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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1013話:杖職人ナバルの工房

 ――――――――――一八一日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「やあ、おはよう、チャーミングなユーラシアさん。朝から働き者だね」

「おっはよー、ポロックさん」


 今日は朝からギルドだ。

 働き者だから。


「ダン来てるかな?」

「ああ、ついさっき来たところだよ。共闘かい?」

「杖職人のナバルさんっているでしょ?」

「あっ、ファイアードラゴンのクエスト?」

「ピンポーン、御名答!」


 ファイアードラゴンのドロップする燿竜珠を持ってこいっていうの、有名な依頼みたいだな?

 ポロックさんがダンテみたいなふーやれやれってポーズを取っている。


「何しろファイアードラゴンだろう? かなり長い間放置されていた依頼なんだ。まあユーラシアさんが請けてくれるなら安心だよ」

「ところがそんなに安心でもないんだよ。ナバルさんったらファイアードラゴンを間近で見たいらしくて、同行させろって言ってるの」

「同行? 無茶な!」

「あたしも自殺志願者の依頼は請けられないって言ったんだけどさ。美少女に導かれファイアードラゴンに焼かれるなら本望ではないかなんて、カッコいいセリフを吐くもんだから」


 ポロックさんが信じられないって顔してるけど、まあ『ファイアーブレス』は無効化できるからどうにか。

 ドラゴンを複数体倒せばそれなりにレベルが上がるはずだから、最初の戦闘に無事勝てれば大丈夫だろうと思う。

 危ないは危ないが。


「物好きなおっさんだよな」

「あ、ダン」

「御主人!」


 よしよし、ヴィルはいい子だね。

 御機嫌のダンのところにいたか。


「危ないと思ってるなら、あんたの得意技で先にレベル上げすりゃいいじゃねえか」

「ダンにしてはまともな意見だね。でも依頼料が少ないから、別のところで楽しませてくれないと割に合わないじゃん?」

「割に合わないぬ!」


 ダンは大笑いしてるけど、ポロックさん笑ってないぞ?


「気をつけておくれよ」

「うん。あたしも依頼料をもらいはぐれると困るからね」


 転移の玉を起動し、ダンを伴って帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「よく来た! 超絶美少女精霊使いよ!」


 おっぱいさんにもらった『地図の石板』によって形成された二一番目の転送魔法陣から、片眼鏡の杖職人ナバルさんの工房へやって来た。


「ははあ、やっぱり家の中に転送か」


 絶対に必要な転送先じゃなかったけれども、これを確認したかったのだ。

 アルアさんの工房や魔境もそうだが、危険度が高いところは建物の中に転送先が設置されているんじゃないかっていう仮説の確認だね。

 『アトラスの冒険者』の安全に対する配慮を知りたかった。


「うむ。外には魔物がいるのでな。なあに、魔物除けの札が貼ってあるので、中まで魔物が入って来たことはない」


 魔物除けの札ですと?


「えっ? ドラゴンクラスの魔物には魔物除けの札なんて効かないでしょ?」

「いや、魔境の魔物がいるのは離れたところだ。さすがにペペちゃんのような豪胆な神経は持ち合わせておらん」


 だよね。

 ペペさんみたいに魔境に住んでる人がおっかしいのだ。


「じゃ、行こうか。強歩二時間だっけ?」

「うむ、あの山を越えたところだ」

「……えっ?」


 山っていうか岩壁じゃん。

 片眼鏡のおっちゃんが説明してくれる。


「山に覆われた内側が魔境火竜エリアだ。おそらく魔力が外部に逃げにくい地形だから、周りの地域の魔物は強くないのだろう」

「何かの拍子に魔力が溢れたら高レベルの魔物が湧くんじゃねえか?」

「同感。たとえ魔境の中であっても、防御結界で守られてるペペさん家の方が安全だと思う」

「だから弟子が逃げ出すんだぜ」


 顔色を変える片眼鏡。

 少し知恵がついてここヤバいってのを理解すると逃げちゃうんだろうな。

 だからこれだけの広さの工房なのに誰もいないんだろう。


「そうだったのか……。弟子を取っても大体一年なるならずで去っていくのだ。『師匠には大事なことを教わりました、ありがとうございました』と感謝していくので、てっきり私の教育が行き届いているものと思っていたのだが」

「その『大事なこと』ってのは、身の危険を察することなんじゃないかな?」


 いや、落ち込むことないって。

 『大事なこと』を教育できてるんだから。


「まー逃げちゃった弟子のことは忘れちゃうとして、どこをどう行くと強歩二時間なの?」

「ユーラシア、確かおっさんは『直線距離で強歩二時間くらい』と言ってたぜ」

「うむ、岩壁の細い道を縫うように歩いて行こうと思うと、一日は優にかかる」

「おおう、叙述トリックだったか」


 とはゆーものの疑問は残るぞ?


「おっちゃん、ファイアードラゴンに詳しいって言ってたじゃん? たまにあの岩壁の向こうまで見に行ったりするんだ?」

「月に二度くらいは見に行くぞ」

「月に二度って。杖職人って暇なん?」


 諦めたように肩を落とす片眼鏡。


「まあ、ドーラでどれほど魔道杖の需要があるかと言われればな」

「そーかー」


 せっかく入った弟子も、現実が見えてくると見切りをつけちゃうのかも。

 人口少ないのは何やるんでもネックになっちゃうな。


「最近はパワーカードが流行で、杖を使う魔法使いも少なくなってしまったしな」

「何かごめん」


 いや、だってパワーカード使いが増えるのはあたしにとってメリットなんだもん。


「おまけに最近、ペペちゃんやセリカちゃんも私の杖を使ってくれていないのだ」

「何かごめん」


 二人にはバアルのお宝の杖あげちゃったんだよ。

 こらそこの銀髪男、笑うな。


「あんた、助けてやりゃいいじゃねえか」

「いや、そろそろ工房を畳む潮時なのかもしれんよ」

「ちょっと待った! これからドーラも移民で急激に人口増えるよ。一方で魔物が減るわけじゃないんだから、杖の需要だって増えるかもしれない。一旦技術が途切れると取り戻すの大変だから、仕事は辞めないで」


 でも魔道杖の需要なんかどうすりゃ増えるかなんて思いつかんなー。

 帝国に売れるかなあ?


「む? 超絶美少女に頼まれちゃ嫌とは言えないけれども」

「おっちゃんはものの言い方がわかってるなあ。思わず協力したくなっちゃうわ」

「なっちゃうぬよ?」

「ハハッ、とにかくファイアードラゴンを拝みに行こうぜ」

「行くんだぬ!」

「クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 岩壁の向こうへゴー。

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