第1005話:ギルドはこんなところです
フイィィーンシュパパパッ。
リモネスさんドルゴス宮廷魔道士長ヴォルフ近衛兵長の三人を連れ、ドリフターズギルドにやって来た。
「いらっしゃい、チャーミングなユーラシアさん。そちらは?」
「こんにちはー。ギルドの総合受付ポロックさんだよ。こちらは帝国の皇帝陛下の相談役リモネスさん、宮廷魔道士長ドルゴスさん、近衛兵長ヴォルフさん」
「帝国からのお客人でしたか。遠いところからようこそ」
「よろしく、ポロック殿」
うむ、いい感じ。
「錚々たる顔ぶれですが、今日はどうしました?」
「魔道士長さんがペペさんに会いたいんだって」
「えっ……」
口ごもるポロックさん。
うむ、ペペさんが実力者なのはその通りだが、トラブルメーカーだからなあ。
心配そうな魔道士長さん。
「何か問題がありますかな?」
「全然問題ないとゆーか問題大ありとゆーか。ペペさんっていう魔道士は大天才で、ドーラの誇る九人の大実力者に数えられてるくらいの人だよ? でも有り体に言えば問題起こす人としか思われてないから、帝国戦に当たっても何にもするなって言われてたくらい」
「大丈夫な人ですかな?」
「無邪気で可愛い人であることは確かなんだ。天然なだけ」
天才で天災なだけ。
ギルド内部、お店ゾーンへ。
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
ぎゅっとしたろ。
「ペペさんは?」
「寝てるぬ」
そりゃそーだ。
ギルドにいる時のペペさんは九割以上の確率で寝てるわ。
「たのもう!」
「ふあっ?」
突っ伏していた見かけ幼女店主が飛び起きる。
「あっ、ユーラシアちゃん」
「ペペさん、お客さんだよ。帝国の宮廷魔道士長ドルゴスさん」
「ええっ!」
「お初にお目にかかる」
「あの、こちらこそ」
「ペペさんのロマン溢れる魔法に魅了されて、話がしたいんだって」
「えええっ! 帝国の偉い人なのに私の魔法を買いたいの?」
「違えよ」
買わねえよ。
いや、魔道士長さんは研究のために、ペペさんの魔法を買いたがるかもしれないな。
もっともペペさんが魔道士長さんを気に入って魔法を売るという状況は、ちょっと想像できない。
ペペさんは気まぐれだからなあ。
まあごゆっくり。
食堂へ、誰かいないかな。
あ、デミアンとダンがいる。
近衛兵長さんに冒険者の実体を把握してもらうには、天才と情報屋はいいかもしれない。
ハーブティーを注文してそのテーブルへ。
「こんにちはー」
「ユーラシアか。そちらは?」
「皇帝陛下の相談役リモネスさんと近衛兵長ヴォルフさんだよ。あっちでペペさんと話してるのが宮廷魔道士長ドルゴスさん。こちらは『アトラスの冒険者』デミアンとダンだよ」
「ほう、ドーラの冒険者はさすがの高レベルですな」
「悪くないだろう。しかし宮廷守護の重責を果たすのは素晴らしい」
「おう。冒険者は好き勝手やってるだけだからな」
「あれえ? 案外二人とも如才ないね?」
「一番自分中心主義のやつが何か言ってるぜ?」
アハハと笑い合う。
リモネスさんが聞いてくる。
「『アトラスの冒険者』とは、クエストに失敗するとどうなるのですかな?」
デミアン、ダンと顔を見合わせる。
「次のクエストが出なくなるだろう。悪くない」
「至急のクエストってあるじゃん? あれ失敗するとどうなるのかな?」
「後味が悪くなるんだぜ」
マジで失敗しちゃった、てへっ、くらいだと思うぞ?
至急のクエスト以外は失敗の基準がメッチャ低い気がするし。
「依頼人はどうなるのです?」
「石板からもらえるクエストは、依頼が出されてるわけじゃないんだよ。自動で集められたクエストを分配してるみたい」
「依頼人ありのものは、依頼受付所が受け持ってるな。依頼所クエストを失敗すると、ペナルティでしばらく次の依頼を請けられねえんだ」
「石板クエストは報酬が不確定だが獲得経験値は高い。依頼所クエストは報酬多めで獲得経験値は少ない。悪くない」
「「ほう」」
二人とも意外と食いついてきますね。
やっぱ帝国に冒険者いないから面白いのかな?
近衛兵長さんが言う。
「楽しいクエストもあるものですかな?」
「……何で皆あたしの方見るのよ?」
「愉快なクエストはあんたの魅力に引き寄せられるんだぜ」
「そーだったかー」
いやでも、石板クエストはどれも割と面白いでしょ。
「あたしが付き合わせてもらった、ダンのレッサーデーモンのクエストは印象に残ってるけどな?」
「俺のクエストで一番面白いやつだな」
「デミアンの掃討戦跡地で至急の魔物退治は?」
「吾輩の経験した一番面白いクエストだ。悪くない」
「ふーん?」
「あんたには笑神がついてるからな。エンターテインメントに事欠かねえ」
「まあ普通のクエストは、魔物退治かアイテム採取だ。悪くないが、面白みには欠ける」
魔物退治かアイテム採取が多くなるのは何となくわかるけど。
あれ? あたしんとこあんまり普通のやつ振られないな?
「あんたの経験した面白えやつ話せ。滑稽なやつでも笑えるやつでもいい」
「どこ違うんだよ、それ」
「俺の睨んだところでは、あんたはとびきり面白い話を隠してるはずだ」
「隠してるはずだぬ!」
「悪くない」
「何なんだ、あんたらは。あんまり他人に話したことないやつだと……」
皆が期待に満ちた目で見てくるよ。
いやん。
「……ほこら守りの村の怪、ってのがあった。ホラーかと思ったら喜劇だったやつだけど」
湧き出るユーレイ、髪の毛を切られ閉じ込められた幼女、ループする参道、暴走する少女霊と土地神の因縁、肥溜めのオチ。
大爆笑ですわ。
「秀逸ですぞ!」
「ハハッ、悪くない」
ダンが余計なことを言う。
「これどこで話しても笑い取れるだろ。今まで披露しなかったのは何故だ?」
「主人公のマーシャって子が相当ヤバい魔力の持ち主なんだってば。こんな話が広まって捻くれて育ったら、ドーラの危険が危ないわ」
近衛兵長さんとおっちゃんが口々に言う。
「精霊使い殿が相当ヤバい魔力と言うほどですか?」
「会ってみたいですな」
「そお? じゃあ行ってみようか」
ペペさんと魔道士長さんの方もいい感じに終わったみたいだし。
「じゃーねー」
「明日朝、忘れんなよ」
「忘れないぬ!」
「わかってるってば」
明日はファイアードラゴンだったな。
ドロップの燿竜珠も見てみたいし。
転移の玉を起動し帰宅する。




