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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1216話:ウシ子を連れて魔境に

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」

「な、何なのん?」


 ウシ子を連れて魔境に来た。

 が、あたしとヴィルのハグする様子を見て怪訝な顔をしている。


「主従の麗しき交わりだよ」

「そうだぬ! スキンシップだぬ!」


 ダイレクトにあたしの好感情を摂取できて心地いいんじゃないだろうか?

 ヴィルは固有能力『いい子』の補正で力が満ちるだろうから、なおさら効果が高いんじゃないかな。

 悪魔は基本ソロ活動だし、人間と仲良くすることもないので、ウシ子には理解しがたいのかもしれない。

 奇妙なものを見たような変な目で見てくる。

 でもウシ子よ、気付いてるか?

 あたしと関わるようになって、あんたもかなり悪魔の規範から外れてきてるからな?


 オニオンさんが話しかけてくる。


「そちらがザガムムさん?」

「うん、ウシ子」

「初めましてなのん」


 ウシ子に説明してやる。


「オニオンさんは一流の魔境ガイドだよ。スキルのことにも詳しいんだ」


 オニオンさんの表情がやや強張っている。

 まあ言いたいことはわかる。


「ヴィルちゃんから話を聞きましたが、ザガムムさんをレベリングする、と?」

「そうそう。ウシ子は魔王配下の高位魔族なんだ。魔王から召集かかったんだけど、行きたくないから断るだけの実力が欲しいって」

「ははあ?」

「一方でウシ子は塔の村で危機に陥った冒険者を救うって役割を果たしてるから、ウシ子が離脱すると塔の村が困るってこともあるんだよね」

「ふむふむ」

「ウシ子のレベルが今五七。塔のダンジョンも魔境クラスの魔物が出始めてるんで、お助けキャラとしてもう少しレベルが欲しいっていう事情があるんだ。今日はソロでもドラゴンに勝てる目安として七〇まで上げてくる予定」

「レベル七〇ですか。ユーラシアさんなら十分可能でしょうが……」

「ウシ子は人間と敵対しない、あたしの言うことは聞くって約束させたから、特に問題はないんだよ。もし約束破ったら世界中にダメ悪魔だって宣伝するって言ってあるの」

「ひいいいいいい! 本当にやめて欲しいのん!」


 あたしがウシ子をどう扱っているかを完全に理解したらしいオニオンさんが、いつもの穏やかな表情になる。

 半分玩具にしてるんだよ。

 ウシ子が標準だとすると、悪魔って付き合いやすい存在なんじゃないかって気がしている。

 もっといろんな子に会ってみたいもんだ。

 悪魔面白い。


「よくわかりました。行ってらっしゃいませ」

「行ってくる」

「行ってくるぬ!」


 ユーラシア隊及び悪魔×二出撃。


          ◇


「魔境はいいねえ。この空気の重厚感が何とも言えない」

「身体が浮く感じがするぬよ?」

「そーなの?」

「そうなのん」


 飛行魔法ではわからんけど、ナチュラルに飛べる子達の感覚では、魔境の重みを感じる空気の中では浮く感じなのか。

 知らんかったよ。


「姐御、今日の方針はどうしやす?」


 ベースキャンプを出るなりアトムが聞いてくる。

 うむ、方針の確認はアトムの役目だ。


「ウシ子のレベル上げが目的だから、クララに北辺のエルドラドまで運んでもらおう」

「わかりました」

「バット、ベリーデンジャーね」

「それなー」


 ダンテが言うのは謎経験値君ことシルバークラウン(仮称)のことだろう。

 あんまり最大ヒットポイントの多くないウシ子が、ノーガードで強烈な自爆を食らうとやられちゃう。


「ウシ子、よく聞きなさい」

「はいなのん」

「レベルを手っ取り早く上げるのは、経験値の高い人形系レア魔物を共闘して狩るのが一番なんだ。今から人形系レア魔物が一杯生息しているところに行くけど、注意点がありまーす」

「何なのん?」

「魔物はあたし達が倒します。ウシ子は余計なことしなくていいから、戦闘になったら常に防御していなさい。舐めてるとあんたくらいのレベルじゃ死ぬぞ?」

「し、死ぬ?」


 瞳が拡大し、声が上ずるウシ子。

 どーも高位魔族は生まれながらにしてレベルが高いせいか、あんまり魔物のことを知らん気がする。

 戦った経験もおそらく少ない。

 だってレベルの割に隙だらけなんだもん。


「ヤバい人形系レア魔物が二種類いるよ。一種は銀色でぴょんぴょん跳ねるやつ。一般的な名前がなくて、仮にシルバークラウンとか謎経験値君って呼んでる。こいつはエンカウントするとほぼ逃げようとするんだけど、一〇回に一回くらいの割合で逃げずに自爆するんだ」

「じ、自爆?」

「この爆発がシャレにならない威力なの。耐性による軽減もできない。無防備で食らうと死ぬってのは、冗談でも何でもないからね。単なる事実だぞ?」

「わ、わかったのん」


 首をコクコク縦に動かすウシ子。


「もう一種ヤバいのがウィッカーマン。黒くて大きくて、比較的性格の荒い人形系レア魔物だよ。さっきのシルバークラウンほど危険ではないけど、強烈な魔法『メドローア』を一ターンに二発撃ってくるんだ。これも間違ってノーガードで二発とも食らうとあんたは死ぬ」


 ウィッカーマンはアトムの開発した『デスマッチ』と『雑魚は往ね』のコンボで安全に倒せると思うが、危険な魔物であることは間違いない。

 油断は禁物なのだ。


「死ぬ死ぬって、怖いのん!」

「ウシ子が怖がるのは実によくわかるけれども、油断しなきゃ平気だぞってこと」


 何故ならあたし達も謎経験値君やウィッカーマンを同時に二体相手にするほど無謀ではないから。


「怖くない魔物ではダメなのん?」

「ダメだなー。時間かかっちゃうからね。謎経験値君やウィッカーマンはメチャメチャ経験値が高いんだ。一体倒しただけで確実にレベル上がるよ」

「そうなのん?」

「メイビーもっとね。間違いないね」


 ダンテの言う通りだ。

 実際には『実りある経験』を使用するので、おそらくレベル五〇台程度ならウィッカーマンや謎経験値君を一体倒せばレベル四、五は上がる。

 数体倒せば今日の目標は達成できる。


「注意する点は以上かな。質問ある?」

「ええと、つまり魔物との戦闘になったら、最初から最後まで防御していればいいのねん? 大丈夫なのん」

「よし、細かいことはその場その場で注意するからね。じゃあクララ、よろしく」

「はい、フライ!」


 びゅーんと魔境北辺の人形系レア魔物群生地帯へ。

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