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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1203話:ピット君を遊んでやる

「ところで騎士爵って実利はあるのかな? お貴族様ってだけ?」


 『ケーニッヒバウム』への途中、記者トリオと話しながら行く。

 騎士様って言われるとえらそーではあるが、そこに愛はあるんかと問いたい。

 『愛』と書いて『メリット』と読むあたし目線の話でだ。


「年間五万ゴールドの年金が支給されますよ」

「へー。じゃあ騎士は正隊員になると、お給料の他に年五万ゴールドもらえるのか。待遇がグンとよくなるんだねえ」

「特級勇士勲章も五万ゴールドの年金が出ます」

「あれ? 勲章にも一時金じゃなくて年金がつくのか。そりゃ予想外」

「年金制度や帝国債は、貴族の生活を安定させるためという側面があると思います」

「なるほどなー」


 実際に五万ゴールドぽっちで貴族の生活がどうにかなると思えんけど。

 いや、貴族も華やかな生活の人ばかりじゃないのかな?

 年金は一代限りだろうけど、帝国債なら子孫に譲ることもできるはず。

 貴族の生活の一助ではあるってことか。

 うまく考えられているんだなあ。


「お貴族様の生活ってのはどうなの? 帝都で社交、領地で産業振興っていうあたしのイメージだけど」

「様々ですよ。帝都で社交にいそしむ貴族はもちろん余裕のある方々です。しかしことあるまで領地に引っ込んでる者もおります」

「ふむふむ、どこにどんだけ力をかけるか、予算と相談ってことか。封地も当たり外れがあるだろうしねえ」

「僻地や山中で狭い領地は難しいですね」

「わかる」


 特別なウリがなきゃムリだ。

 ヘルムート君の新男爵領ガータンは、人口は少ないみたいだけど面積は割とある。

 山賊さえどうにかすればやりようはあるな。

 最悪の領地ではない。


 記者の一人が声を落として言う。


「……先ほど施政館でのやりとりですが。フロリアヌス様が辺境侯爵を継げないというのは?」

「大したことじゃないよ。ゼムリヤって地図上では帝国本土から半分切り離されたような位置にあるじゃん?」

「山脈の向こうの半島部ですね。帝国本土との交流よりも、むしろ北のガリア王国との交易が多いと聞きます」

「皇帝位を争った人がゼムリヤの領主になったら、どんな噂が立つと思う? 反乱だの独立だの北の王国に内応だの、言われたい放題でしょ」

「……ユーラシアさんの懸念は、地理的条件と人選のミスマッチということでしたか」

「絶対治まんないぞ? 逆にフロリアヌス殿下が騎士団で団長とかになっててウルピウス殿下がゼムリヤを統治するなら、危険は激減するでしょってこと」


 あとは統治者の能力とお膳立て次第だ。

 ウ殿下がメルヒオールさんに教わるなら大丈夫だろ。


「施政館でのやり取りは記事にしちゃまずいですよね?」

「当たり前だろ。主席執政官閣下だって今頃言い過ぎたって思ってるはずだから、漏らすのは厳禁だぞ?」


 頷く記者トリオ。


「しかしユーラシアさんといると、聞いちゃいけない話がポロポロ耳に入ってくるんですが」

「うーん、あたしはここまで知っといてもらおってことだけ話してるんだよ。でも主席執政官閣下は違うんだよなー。あたしにとって帝国の次の皇帝なんて他所の国のことじゃん? 話したって御愛嬌だけど、閣下にとってはもろに自分に関係することなのにな」


 この前の飛空艇のことも今日の次期皇帝のこともそう。

 どーも第二皇子はブレーキが利かないというか。

 普段あんまり突っ込んだ話ができないからってこともあるんだろうけど、何故外国人美少女のあたしを相手にするのか。

 全くわけがわからん。

 

「あたしだって帝国の内情には深入りしたくないじゃん? 記者さん達を施政館連れてくのは、突っ込んだ話をされないためっていう意味合いがあったんだよ。でもまるで効きやしない。どうなってんのよ?」

「さあ、それは……」


 苦笑いする記者トリオ。

 主席執政官は辛抱しない人なんだろうか?

 あの誘導されるような話し方はあんまり好きじゃないんだが。


「ユーラシアさんだと話しやすいんじゃないでしょうか?」

「そお?」

「カリスマ性というか」

「あたしの罪だったかー」


 あたしには皆が色々話してくれる傾向にはあるな。

 ありがたいと思うべきか。

 笑いながら『ケーニッヒバウム』魔宝玉コーナーに到着。


「こんにちはー」

「ユーラシアさん、いらっしゃい。どうぞ」

「あれ、ピット君じゃん」


 『ケーニッヒバウム』店主フーゴーさんの孫ピット君だ。


「お店で修行中なの?」

「いえ、修行はもちろんですけれども、ユーラシアさんに頼みがありまして」

「依頼? あたしを雇うと高いぞー」


 ピット君が鼻白む間にフーゴーさんが出てきた。


「ユーラシア殿、こちらがグルメ女王グレタ殿推薦のスイーツ料理人です」

「あ、『ケーニッヒバウム』の料理人じゃないんだ?」

「当店とも契約しておりますので問題ありませんぞ」

「幻のレシピとのこと。楽しみにしてます。よろしくお願いします」

「こちらこそ。期待してるよ」


 握手。

 フーゴーさんが言う。


「もう一つユーラシア殿に頼みがあるのです」

「何だろ?」


 フーゴーさんもあたしに用があったか。

 商売の話かな?


「少しで構わぬのです。ピットにドーラを見聞させてやってはもらえぬでしょうか?」

「いいよ。今から行こうか。昼過ぎには帰ってくるよ」

「ありがとうございます。お礼はどうしたらよろしいでしょうか?」

「え? そんなのいらないよ。ついでだし」

「ユーラシアさん!」


 どーしたピット君。

 店先なんだから大声出すなよ。


「ついさっきボクが同じこと頼もうとしたら、あたしは高いぞって言ったじゃないか!」

「ピット君が小ズルい駆け引きをしようとするからだぞ? あたしだって警戒するわ」

「お爺様が頼んだら二つ返事じゃないか! しかも無報酬で!」

「無報酬ってのは違うぞ? フーゴーさんほどの商人と仲良くできるのは、十分過ぎるほどの報酬なんだから」

「くっ……」

「ピット君もそんだけ信用のある商人になりなよ。期待してるぞ」


 フーゴーさんが嬉しそう。


「ピットよ。商人に必要なものがわかったか?」

「ピット君は賢いかもしれないけど、微妙に先走るのはよくないぞ? 相手に見せるのは誠実とか良心とか笑顔にしときなよ」

「まさに。ユーラシア殿に教わってきなさい」

「……はい」


 ピット君も可愛い弟分みたいなもんだ。

 遊んでやんよ。


「じゃ、行こうか」

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