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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1218話:ウシ子を導く

「ごちそーさまっ! おいしかった!」


 ウシ子のレベリングを終えた後、塔の村に戻って昼食を取った。

 ちなみにウシ子にも分け前として魔宝玉を渡している。

 大喜びしてたわ。

 可愛いやつめ。


「ウシ子はおゼゼが好きって聞いたけど」


 以前バアルはウシ子のことを『残忍で強欲』と評していた。

 あたしが見る限りはそんな感じしないんだよな?

 魔宝玉あげると喜ぶから、高価なものを好むことは確かなんだが。


「お金が好きなわけではないのん。人間はお金を見ると目の色が変わるでしょう? そのメラメラとした感情が好きなのん」

「なるほど?」

「お金を見せながら交渉したり駆け引きしたりするのは、たまらない楽しみだったのん。でも今は塔の村の冒険者が認めてくれるから」

「おゼゼ自体の重要性は高くないと?」

「好みの感情を得ることが重要なのん」


 ははあ、人間との駆け引きが結構シビアなんだろうな。

 だからバアルは残忍で強欲と見たか。

 魔宝玉ハントに興味持つとこみると、おゼゼが好きは好きなんだろう。

 貯め込まれると経済に悪影響だな。

 となれば……。


「行こうか」

「どこへなのん?」

「村長デス爺んとことパワーカード屋。おゼゼの効果的な使い方を教えてやろう」


          ◇


「おーい、じっちゃーん!」

「何じゃ、ユーラシア。む? 珍しくザガムムも一緒か」

「ウシ子に人間の取り引きを教えてやろうかと思って」


 わかってなさそうなデス爺とウシ子。


「ウシ子、いいかな? 悪魔の取り引きは、自分がどれだけ得できるかの駆け引きになるんでしょ?」

「当然なのん。損する取り引きなんかするわけないのん」

「もっともなことだけど、人間の取り引きでは信用も大事なんだ」

「信用?」


 首をかしげるウシ子。

 うむ、悪魔と信用ってすげー縁遠そうだもんな。

 とゆーか自分は儲けて相手に悪感情を押しつける取り引きで、信用なんか得られるわけがない。


「この取り引き相手なら確実にこうしてくれるって認めて、認められることだよ」

「えっ、認める?」


 よし、食いついた。

 悪魔は承認欲求が強いなあ。


「つまり普通に売ったり買ったりしてるだけで認められちゃう」

「そうなのん?」

「悪魔には馴染みのない考え方かもしれないね。何故なら悪魔は悪感情も欲しがるから」


 ズルいことしないでちゃんと商売してくれる人ってのは重要だ。

 あたしだってその辺は考えてるわ。

 あたしが大儲けぼろ儲けって言葉が大好きなのとは別の問題だわ。


「逆に駆け引きしようと思うと、相手に警戒されちゃうこともある。ウシ子はその手のヒリヒリするような感情も好きかもしれないけど、簡単に認められるんだったら楽にいい感情を得られるわけじゃん?」


 考えてますね?


「逆にサービスしてやったっていいんだぞ? 例えばあたしはあんたにいつも魔宝玉をサービスしてるけど、いつの間にかあんたに言うこと聞かせる約束を取りつけてるでしょ?」

「……本当だ」

「ウシ子も塔で手に入れたアイテムや素材を売ったり、欲しいものを買ったりすると、認められる分得しちゃったりするわけだ」

「そうねん!」


 要するにザガムムにも冒険者活動をさせるということじゃな? 高レベルだから、かなりの戦力だよ、塔の村の経済に貢献するでしょ、というやり取りをデス爺と目で交わす。


「で、ウシ子が欲しそうなものとして、じっちゃんはスキルを売ってるんだ。強い物理攻撃スキルが欲しいとか回復魔法が必要とかだったら相談しなさい」

「わかったのん」

「じっちゃん、またねー」


 路地を通ってパワーカード屋へ。


「こんにちはー」

「やあ、ユーラシア。そちらは?」

「コルム兄は初めてだったかな? 塔のてっぺんに住んでる悪魔ザガムムだよ。あたしはウシ子って呼んでる」

「えっ、悪魔?」

「どこからどう見ても悪魔だろうが」

「初めましてなのん」


 若干引き気味のコルム兄。


「な? ウシ子、最初は悪魔だから警戒されちゃうけど、しょっちゅうお買い物してると信用されちゃうよ」

「楽しそうなのん」


 ハハッ、ウシ子は案外素直。


「悪魔は武器や防具、あんまり持たないよね?」

「振り回すと疲れちゃうのん。特殊な武器を持ってる高位魔族もいるけど」


 やはり。

 精霊と同じで実体を持たないからか。


「そこでお勧めの武器パワーカード! これは悪魔でも使える装備品だよ。持ってみ?」

「あっ、すごいすごい! 問題なく使えるのん!」


 『アンリミテッド』を試し振りするウシ子。

 気に入ってもらえたようだ。


「武器持ってるか持ってないかだったら、そりゃ持ってる方が強いに決まってる。魔王が呼んでるから早く来いと言ってくる使者を追い返すのも楽になるぞ?」

「そうねん!」

「『アンリミテッド』は人形系レアを簡単に倒せる特注品なんだ」

「欲しいのん!」

「コルム兄、どうすれば作ってくれる?」

「『逆鱗』『巨人樫の幹』『ベヘモス香』『ワイバーンの爪』、この四つの素材と交換でどうだい?」


 結構きつい条件出してきたな。

 まだ悪魔を信用してないみたい。

 仕方あるまい。


「『逆鱗』はドラゴン、『巨人樫の幹』は高級巨人、『ベヘモス香』はベヘモス、『ワイバーンの爪』はワイバーンのドロップだよ」

「えっ、ドラゴン? 怖いのん!」

「尻込みすんな。あんたは今やレベル七〇だ。装備とスキルが揃ってれば勝てる」

「そうなのん?」

「誰かと共闘したっていいんだぞ? でもまだ塔の村にはドラゴンと戦える冒険者はいないか」


 あれ、ウシ子随分熱心にパワーカード見てるな?

 今まで困ると頭突き攻撃だったのかもしれんけど、いつまでも通用するもんじゃないわ。

 強い魔物のいる時に呼び出されるケースも増えてくると思われるから、スマートな戦い方も覚えておくれ。


「……面白いのん」

「おお、ウシ子は見る目があるな」

「自分の弱点のカバーも狙った攻撃も簡単なのん」

「理解が早いね。コルム兄もウシ子の相談に乗ってやってよ。あたしのキュートな顔に免じて」

「ハハッ、わかったよ」

「あたしも『ホワイトベーシック』五枚買ってく」


 次の脱落『アトラスの冒険者』に会う時は自由開拓民集落だ。

 回復魔法や治癒魔法の使えるパワーカードをプレゼントすると喜んでもらえそう。


「じゃ、あたしは帰るよ。ウシ子、頑張れよ」

「ありがとうなのん!」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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