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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1100話:わからんことが多い

「サイナスさん、こんばんはー」


 帰宅して夕食を食べたあと、毎晩恒例のヴィル通信だ。


『ああ、こんばんは』

「今日あったこと話すね。サイナスさんが聞きたくてしょうがないだろうから」

『勝手にオレの気持ちを代弁してくれなくてもいいが、大体当たってる』


 軽い笑い。

 サイナスさんは真面目ぶってるようでノリがいいからな。

 毎晩楽しんでくれているようで何より。


「まず朝から『雪の精霊』っていう新クエスト行ってきた」

『外国だって言ってたな。どこだったんだ?』

「いや、まだわかんない」


 一人の精霊がファントムバインドに捕らえられており、魔力が荒れ狂っていたことを話す。


『危なかったな。魔力放出が続いたら消滅しちゃったんじゃないか?』

「どうだろう? 周り雪だらけだったよ?」


 雪の精霊なら力を吸収できたろうし。

 逆にいつまでも吹雪が収まらない可能性があったかもしれない。

 麓に集落があったっぽいから大迷惑だな。


「雪ん娘精霊は喋れなかったんだ。うちの子達が言うには生まれたてだったらしくて」

『ほう? かなりのレアケースだな』

「ファントムバインドから引き剥がして自由にしてやったら、天気も落ち着いてきたんだ。季節や土地柄のせいもあるんだろうけど、かなりの力を持った精霊であることは間違いないね」

『その雪の精霊はどうしたんだ? 連れ帰ったのか?』

「いや、生まれたばかりの精霊は、元の土地を離れたがらないだろうってことなんだ」

『ふむ、なるほど。活動エネルギーに困らないもんな』


 精霊の生まれる環境は、その精霊が生きていくのも難しくない。

 うちの子達みたいに御飯をたくさん食べてりゃどこでもいいんだけど。


「助けてもクエスト終了になんなかったから、まだこれ以上の展開あるようでさ。雪ん娘が喋れるようになる数日後にもう一度行って、事情を聞こうかと思ってる」

『話を聞く限りあまりエンタメ要素がないようだね』

「それな? サイナスさん雪って見たことある?」

『ない』

「サクサクで柔らかい氷でさ。なかなか風流なものだよってウソだわ。やたらと寒いわ。あたし達の住んでるドーラがあんなもんに縁がないのは幸せだと思うわ」

『夏の暑い時期に雪を持ってきて、果汁や蜂蜜をかけて食べたら美味いんじゃないか?』

「あれ、サイナスさん天才だな」


 夏でも雪って残ってるのかな?

 今度行った時、雪ん娘の名前と場所を知りたい。

 場所の方はヴィルに調べてもらえば何とかなるかもしれないが。


「午後はイシュトバーンさんを連れて帝都で遊んでた」

『ほう? 帝都へは明日ルキウス皇子を迎えに行くって話じゃなかったか?』

「明日も行くんだけど、『雪の精霊』クエストがこれ以上進められないから時間余っちゃって。葬儀の様子も知りたかったし」

『うん、ルキウス皇子とリリー皇女の様子は?』

「プリンス株急上昇だって。狙い通りだわ。やっぱ高レベル『威厳』は違うなー。朝からずっといろんな人と会談してて、あたしはプリンスに会えなかった。でも明日帰りなのは変わらないから、お迎えにゴーだね」

『皇女の方は?』

「リリーがドーラに来てたことは公表されてないの。体調崩してどこかで静養してるって噂が流れてるんだよ。久しぶりに帝国の人達の前に元気な姿を現したわけじゃん? 怒涛の縁談攻撃なんだって。あたしの聞いたところによると、お相手の有力候補は公爵の息子、伯爵の子の天才剣士、帝都一の商人の孫の三人だそーな」

『ラブい話はすかさず掘り下げるなあ』


 だって乙女のハートの潤いなんだもん。


「で、一応のけりがつくまでドーラには戻れないっぽい」

『というより、けりがついたら誰かの婚約者になるんだろう? ドーラに戻ってこられるのか?』

「うーん、リリーはあんまり乗り気の話じゃないんだ。必ず戻るって言ってるけどどうだかな? ウルピウス殿下も暗に難しいんじゃないかって言ってた」

『さもありなん』

「解決にはユーラシアの力を借りることになるかもしれん、なんて言うんだ。どう思う?」

『えっ? つまり、縁談を壊せということか?』

「と、言ってるように聞こえるよねえ」

『いくら何でもムリだろう。黄の民の時とは状況が違う。大体君、今でも黄の民の族長親族に恨まれてるじゃないか。帝国の実力者を敵に回したら、貿易に支障をきたすかもしれない』

「ドーラの発展に支障が出ちゃうのはまずいなー。リリーはどう考えてるんだろ?」


 リリーはフェイさんのように悪いやつじゃないので、凝ったことを考えてるわけではないと思う。

 でも正面からなんて何もできないしな?

 あるいは縁談を壊せって意味じゃないのかもしれない。


「ま、リリーの考え次第だから置いとくとして、帝都の裏町へ遊びに行ってきたんだ。あんまり治安がよろしくないところなんだけど、イシュトバーンさんとウルピウス殿下を連れて」


 新聞記者トリオもいたな。


『大丈夫なのかい?』

「問題ないな。イシュトバーンさんもウルピウス殿下も街のならず者あしらえるくらいのレベルは十分にあるし、裏町のチンピラ達はあたしのこと『姐さん』って呼ぶし。そのチンピラのトップが他人のレベルがわかる固有能力持ちなんだけど、あたしとヴィルのレベル見てビビってたわ」

『ちょっと待て。ヴィルも一緒だったのか?』

「うん、肩車して。帽子被せて犬耳隠してると、悪魔だってわかんないでしょ」

『正体がバレたらどうするつもりだったんだ!』

「ヴィルを見破れるほどの眼力の持ち主がもしいたら、レベルカンストの悪魔とイザコザ起こしたくはないと思うよ。悪魔は商店街歩いちゃいけませんって法律もないと思うし」

『ええ? その論法を芸風にしたのかい?』


 芸風言われたぞ?

 一応皆さんには悪魔だよって紹介してきた。

 最終的にヴィル可愛がってもらってたから、もう裏町は大丈夫だと思う。

 段々慣らしていくとヴィルの行動範囲、イコールあたしが瞬時に転移できるエリアが広がるな。


「ごめん、タイムリミットだ。もう眠い」

『ここで中断かい? ひどい引きだ。中途半端は今回だけにしてくれ』

「うん、了解。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は塔の村にリリーの現況を伝えなきゃいけないが……ぐう。

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