第1226話:バトルスキル『アビゲイルホームラン』
「アルアさん。スキルってどんなやつでもパワーカードにつけられるの?」
「ムリなやつもあるよ。例えばペペの開発した魔法やバトルスキルは、不可能なやつが多いね」
思わず納得。
ペペさんの作ったやつって、頭おかしいスキルばかりだもんな。
汎用の『アクアクリエイト』は大丈夫だろうけど。
待てよ? 汎用のスキルならパワーカードに付属させることができるってことかな?
「売ってるスキルで一番高価な『流突六連』っていうバトルスキルじゃん? あれを付属させるなんてことは?」
『流突六連』は、リリーの黒服従者セバスチャンが使ったのを一度見たことがある。
敵単体に六連撃を叩き込む、流れるように美しく高威力のバトルスキルだ。
バエちゃんとこで確か一〇万ゴールド以上したはず。
購入可能なスキルの中では最も多くのダメージを与えることのできるスキルだから、欲しがる人も多いだろう。
まあうちのパーティーには特に必要なスキルとは思えない。
刺突属性限定になってしまうから、『アンリミテッド』の衝波属性が無意味になっちゃう。
『暴虐海王』の弱体付与効果も乗らないだろうしな。
「可能だよ。高価とは言っても汎用スキルだから、コモンの素材だけで作れる。交換ポイント一五〇相当、特注になるから三〇〇ポイントだね。ただし『流突六連』ほどのスキルになると、ステータスアップの効果は何も乗せられない。スキルを発動できるだけのカードになるよ」
「なるほどー」
安いけど、パワーカードの装備枠を一つ埋めてしまうのは非常に痛い。
あたしには『ハヤブサ斬り・零式』以上のスキルは必要ないしな。
でも中級冒険者以上で決定的な火力のあるスキルを欲しているならありかも。
『流突六連』のスキルスクロールは高過ぎるもん。
「さあ、お楽しみのゼンさん新パワーカード披露だ!」
「ユーさん。その前に『ユニコーンの角』で作れるようになった、レギュラーのカードもあるんだぜ?」
「お楽しみは残しとこうか。レギュラーの方を先に見せてよ」
「一五〇ポイント限定一枚だぜ」
『カタナ』【斬撃】、攻撃力+三〇%、防御力-二〇%、会心率+一五%
強い。
攻撃力+三〇%と、これまで最強の『スコルピオ』と並ぶ攻撃力補正だ。
しかもこの手のパワーカードには珍しく、斬撃の攻撃属性まで付属している。
防御力のマイナス補正が大きいので普段使いには向かないが、魔法攻撃しかしてこない魔物もいるので、使いようはある。
「いろんなカードがあるなあ」
「お姉さまはパラメーターのマイナス補正に関してどう思われますか?」
「目的がハッキリしてりゃいいと思うよ。あたしも『前向きギャンブラー』ってやつは、以前使ってた。これ」
ナップザックから取り出して見せてやる。
現在工房では作られていない古いカードなので、ゼンさんとエルマは知らないかもしれない。
「攻撃力+一五%、会心率+八五%、防御力-三〇%、魔法力-三〇%か」
「『カタナ』と考え方が似ていますね」
「ウィッカーマンっていう人形系レア魔物を倒すのに必要だったんだ。一ターンでどれだけ与ダメージを大きくできるかが肝でさ。今はこの前作ってもらった『デスマッチ』で逃がさないから、楽に倒せるんだけど」
エルマとゼンさんが言う。
「会心率や回避率、反撃率をマイナスにするのはありかと思いまして」
「クリティカルや回避を最初から諦める、反撃率なんか普通はゼロなんだからマイナスでも影響はないだろって考え方か。前衛冒険者としては納得できる考え方だね」
「ただこれらをマイナスにしても、あまり有効なステータス上昇に繋がらないんですよね」
「そーゆーもんなんだ?」
パワーカードの理屈はよくわからんけれども、有効な部分を引き上げたいならそれなりの犠牲を払えとゆー考え方はわからんことない。
職人は何を削って何の付加価値を採用するかってところで悩むのかなあ?
職人というより研究者みたいだ。
「さて、本日のメインベントでーす! ゼンさんのカードを見せてもらおうか」
「これだぜ」
『チャリオット』[騎]魔法力+二〇%、敏捷性+一五%、HP再生五%、睡眠無効、スキル:『強撃』、『アビゲイルホームラン』
「自信作だ。クララちゃんが使うんだろ? 『誰も寝てはならぬ』と入れ替えて装備してもらうといいと思う」
うむ、『誰も寝てはならぬ』の最大ヒットポイント上乗せ効果は捨てがたいが、日々の凄草摂取で最大ヒットポイントは上がっている。
強敵相手でもクララには必要ない気がしていたのでありがたい。
同じ[騎]の『ニンバス』ほどではないが高い魔法力補正と、安全度が増すHP再生もクララ向きだ。
「ところでスキルの『アビゲイルホームラン』って何?」
『強撃』は知ってるけど。
「魔法力を攻撃力に加算した状態で、必ずクリティカル攻撃を出すというバトルスキルだぜ」
「物理攻撃なんだ? 名前で想像はできたけど」
二つの物理攻撃スキル付きって、残虐精霊コケシが欲しがりそーなパワーカードだな。
「エルフの族長が作ったスキルだそうですよ」
「あっ、アビゲイルってアビーのことか!」
驚くゼンさん。
「知ってるのかい?」
「画集に『アビゲイル』っていうエルフの絵あるでしょ? あの人だよ。一〇〇年くらい前は冒険者やってたって」
「ええ? エルフの歳は見かけじゃわかんねえな」
ゼンさんの言う通り。
特にアビーはわからない。
というか精神年齢が低いからか性格がハチャメチャなせいか、喋っててもそんなに年上の気がしない。
「ゼンさん、ありがとう。クララを物理寄りにするっていうアイデアはなかったよ」
「こっちこそすまねえ。攻撃属性もつけようと思ったんだが、そこまでは欲張れなかったぜ」
「『ライトスタッフ』装備させた方がいいかな?」
いや、クララが通常攻撃するケースなんかないわ。
『強撃』や『アビゲイルホームラン』はスキル自体が殴打属性だから、全然必要ないな。
アルアさんが言う。
「他に交換していくかい?」
「『ニンバス』ちょうだい」
『ニンバス』はダンテに装備させる予定だ。
これで[騎]の高効率カードが四枚揃った。
残り交換ポイントは二〇七一。
「うん、たしかなまんぞく。今日は帰るね」
アルアさんゼンさんエルマに別れを告げ、転移の玉を起動し帰宅する。




