。


「ユーラシアは友ソールの先輩冒険者だと聞いた」

「うん、三日早くデビューだったんだ」

「『アトラスの冒険者』には一目置かねばならぬな」


 『化け物』ってすぐ口に出ちゃうほど単純だけど、魔王は理性的な話のできる子と見た。

 魔王があたしに一目置いてくれれば、今後悪魔と付き合いやすくなるなあ。


「出でよ! 魔王が配下の者達!」


 皆がワープで出現するとかなら結構な演出だけど、普通に小屋から出てきた。

 ワープのできる子は魔王の家来にならないって話だったか。

 でも仮面被ってる子とか全身包帯の子とかすげー美少女とか、個性豊かでいいじゃないか。

 魔王がすまなそうに言う。


「せっかく客人が来てくれたのに、二人欠けているのだ」

「ソロモコのフクちゃんと塔の村のウシ子だよね。面識あるからいいよ」

「しかしザガムムは魔王の召集にも応じぬのだ!」

「ごめんよ。ウシ子は塔の村の冒険者をサポートする大事な仕事があるから。代わりにあたしが来たと思って、許してやって」

「ユーラシアがそう言うのであれば……」


 魔王とウシ子が対立してもいらん火種になるのだ。

 ウシ子が塔の村にいることもメリットになってるしな。

 魔王たる者が『許してやって』を了承してくれたなら十分だろう。

 ソル君が言う。


「ドラゴン退治の概要に関して、ユーラシアさんに教えてあげてくれ」

「うむ」


 地図を広げる魔王。

 あたしの手持ちの地図には、魔王島の細かいところは載ってないんだよな。

 魔王が指差すのは島の中央。


「ここだ。三方を岩場に囲まれた台地にブラックデモンズドラゴン五体がおる」

「島中央は魔力濃度が特に高いです」

「今のところ被害は出ておらぬが」

「放っといちゃまずいんだ?」


 魔王が難しい顔をする。


「魔力が台地から溢れればドラゴンも出てくるであろう。となると甚大な被害が予想される。またずっとこのまま五体だけとも限らぬ」

「やっぱ倒しちゃった方が無難か」

「友ソールがブラックデモンズドラゴン五体をまとめて屠れるスキルを持っているらしい。しかし危険があるというのだ」


 極大魔法『デトネートストライク』か。

 しかし危険とは?


「魔力の出所がわからないんですよ。これまでは魔力が台地に溜まるだけだったんですけど、万が一噴き出し口を壊して大量に垂れ流すことになったら、魔王島全土に強力な魔物が湧くかもしれないです」

「うわ、想像したくないな」


 なるほど、魔力の大循環仮説からすると、魔王島は魔境のような魔力の吸入口ではなくて、『永久鉱山』のような魔力の放出口ということらしい。

 急にブラックデモンズドラゴンが湧いたのも、放出口に何らかの変化があったのかもしれないな。

 よくソル君は気付いたもんだ。

 ペペさんじゃあるまいし、予想される危険に首突っ込みたくはない。

 となると?


「他にどういう手立てがあるのかな?」

「上空から長射程のスキルで少しずつ体力を削っていくしかない」

「うーん?」


 『闇のブレス』の届かない位置からってことか?

 ブラックデモンズドラゴンにまともなダメージ入るかな?

 帝国の爆弾を大量に落とす並みの破壊力がいるぞ?

 とゆーかダメージが入るなら入るで、ドラゴン怒って台地から飛び出してきそう。

 大惨事になっちゃうのでは?


「ムリがあるな。あたしの『雑魚は往ね』で片付けよう」

「「「!」」」「?」


 驚くソル君パーティーと理解してない魔王。

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