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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1072話:清らかな方はあたしが受け持つから

 フイィィーンシュパパパッ。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」


 マイワンダーランド魔境にやって来た。

 一仕事終えたあとは魔境、というのがうちのパーティーのお約束。


「ヴィルちゃん、可愛い帽子ですね」

「ありがとうぬ! 御主人が買ってくれたんだぬ!」

「耳が隠れれば悪魔に見えないでしょ?」


 飛んでちゃバレるけど。

 目を見張るオニオンさん。


「ええと、まさか?」

「プリンスルキウスが乗ってるふりの偽装船を昨日出してさ。予定通り襲われた。ドーラの近海を離れてちょっと行ったところで」

「えっ!」


 オニオンさんのリアクションは、人形みたいにカクカクしたところがあって面白いなあ。


「オニオンさんとピンクマンに調べてもらったことは、大変役に立ったよ。ありがとう!」


 状態異常攻撃が危険っていう事前予想をもらってたから、すぐ『ララバイ』にピンと来た。

 お礼を言えてよかった。

 ピンクマンにも伝わるだろ。


「中型船でドカンとぶつかって来られて、一発で船はオシャカ。おまけに『ララバイ』の固有能力持ち送り込んできて、眠らせようとしてきたんだ」

「か、かなり危険なやり口ですね?」

「まったくだよ。で、『ララバイ』持ちは捕まえた」

「となると、偽装船を襲った黒幕も明らかに?」

「まあ。でも『ララバイ』持ちが、必ずしも本当のことを聞かされてるとは限らないけどね」


 パラキアスさんが調べるだろ。

 悪そーな顔してたし。


「黒幕と思われる金髪ブタ男爵の屋敷で侍女やってる、『ララバイ』持ちの妹さんってのがいてさ。どーも事情を聞く限り、妹さんがブタ男爵の餌食になっちゃいそうなんだよね」

「……だから『ララバイ』の使い手程の有用な駒が不要になった?」

「おっ、オニオンさんやるね。向こうさんの真の思惑はわかんないけど、多分正解」

「何とまあ」


 オニオンさんが呆れてる。

 でもあたしは有能な人材をドーラにスカウトできて嬉しいのだ。


「今日の午前中は屋敷から妹さんを連れ出してきたんだ」

「え? ど、どうやって?」

「簡単じゃん。会う人会う人全部眠らせりゃいいんだから」

「……誘拐なのでは?」

「同行してた帝都の新聞記者もそんな寝言言ってたな。侍女誘拐事件の共犯者になりたくなかったら、妹さんがブタ屋敷を逃亡するに至った詳細を記事にしろって言ってきた」

「新聞記者が同行してたんですか?」

「ウルピウス殿下も一緒だったよ。か弱き娘をブタの魔手から救う、高潔な騎士の振舞いではないかって、ノリノリだったよ。ブタに魔手はあるのかなあ? 脚ばっかりだぞ? って言ったったけど」

「ハハッ、ユーラシアさんのクエストは面白いですね」


 クエストではないけど、広い意味では依頼みたいなもんか。

 オニオンさんが笑いながら首をかしげる。


「ということは、『ララバイ』持ちと妹さんはドーラに?」

「うん、イシュトバーンさんが面倒見てくれるって」

「ああ、イシュトバーン氏なら安心ですね!」


 うむ、またどこかで助けてもらうかもしれない。


「ぶつけてきた中型船の所有者、とゆーか『ララバイ』持ちの元雇い主の商会が、ブタ男爵ともう一人何とかいう子爵と懇意らしくてさ。その二人の貴族が第二皇子と繋がっててこの際プリンスを、ってシナリオみたい」


 意外でもなさそうですね?


「なるほど、芋づる式にことを公にしてしまえという算段ですか?」

「陰険なことはパラキアスさんの担当だからわかんないな。あの顔はもっと腹黒いこと考えてそう」


 まずマリーベル商会に因縁付けるところから入るんだろうけど。


「偽装船に塗ってた塗料が特殊なやつなんだって。ぶつけてきた中型船を特定するのが大事なんだよね。そこでヴィルの出番なの」

「そうだぬ! わっちがマークしてるぬ!」

「ははあ、塗料を証拠に商会を締め上げるんですね?」

「うん。三日後くらいになるかな。タムポートで件の船を見つけるまでがヴィルの役目。あとはパラキアスさんのメインディッシュ」

「その商会も自業自得とは言え、何だか気の毒ですねえ」


 まったくだ。

 パラキアスさんの策謀だからなあ。


「いや、でも味方につけようとするんじゃないかな」

「味方、ですか?」

「敵を一つ潰しただけじゃ差は一しか縮まらないじゃん? 味方にすると二縮まるから」

「しかし、信用できないでしょう?」


 信用できようができまいが拾っていかないと追いつけないくらい、第二皇子とプリンスの差があるのだ。


「帝国の宮廷や社交界をクリーンにしようってんじゃないんだよね。そーゆー改革するのは皇帝なり執政官なりの仕事でしょ。ドーラとしては、都合のいい人が皇帝になって欲しいわけじゃん? 力になってくれるなら清濁関係ないねえ」

「いやあ、本当に」

「清らかな方はあたしが受け持つから、濁ってる方も誰かがやんないとバランス取れないしね」


 アハハと笑い合う。

 パラキアスさんがどう決着つけるか楽しみだな。


「本日の魔境エンターテインメントのテーマは?」

「おっ、オニオンさんも魔境がエンターテインメントと認識してきたね」

「ユーラシアさんが来るようになってからワタクシ、魔境の見方が変わりました」

「そお?」


 晴れ晴れとした顔のオニオンさん。


「かつては冒険者が己を律し鍛える場としてトレーニングエリアが設置されていると考えていたんですが、ユーラシアさんを見ていると楽しそうで」

「楽しいよ。修行者みたいなの目指してるなら好きにすりゃいいけど、ふつーの人はそんなん面白くないんじゃないの?」

「ユーラシアさんは体現者ですしねえ」

「クエストにも恵まれたしなー」


 魔宝玉クエストがなければ、ここまで魔境を満喫できなかったかもしれない。

 マルーさんには素直に感謝だ。


「レベル上げにも最適ですし、皆さんもっと魔境に来るべきです」

「同感。オニオンさんも新しく来る人には盛大にアピールしてよ」

「ハハハ、かしこまりました」

「今日の夜は塔の村で食べるの。塔のダンジョンは魔境くらいの魔物が出ると思われる地下が解放されたんだけど、まだワイバーンは出ないっぽいんだよね。卵を確保してお土産にするつもり」

「いいですねえ」


 オニオンさんもニコニコしている。


「行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ」

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