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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1070話:いきなり父ちゃん登場

 新聞記者の姿が見えなくなったあと、イシュトバーンさんが言う。


「結構なエンターテインメントだったんじゃねえか」

「記者さん達には言わなかったけど、ウルピウス殿下も同行してたんだ」

「ほお?」

「殿下を誘拐犯にするわけにはいかないからさあ。すげえ気を使っちゃったよ」

「君、やりたい放題だったじゃないか」

「それはそれとして」


 ん、ココちゃんどうしたの?


「ユーラシアさんはどういう方なんですか? 本土でもドーラでも偉い人に会えるようですが」

「俺も知りたい。わけがわからない」

「どうって言われても、ただの美少女精霊使いだぞ?」

「美少女という時点で『ただの』じゃねえんだぜ」

「おおう、生まれながらにして金銭的価値が発生?」

「有料無料のただじゃねえからな?」


 アハハと笑い合う。

 こういう掛け合い大好き。


「『アトラスの冒険者』のクエストで、いろんな人に会えるようになっただけなんだけどな?」

「『アトラスの冒険者』というのは、随分融通が利くものみたいじゃないか」


 イシュトバーンさんがニヤニヤしながら言う。


「融通じゃないんだぜ。クエストを効率的にこなしてもらうってのが、『アトラスの冒険者』の建て前なんだ。おそらく精霊使いにしか請けられねえクエストが、皆回ってくるんだぜ」

「かもしれないなー」


 どーもダンやデミアンの話を聞いてると、変なクエストがあたしのところへ分配されるらしい。

 おっぱいさんの采配だろうけど、まああたしも変わったクエスト来た方が面白いしな。

 かなりバラエティに富んだ転送先が集まってることもありがたい。


「……考えてみれば、ドーラの中だけでもレイノス、カトマス、塔の村に行けるのはすごく便利だな。おっぱいさんが意図してやってくれてるんだろうけど」

「便利にしてやってるから、面倒なやつもこなせってことなんだぜ」

「あれ? 納得できるわ」


 ギルドの正職員であるおっぱいさんは、『アトラスの冒険者』達に効率的にクエストを配ることがお仕事だ。

 個々の石板クエストには、難易度ランク別にクリアした時のポイントでもついてるんじゃないかな?

 クリアポイントが最大値になるよう、冒険者達に石板を配る。

 効率的とはそーゆー意味だとするとわかりやすい。


 おっぱいさんはあたしを評価してくれてるから、難しめであると同時にあたしの役に立つような転送先のクエストを回してくれている。

 とゆーバランスの取り方だとすると説明もつく。

 実際はどうだか知らんけど、ありそうな話だな。


「着いたぜ」

「大きな建物ですねえ」


 行政府を見たココちゃんが感嘆のため息を漏らす。

 確かにデカい。

 元々ドーラ総督のための建築物だったってこともあるから。


「ドーラは土地代が安いからな」

「こんにちはー。ウルトラチャーミングビューティーユーラシアと、その他大勢がやってまいりましたよ」

「はい、伺っております。こちらへどうぞ」


 受付のお姉さんに案内されて二階へ。

 大使室の方か。


「こんにちはー」

「やあ、いらっしゃい」


 プリンスがにこやかに挨拶を返してくれる。

 大使室の面々だけじゃなくて、パラキアスさんもオルムスさんもいるじゃん。

 それともう一人、どこかで会ったことあるような?

 よく陽に焼けた、どこか愛嬌のある中背の男を指してオルムスさんが言う。


「初顔合わせかな? こちら船団長のオリオン・カーツだよ」


 その男が言う。


「もうかりまっか?」

「まあまあでんな」

「ユーラシア、久しぶりやな」

「何だ、オリオン・カーツって父ちゃんのことだったのか」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」


 イシュトバーンさんを除く、その場の全員が驚く。

 いや、何の脈絡もなく父ちゃんが出てくるのはあたしもビックリ。

 オルムスさんが言う。


「オリオン、君知ってたんだろう?」

「最近会ってなかったけど、名前からわいの娘やろうとは思っとった」

「今まで一言も言わなかったじゃないか!」

「せっかくの大ネタや。披露するタイミングを計ってたさかい」


 うむ、さすがにあたしの父ちゃんだ。


「ユーラシアは?」

「父ちゃんは旅人だって聞いてたんだよ。おぼろげな記憶しかなくて、名前も知らなかった」

「何とまあ……」


 父ちゃん有名人だったわ。

 だったら誰かに聞けば教えてくれたのかもしれないな。

 でも父ちゃんが誰かなんて、全く気にしたことなかったわ。

 いや、どーしてイシュトバーンさんはしたり顔なのよ?


「精霊使いは金のことを時々『おゼゼ』って言うんだ。これは帝国の港町タムポートの方言だぜ。『ユーラシア』という汎神教的な名前といい魚食に忌避感がないことといい、タムポート出身であるオリオンの娘だとすると妙に符合することに気付いてな」

「へー」「「ほう」」

「加えてオリオンよ、あんた確か『精霊の友』だったろ?」

「ハハッ。イシュトバーンはん、よう覚えてまんな」

「だったらカラーズ灰の民の村を興味本位で訪れていても不思議じゃねえ」

「名推理だねえ」


 ふーん、父ちゃんは『精霊の友』だったのか。

 灰の民の村に遊びに来て母ちゃんと出会った。

 予想してたイシュトバーンさんもすげえ。


「で、父ちゃんは可愛い娘にプレゼントはないの?」

「『アトラスの冒険者』になった、掃討戦では大いに活躍したと聞いたさかいな。ゴージャスなプレゼントをさしてもろたで。心当たりはないか?」

「えっ?」


 掃討戦のあとにゴージャスなプレゼント?

 何かあったかな?

 マジで心当たりないんだけど。

 父ちゃんが優しい目であたしを見る。


「ヒント、ドリフターズギルドの眼鏡美女」

「おっぱいさんのこと?」


 つまり依頼所クエストか?

 あっ!


「ドスケベスライム?」

「ちゃう!」

「おい、そのドスケベスライムの話を詳しく!」


 冗談に決まってるだろ。

 まったくイシュトバーンさんはえっちな話が大好きなんだから。


「精霊カカシは父ちゃんがギルドに連れてきてくれたのか。ありがとう! 今カカシはすごく役に立ってくれてるんだ」


 ニカッと笑い顔を見せる父ちゃん。

 カカシの存在に気付き、その夢を聞き知って、精霊使いであるあたしに振られるクエストと見越したんだな。


『ぐー』

「ごめんなさい。お腹が飯を寄越せと不平を垂れております」

「ハハハ。いい時間ですので、お昼にしましょう。こちらの部屋へどうぞ」

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