第75話 死の感触
母親「…………」
母を見つけた。
ベルク「…………」
変わり果てた母の姿に俺は絶句する。
母は……死んでいた。
男「ちっ、金目のもんを何も持っちゃいねー。殺し損じゃねーか」
母を殺した追い剥ぎの男がイライラしながら独り言をつぶやいていた。
男「ん? なんだ坊主。見世物じゃねーぞ。しっ、しっ」
男は手で俺を追い払おうとする。
ベルク「…………」
俺は無言で母を殺した男に近づいていく。
男「おいおい。坊主。この死体と、このナイフが目に……ひっ!」
男が悲鳴を上げ、尻もちをついた。
男「な、なんだ!? その手は! ば、化け物!」
男はナイフを俺の顔面に向けて投げた。
ナイフが顔に刺さる。
そう思ったとき――
『ガシッ。バキッ、バキッ』
化け物の手がナイフを受け止め、そのまま握りつぶした。
それが俺の意思によるものか、俺の命を守るために化け物の手が勝手にやったのかは、よく分からない。
男「た、助け……」
男が命乞いをする。
ベルク「…………」
俺は無視をする。
『グサッ』
俺の化け物の手が男の胸を貫いた。
『ズボッ』
俺が男の胸から手を抜く。
ドサッ、という音を立てて男が地面に倒れた。
男「…………」
男は何も言わない。
既に死んでいた。
ベルク「母さん……」
俺は涙を流しながら、倒れている母の元に駆け寄る。
母親「…………」
母は何も言わない。
『ギュッ』
俺は母を抱きしめる。
いつもの優しい温もりは感じられない。
そこにあったのは……
冷たい死の感触だけだった。




