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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1088話:杖で殴る

「まー『ヒール』を使える白魔法使いは重宝がられるよね」

「僕が役に立てそうで嬉しいです」


 クララを家に帰し、あたしは白の民の村までミラ君を送っていく途中だ。


「回復魔法は確実に使う場面がありそうですから」

「『キュア』もバカになんないんだよ。毒も怖いからなー」


 治癒魔法『キュア』も低レベルの内に習得する魔法だ。

 マジで白魔法使いはいるだけで有能。


「さっきのうちの白い精霊いたじゃん? あの子は白魔法使いなんだよ。多分世界で最もレベルの高い」

「すごいですね!」

「うーん、すごいんだけど、精霊は普通の人と一緒にいるの嫌がるじゃん? どっかで誰かが大ケガしたよって時、なかなかうちまで連絡来ないんだよね」


 身近に白魔法を使える者がいることが大事なのだ。

 そーゆー意味でミラ君の存在は重要。


「ひょっとして今来てる移民の中で、『ヒール』使える人って一人もいないかな? いや、サブローのおっちゃんは使えるかもしれないけど」


 サブローさんは何かの固有能力持ちだが、察するに魔法系ではない。

 今後も移民は増えるし、誰かが大ケガするアクシデントだってあるだろう。

 一〇〇〇人以上もいれば数人は『白魔法』の固有能力持ちがいるんだろうけど、最初から『ヒール』使えるほど強く発現してる人って稀だろうしな。

 何か対策は必要か。


「ミラ君も最初は自分が白魔法使いって知らなかったの?」

「チュートリアルルームで教えてもらうまでは知らなかったです」

「だよねえ」


 白魔法使いくらいは全員洗い出して登録させて、『レイズ』を使えるくらいまでレベル上げしといた方がいい気がしてきた。

 するとカトマスの成人になったら固有能力調べる、冒険者になることを推奨されるっていうのは合理的だな。


「あれ? じゃあミラ君はレベル二で『ヒール』覚えたんだ?」

「そうです」

「レベル上げられたってことは、魔物倒すことができたんだよね? なのに冒険者辞めちゃったのは何で?」

「いえ、一体倒したところで杖が折れてしまいまして、武器がなくなってしまったんです。他に武器を手に入れられるあてもなく」

「えっ……杖で殴ってたの?」

「他に魔物を倒す方法がありませんでしたから」


 ペペさんの後継者爆誕キター!

 あっ、白魔法使いだから、チュートリアルルームでは魔道杖を支給されたんだな。

 一方、ミラ君は魔物を倒すなら殴るしかなかった、ということか。

 バカみたいな話だ。

 これは悲劇かな? 喜劇かな?


「なるほどなー。そりゃ杖は折れちゃうわ。滑らない愉快な話を聞いた。ありがとう」

「感傷でしょうか。まだ折れた杖とってあるんですよ。『アトラスの冒険者』だった証ですね」

「急いでその杖持ってきてよ。杖職人のところ行こう」

「えっ?」


 新人に支給するなら、ギルド指定工房であるナバルさん製の杖に違いあるまい。

 面白い話だったから、あの片眼鏡のおっちゃんにも聞かせてやろ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「おーい、ナバルのおっちゃーん!」


 杖工房のドアが開き、片眼鏡の男が顔を覗かせる。


「おお? 超絶美少女精霊使いではないか。どうした、帝国から杖の注文か?」

「ごめん。帝国では皇位継承権一位の皇子が亡くなってさ。お葬式の魔道の警備かなんかで宮廷魔道士長さん忙しくて、まだ会えてないんだ。今日は別口」

「ふむ、そちらの御仁は?」

「別口の用件の人だよ」

「遠いところをようこそ。入ってくれたまえ」


 広い工房の中へ。

 椅子を勧められる。


「これお土産だよ」


 コブタ肉を渡す。


「これは結構なものを。して、わざわざ訪ねてきてくれたのは嬉しいが、何の用だったろうか?」

「笑える話なのかそうでないのか、判断しにくいんだけど」


 ミラ君が二年ほど前の『アトラスの冒険者』新人で、杖で魔物と戦っていたが折ってしまい、落伍してしまったことを話す。


「何と……物理で殴る使い方は想定していなかったな」

「あたしもこんなところにペペさんの後継者がいるって思ったわ。まだ魔法使えない人に魔道杖を初期装備品として支給してるとは思わなかったけどさ」


 初期装備品のミスマッチのために脱落しちゃった新人も多い気がしてきた。


「考えてみれば新人は大概ソロだから、もし攻撃魔法を使えたとしても魔物に寄られて、物理攻撃を杖で受けなきゃいけない機会は多いんだよ」

「チュートリアルルームで杖を断り、ショートソードを頂戴する手はあるだろう?」

「うーん、でもルーキーは、初めの方のクエストがバトルであることすら知らないの。テストモンスターくらいなら倒せるだろうし」

「うむう、『アトラスの冒険者』の欠陥なのか」

「おっちゃん製の杖はよくできてるから、もらうと舞い上がるだろうし」

「超絶美少女精霊使いの言う通りだな!」

「今は先輩冒険者がアドバイスする制度ができたから、ミラ君みたいな子が脱落しちゃうケースは減ったけどね」


 昔はマジでムダが多かったと思う。


「ならば初心者向けは魔法力向上よりも、頑丈さを主眼にした方がいいのか」

「武器職人さんには、どういう使用法になるかの配慮をしてもらいたいねえ」


 とゆーか、現場の意見が職人に伝わってないのも問題だな。

 いや、もう新人来ないかもしれんから、遅いけれども。


「ミラ君が来た用件とは何だろう?」

「はい、これがその折ってしまった杖なのですが……」

「ふむ、間違いない。私の製作した杖だ。が、どうせよと?」

「できれば修復していただけると嬉しいのです」


 憧れのシスター・テレサからもらった杖だもんな。


「魔力集中部は破損しておらん。削ってグリップさえ作れば短杖としてリサイクルはできるが、物理の攻守はムリだ」

「今の新人でガチ前衛の子が入ってさ、その子とパーティー組むことになったんだ。魔法さえ使えればいいから、短杖で十分だよ」

「ならば待っててくれ。すぐ加工しよう」


 おおお?

 あっという間に短くなってヤスリかかって完成してきたぞ?

 職人はすごいなー。


「ありがとうございます!」

「いやいや、人材をリサイクルしようとする超絶美少女精霊使いの心意気にはかなわん」

「おっちゃんはいいこと言うなー。これ少ないけど手間賃だよ」


 透輝珠を渡す。


「よいのか? ありがたくもらっておこう」

「じゃねー。また来るよ」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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