第7話 お姉ちゃん
『■■■……助けて」
瓦礫の下敷きになった少女が助けを求めている。
レイ「ごめんなさい。ごめんなさい」
僕が頭を抱えながら謝る。
僕には目の前の少女を救う力はなかった。
ルナ『どうして助けてくれなかったの?』
レイ「る、ルナ……!」
あの日、助けられなかった少女が僕を責め立てる。
レイ「ち、違うんだ。助けようとしたんだ。だけど、子供の力じゃ助けられなくて……」
僕が言い訳をする。
魔物『マオ~……』
羊の姿をした魔物が僕を心配そうに見つめていた。
レイ「お前だ……。お前のせいだ!」
僕が魔物の首をしめる。
魔物『マオーー!!』
魔物が苦しそうに悲鳴を上げる。
レイ「お前を助けたせいで、■■は瓦礫の下敷きになって死んだんだ!」
僕が指に力を込める。
レイ「死ね! 死ね! 僕の前から……。『過去』から消えろ!」
魔物『マオ……』
魔物の顔から生気が消えていく。
あと少しだ。あと少しで……■■が死ぬ過去が消える。
カイト「やめろ! レイ!」
レイ「うっ」
カイトが僕から魔物を奪った。
レイ「返せ……。そいつを消さないと■■が……」
本当は分かっていた。
魔物を殺したところで■■を救えなかった過去は消えないことくらい。
それでも、僕は……この現実に耐えらなくて……
ぎゅっ。
カイトが僕を抱きしめた。
カイト「ごめん。もう大丈夫だから。レイのこともレイの大切な人たちも俺が守る。もう二度と君に何かを失わせたりなんかさせない」
レイ「カイト……」
僕がカイトを抱き返す。
レイ「カイトは……ずっと、僕のそばにいてくれる?」
カイト「ああ、当然だろ。だって、俺はお前の――」
言葉が途中で途切れた。
レイ「カイト? カイト!!」
僕が辺りを見回す。
けれど、カイトの姿はどこにも見えなくて……
レイ「カイト……。僕をひとりにしないでよ……」
僕が子供のように泣きじゃくる。
『――レイちゃん』
誰かが僕の名前を呼んでいる。
その誰かは優しく僕の手を握りしめて……
『――お姉ちゃん』
ああ、そうだ。妹ができたんだ。
『彼女は魔王の転生候補なんだ』
『魔王が転生した瞬間に殺すためにね』
僕の妹――『マオ』は騎士団に命を狙われている。
レイ「僕が救うんだ」
もう同じ過ちは繰り返さない。
道化師『ヒーロー役はカイトじゃなかったのかい?』
道化師の格好をした僕のお友達はいたずらな笑みを浮かべながら僕を見ていた。
レイ「僕は……マオのお姉ちゃんなんだ。お姉ちゃんは妹を守らなくちゃいけない」
道化師『そうか。頑張りなよ……レイ』
■■が僕を応援する。
レイ「うん。頑張るよ」
僕がうなずく。
レイ「そっちも監視の方、引き続き頼んだよ……『レイ』」
僕と同じ名前を持ったお友達に頼み事をする。
道化師(レイ)「ああ、任せてよ。マオに……手出しはさせないさ」
その言葉に安心した僕は、今度こそ眠りについた。




