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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1206話:神にも等しいあたしを信じろ

「……危なっかしいですね」

「ピット君も思うか。勢いとフィーリングで物事を進めようとするから」


 新聞記者ズと別れ、ヘリオスさんの店に行くまでのセレシアさん評だ。

 サラッと会っただけのピット君に危なっかしいと言われてしまうようでは、全くよろしくないじゃないか。

 『ケーニッヒバウム』を提携したいのに、不信感を持たれてしまう。


「商人としては褒められたことじゃないですよ?」

「デザイナーに専念させた方がいいな。でもこっちにも事情があって難しいんだ」


 何だかんだでセレシアさんは青の民のトップだから、止められる人がいない。

 別に店長を置いた方がいいな。

 でもカラーズの商売が活発化したのがほんの数ヶ月前だから、レイノスの店を任せられるほどの人材がいないっちゃいない。

 どーすべ?


「後の課題だな。ここが紙屋だよ」

「近いですね」

「こんにちはー」

「いらっしゃいませ」


 もの静かな感じの店員の男。

 ふむ、何かの固有能力持ちだ。

 この人が『日和』持ちか?


「バーナード・コッチ君? 元『アトラスの冒険者』の?」

「そうですけど……あなたは?」

「美少女精霊使いユーラシアだよ」

「あっ? あの有名な?」

「かの有名な美少女精霊使いユーラシアだよ」


 ピット君が呆れたように言う。


「何ですか、今のやり取りは?」

「大事なことは何度でも繰り返しておかないと。あっ、ヘリオスさーん!」

「おお、精霊使い殿ではないですか。どうされました?」

「バーナード君を一時間ほど貸して欲しいの」

「ほう?」


 ドーラにとって有益な固有能力持ちを育てておきたいの何の。

 脱落『アトラスの冒険者』リサイクルプロジェクトがむにゃむにゃ。


「バーナードが固有能力持ちということですか?」

「『日和』っていう、天気を知ることができる能力なんだ。ただし、レベルがある程度ないと力を発揮できないらしいの」

「オレも『アトラスの冒険者』になった時に説明は受けたんです。でも自分では実感できなくて……」

「レベルが足んないからだと思うんだ。レベル上げはあたしが担当するよ。そーすりゃバーナード君は有益な人材」

「天気を知ることができる、ですか。また変わった……」


 あっ、ヘリオスさんわかってないな?


「作業にしてもイベントにしても、天気って重要な情報でしょ? 新聞に……」

「バーナード、行ってきなさい」


 天気予報を載せれば新聞の需要が増えることを瞬時に理解したらしい。


「バーナード君もちょっとした小遣い稼ぎになるから協力してよ」

「店主のお許しも出ましたし、よろしくお願いします」

「ありがとう! 行こうか」


 転移の玉を起動し、ピット君とバーナード君をホームに連れ帰る。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。と?」

「帝都の大店の跡取りのピット君と、レイノスの紙屋の店員のバーナード君だよ」

「よろしくお願いします。しかしここは?」

「魔境です。ワタクシ魔境ガイドのペコロスと申します」

「「魔境?」」


 何だよ、今更ビビんなよ。


「知らされてなかったので?」

「レベル上げするって言ったけどなあ」

「レベル上げは聞いたけど、いきなり魔境だと思わないですよ!」


 いきなりじゃなくてワンクッション置けばいいのか?

 あたしは迂遠なこと嫌い。

 ヘリオスさんに許可もらったの一時間だけだし。


 ん? ピット君、何?


「ええと、魔境というのは、まさかドラゴンとかがいる恐怖の魔境じゃないですよね?」

「うん違う。恐怖なことは特にない。ドラゴンはいるけど」

「「魔境じゃないですか!」」


 だからそう言ってるだろうが。

 オニオンさんが笑う。


「ハハハ。ユーラシアさんならば危険はないですよ。目的はレベル上げですか?」

「うん。ピット君はドーラを見聞させてやってくれと頼まれてるから、ドーラ名物の魔境ツアーを体験させてあげようと思って」

「本当に名物なんですか? 地母神ユーラシアの名にかけて?」

「うるさいなー。バーナード君は元『アトラスの冒険者』なんだ。『日和』っていう天気を知ることができる有用な固有能力持ちなんだけど、能力を活用できるところまでレベルが上がってないからさ」

「神様ヘルプ神様ヘルプ神様ヘルプ……」

「うるさいなー。何なのあんた達」


 ピット君が吠える。


「知ってるぞ! ボクだって『輝かしき勇者の冒険』くらい読んだことあるんだ! ドラゴンって強力で凶悪な魔物なんだろう!」

「凶悪なんてことあるか! ヤマタノオロチに比べりゃよっぽど弱いわ! まったく『輝かしき勇者の冒険』は有害図書だな」


 絶対にいつか絶版に追い込んでやる。

 一方でバーナード君泣きそう。


「お、オレは一体の魔物すら倒せず、『アトラスの冒険者』を諦めたんだ。魔境の魔物なんてとてもとても……」

「気持ちはわかる。あたしも最初、スライム一匹やっつけるんでも苦労したから」

「ユーラシアさんがですか?」

「でも逆にレベルが上がると、強いって言われてる魔物でもどうってことないんだってば」

「ボクは信じない!」

「神様ヘルプ神様ヘルプ神様ヘルプ……」

「面倒なの連れてきちゃったなー」


 実にやりにくいわ。

 可哀そうに、ヴィルも無口になっちゃったじゃないか。

 オニオンさんが助け舟を出してくれる。


「ユーラシアさんの魔境レベリングは世界一ですよ。中には虚弱な女の子で、お姫様抱っこされたままレベル上げという極端なケースもありましたし」

「「えっ?」」

「あったなあ」


 ヒルデちゃんか。

 最近会ってないけど、ラルフ君と仲良くしてるかなニヤニヤ。


「ど、どういうことです?」

「あんまり体力がない子だったんだよ。レベル上がるとステータスパラメーターも上がるじゃん? すると元気に活動できるようになる」

「何故魔境?」

「出現する魔物の経験値が高いから効率がいいんだ。何体か倒すだけで目的達成できちゃう」


 ちょっとは気が鎮まってきたか?

 あんだけ神様神様言ってたんだから、神にも等しいあたしを信じなよ。


「今日はいかほどのレベリングです?」

「二〇越えるくらいまででいいと思うんだ。うまいこと魔物に遭えれば三〇分くらいかな。行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」


 ユーラシア隊及びふよふよいい子、半信半疑の者ども出撃。

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